「中国船がベトナム漁船を襲撃」 10人負傷、領有権争う南シナ海

警笛を鳴らしながらベトナム船(右)に迫る中国海警局の公船=2014年5月、南シナ海・パラセル諸島近海、葛谷晋吾撮影

 ベトナム外務省は2日、南シナ海のパラセル(西沙)諸島の近海で9月末、ベトナムの漁船が中国の船から襲撃される事件があったと発表した。同省報道官は同日の声明で相手の船が「中国の法執行機関」だと明かし、「残忍な行為に断固として反対する」と訴えた。両国はパラセル諸島の領有権を争っている。

 現地紙によると、漁船は9月13日にベトナム中部クアンガイ省の港を出発。パラセル諸島の海域で操業中だった29日に「外国船に航行を妨害され、攻撃を受けた」と地元の警備当局へ通報した。複数の船が漁船を取り囲み、約40人が乗り込んできて、漁師を金属製の棒で殴った。10人が負傷し、うち3人は足や腕を骨折する重傷だった。船内にあった機材や魚介類も奪われたという。

 ベトナム国営メディアによると外務省のファム・トゥ・ハン報道官は2日の声明で、「主権の深刻な侵害だ。漁師は命を脅かされ、財産的損害を被った」と批判。中国側に調査結果の速やかな報告と再発の防止を求めた。

 一方、AFP通信によると、中国外務省の報道官は「ベトナム漁船が中国政府の許可を得ずに西沙諸島の関連水域で違法に操業したため、関係当局が法に基づき漁船を停止させる措置を講じた」と述べた。その対応は「専門的かつ抑制された方法でなされ、負傷者は出なかった」としている。

■過去には軍事衝突で死者も

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