「高くて質が悪い」中国の消費者から相手にされなくなった北朝鮮製品
かつて中国では、北朝鮮産の製品は人気があった。海の遠い吉林省と黒竜江省の市場では、北朝鮮産の海産物が多く扱われていた。
また、高麗人参などの健康食品、サプリなども人気があった。中国の大気汚染が今以上にひどかった時代、北朝鮮は「環境が汚染されていない国」というイメージがあったからだ。
しかし、国連安全保障理事会で採択された対北朝鮮制裁で、海産物の輸出が禁じられ、対中輸出は先細りした。2020年からは、コロナ流入を避けるとして鎖国状態に入り、輸出も止まってしまった。
(参考記事:中国の市場で北朝鮮産の海産物激減…禁輸措置の影響か)
現在、貿易は再開されたが、中国で北朝鮮の製品はあまり売れていないという。
中国のデイリーNK情報筋によると、北朝鮮から中国に様々な北朝鮮製品が密輸の形でもちこまれている。その中には、先月末に平壌で開催された人民消費品(生活必需品)展示会に出品されたものも多数含まれている。
例えば、平城(ピョンソン)銀波山(ウンパサン)カバン工場製の銀波山カバン、マルグンアチム製薬所製のナノ銀ニコチン除去歯磨き粉、平壌スポーツ資材工場製の大城山(テソンサン)ブランドのバスケットボール、サッカーボール、バレーボールなどだ。また、化粧品、タバコなど、コロナ前に中国で開かれていた博覧会で展示即売されていたものもある。
さらに、トウモロコシ麺、味噌、麦茶、塩辛、松茸、はちみつ、きのこなども輸出されているが、これらの輸出は制裁違反となる。これらが、北朝鮮の貿易関係者によって中国に密輸されている。
だが、中国の消費者からの受けは絶望的に悪い。
コロナ前には好奇心から北朝鮮製品を購入する人もいたが、質が悪い割には価格が高い。多くの原材料を中国からの輸入に頼っているからだ。北朝鮮から品物を受け取った中国の業者も、買い手を見つけようと頑張ってはいるものの、需要はゼロに近い。
また、密輸という形が製品価格に跳ね返っている。
「密輸にかかる費用が増えて、北朝鮮で製造されたカバンが中国製より高い場合もある。例えば、銀波山カバンは498元(約1万730円)するが、中国のネットショッピングサイトで売られている一般的なカバンは70元(約1500円)、80元(約1720円)ほどだ」(情報筋)
かつて中国の消費者から受けが良かった、北朝鮮産の唐辛子の粉や味噌も中国製の2倍の価格で売られており、これでは価格競争力がまったくない。朝鮮料理の食材、調味料などは、吉林省延辺朝鮮族自治州で多く生産されており、わざわざ北朝鮮産を買う理由がないのだ。
結局、賞味期限が過ぎる前に大幅値下げをして在庫処分するしかないが、原価すら回収できずにいる。貿易関係者は、平壌に決められた額の上納金を納めなければならないが、コロナ禍を経て一変した状況に頭を抱えている。
(参考記事:密輸ですらも政府が主導する北朝鮮の摩訶不思議な貿易システム)
北朝鮮ではかつて、様々な地方の貿易会社が、てんでばらばらに合法、非合法の輸出を行っていた。それをコロナ禍以降が国が司ることになった。「国家唯一貿易体制」だ。ところが、これに伴い貿易にかかる費用が増加し、価格にも反映されることとなった。かくして、北朝鮮製品は価格競争力を失ったのである。
07/31 07:00
デイリーNKジャパン