トランプ氏復権、南シナ海への影響を注視 同盟国は「内向き化」警戒

フィリピンのマルコス大統領(中央)を表敬訪問した米国のブリンケン国務長官(右)とオースティン国防長官=2024年7月30日、マニラ、フィリピン大統領府提供

 米大統領選でトランプ氏の当選が決まり、対中国を念頭にバイデン政権と「蜜月」の関係を築いてきたフィリピンでは、安全保障面などへの影響の不透明感を懸念する声もある。

 「揺るぎない米比の同盟が、この地域の繁栄と友好の道を切り開く力になることを期待する」。マルコス大統領は6日、トランプ氏の勝利宣言直後に声明を出し、同盟強化の重要性を強調した。

 マルコス政権は昨年以降、国内で米軍が活動できる拠点を増やすなど、特に安全保障面で急速に米国との連携を強めてきた。視線の先には、南シナ海で激しく領有権を争う中国がある。米国と足並みをそろえて中国に強硬姿勢を取るマルコス政権の支持率は高く、政権は現状を維持したい考えだ。

 ただ、「米国と日本がインド太平洋のパワーバランスの鍵を握っている。内向きになれば、不確実性が高まる」(フィリピン外交筋)と、「米国第一主義」への警戒感は広がる。複数の地元メディアも、「米国に依存しすぎないよう全力を尽くすべきだ」などと報じた。

 一方、ロムアルデス駐米フィリピン大使は7日、ロイター通信の取材に、「南シナ海での(船舶航行などによる)多額の経済効果を考えれば、インド太平洋地域の安定は米国の利益となる」と指摘。起こりうる変化は「最小限のもの」で、対中を意識した経済や安保面の対フィリピン支援は安定的に続くとの期待を示した。(マニラ=大部俊哉)

ジャンルで探す