先住民、気候変動被害の最前線に=排出量少なく不平等直面―第3部「未来が見える場所」(6)〔66°33′N=北極が教えるみらい〕

【ニューヨーク時事】カナダの北極圏をはじめ世界各地で暮らす先住民は、多くが自然と密着した生活を営み、気候変動による悪影響にさらされやすい。都市住民と比べ歴史的に温室効果ガスの排出量が少ないにもかかわらず、被害の最前線に立たされるという不平等に直面している。


国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2022年に公表した報告書は、北米の先住民について「気候変動に伴い悪化する要因によって命を失うリスクが高い」と指摘。伝統的な食料確保や農業など生活の手段が妨げられ、健康も脅かされていると警鐘を鳴らした。
北米北極圏の先住民イヌイットの言葉で「われわれの土地」を意味するヌナブトで、準州議会議員を務めるヌタラクさんは「私たちの消化器官は『南』の人とかなり違う。店で購入した食べ物ばかりだと、長老たちは体調を崩してしまう」と説明。アザラシなど伝統食の重要性を訴える。


毎年末に開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)には、北極圏のほか、アフリカ、南米、アジアなどさまざまな地域から先住民の代表が参加。その多くは気候変動に起因する山火事や海面上昇、豪雨、干ばつといった被害で生活基盤が揺らぎつつあり、温暖化対策の強化を呼び掛ける重要な声の一つとなっている。

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