北朝鮮の幹部たち「希望が消え去り」暗い表情

北朝鮮の国会にあたる最高人民会議は、今月7日、8日に第14期11回会議を開き、憲法の一部改正を議決した。

これを伝えた国営の朝鮮中央通信の9日の記事は、その具体的な内容には触れていなかったが、南北を繋ぐ道路、鉄道を爆破したことを伝える16日の記事で、韓国を敵対国家と定義したものであったことがわかった。以下、一部を抜粋する。

これは、大韓民国を徹底的な敵対国家として規制(編集部注:ママ)した共和国憲法の要求と敵対勢力の重大な政治的・軍事的挑発策動によって予測不能の戦争の瀬戸際に突っ走っている深刻な安保環境から発した必然的かつ合法的な措置である。

(参考記事:北朝鮮「韓国は敵対国家」と憲法改正か…南北連結道路・鉄道の爆破を発表

一般の北朝鮮国民は同通信の記事を直接読むことはできないが、誰でも閲覧可能な労働新聞がこの記事を掲載していることから、多くの国民がすでに今回の改憲を認識していると思われる。

記事掲載の翌日、企業や機関の幹部に対する講演会が行われたが、出席者の表情は一様に暗かったと、黄海北道(ファンヘブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

慢性的な経済難に苦しむ北朝鮮の人々にとって、南北統一は見込みが薄いながらも、唯一の希望だ。幹部とて、そのことに変わりはない。

(参考記事:飢えた北朝鮮の一家が「最後の晩餐」で究極の選択

沙里院(サリウォン)市法務部は、市内の各企業、機関の課長クラス以上の幹部を参加させて、改憲に関する政治講演会を開いた。

改憲で韓国を敵対国家と明示し、南北の実効支配の地域を示す軍事境界線を国境線として設定、領土の枠を明確にしたというのが主な内容だ。軍事境界線の新たな名称は「南部国境線」だ。講演者は、命名の理由と重要性について説き、明確な認識を持つように呼びかけた。

また、幹部は今回の改憲の意味を誰よりも深く理解し、各組織の朝鮮労働党の党員や一般労働者にその精神を教え込む必要があると述べた。

会場では、韓国を敵国と規定した改憲と南部国境線に対する認識に関する講演資料が配布された。今後行われる一般住民、児童・生徒に対する階級教養(思想教育)ではこの資料から抜粋した内容が使われるとのことだ。

これまでも情け容赦なく進められてきた韓流取締りは、いっそう厳しさを増しそうだ。

(参考記事:「泣き叫ぶ妻子に村中が…」北朝鮮で最も”残酷な夜”

この手の幹部向け講演会では、積極的に意見を出し討論することが多いが、今回は参加者全員が沈黙を守り、会場内は暗い雰囲気だったという。

(参考記事:「私たち忠誠心の高い幹部も動揺している」金正恩の南北統一放棄に国民が反発、逮捕者も

金正恩総書記が進めてきた、韓国を統一の対象ではない敵対国家と切り捨てる「敵対的2国家論」だが、北朝鮮が80年近く掲げ続けてきた南北統一という国是をわずか1年足らずで捨て去ったことに、幹部、一般国民を問わず動揺していると伝えられている。

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