「このまま何も伝えずに死ぬのは残念」“遺言状サービス”を利用する中国若年層が急増、7年間で24.5倍に

なぜ若年層に遺言状を作成する人が増えているのか

 中国の遺言状サービス「中華遺言バンク」によると、2023年末現在、同バンクに預けられた遺言状は31万通で、2021年末の約22万通に比べて、2年間で41%増となった。とくに、20代から40代前半の世代(若年層)が2023年までの7年間で24.5倍増を記録した。この世代は未婚者が多く、「このまま何も伝えずに死んでしまうのは残念だ」との理由が大半だという。中国共産党機関紙「人民日報」が伝えた。

 同バンクのサービスは遺言状を預かり、死後、届け出があった宛先に届けるもので、2017年に同バンクに遺言状の保管を依頼した若年層は279人だったが、2023年は7124人にも膨れあがっているという。

 2017年から2023年までの7年間で世代別にみると、「80後」(1980年代生まれ=34歳から44歳)で同バンクで遺言状を作成した人は21.5倍増、「90後」(1990年代生まれ=24歳から34歳)では11.2倍増。「00後」(2000年代生まれ=24歳まで)では、2020年は134人とだったが、2023年は167人と24.62%の増加だった。

 遺言状作成の理由はさまざまだが、最も多いのは「明日のことは分からない。何も伝えずに死んでしまうのは残念だ」というものだという。

 遺言状に記載されている内容のほとんどは自身の財産についてで、90%以上が銀行口座で、次は不動産物件となっている。

 同バンクは2020年3月から中国の微信(WeChat)経由での遺言状作成サービスを行っており、2023年末までの約3年間で、同バンクがこのサービスで受理した遺言状は9万7347通に達した。全体の34.9%が配偶者や恋人に自分の気持ちを伝えるもので、36.2%が家族や恋人の将来に祝福を伝えるものとなっている。また71.1%が遺言状に自分と家族や恋人が一緒に映った写真を添えているという。

 こうした現象は、中国社会で若者が将来に大きな不安を抱えていることの裏返しなのだろうか。

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