国民が敬愛した神父の性暴力、フランスに衝撃 疑念はバチカンにも

フランス北部エストビルの村役場近くにある倉庫に描かれた故ピエール神父の肖像画=2024年9月26日、宋光祐撮影

 フランスで弱者の救済に生涯を捧げ、国民の尊敬を集めてきた故ピエール神父による女性への性加害を明らかにする報告書が公表され、衝撃が広がっている。ローマ教皇庁(バチカン)が神父の存命中に問題を把握していた疑いも浮上し、カトリック教会の隠蔽(いんぺい)体質が問われる事態になっている。

 ピエール神父は1949年に弱者の救済を目指して「エマウス運動」を創設。廃品回収などの収益で路上生活者らを支援する慈善活動を仏全土に普及させ、「フランスの良心」と呼ばれた。2007年に94歳で亡くなった際にはパリのノートルダム大聖堂で国葬が営まれた。この運動は日本を含む国外でも広まっている。

 しかし、神父の創設した慈善団体と財団は9月4日までに発表した外部の専門家による二つの報告書で、少なくとも24人の女性が1950年代から00年代にかけて神父からキスを強要されたり、胸を触られたりしたと訴える性被害の証言を公表。「被害者の勇気をたたえ、私たちは彼らに寄り添う」と表明した。

 3年前に仏民放大手が実施した「過去40年間で最も注目されたフランス人」の世論調査で1位になるなど、死後も敬愛されてきた「聖人」のスキャンダルを受けて、仏各地では神父の銅像の撤去や名前を冠した通りの名称変更が相次ぐ。

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