「通行人を強制連行」末期症状の北朝鮮が”最後の手段”

「新義州市内では、すべての農場の近くに田植え糾察隊を配備させて、商売の荷物を運んでいる人、自転車に乗って私的な用事を済ませに行く人などを呼び止めて、全員を田植えの現場に送り込んでいる」

これは、平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた、今現在行われている強制連行、強制労働の現場の様子だ。

市当局は先月下旬から、職盟(朝鮮職業総同盟)、女盟(朝鮮社会主義女性同盟)に命じて糾察隊を立ち上げ、通りかかった人を呼び止めて無理やり田植えの現場に投入させるようになった。

「田植え期間中は多収穫の担保となる期間であるだけに、すべての住民は田植え戦闘に積極的に参加する義務を負っている。今年の(朝鮮労働)党の政策貫徹が穀物生産目標の占領(達成)であるので、流動人口を無条件で取り締まり、田植えの現場に移動させよ」(市当局)

市内の南郊外にある三龍里(サムリョンリ)の協同農場付近では、糾察隊が午前から午後5時まで、流動人口の取り締まりを行っている。糾察隊は通行人の所持品を一時的に没収し、3時間以上田植えをするまで通さない。

そればかりか、放送車(街宣車)で、取り締まりに引っかかった人の名前、年齢、住所を大音量で読み上げ、恥をかかせている。全民が田植えに取り掛かるべき時期なのに、商売や個人的な用事で農村支援に行かない者は、それくらいされても当たり前という扱いのようだ。

(参考記事:女性8人を並ばせた、金正恩”恥辱ショー”の残酷場面

なぜこんな乱暴なやり方で田植えを進めているのか。理由は深刻な人手不足だ。

市当局は、三龍里協同農場に対して中国産の古いトウモロコシ700キロを田植えの前に配給した。食べるものがなく農作業ができないという農民が多いうえ、市内中心部から農村支援にやってきた人に食べさせるものがないためだ。それでも田植えは一向に進まなかったため、強制連行、強制労働という強硬な手段を取るようになった。

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取り締まりに引っかかった人々のほとんどは、遊びに行こうとしていたわけではなく、生活苦からなんとかして現金収入を得ようとして、コメ、トウモロコシ、野菜などを市場まで運び売ろうとしていた人たちだ。彼らは昼間は田植えを行い、夜や早朝に品物を市場に運ぶが、その途中で運悪く引っかかってしまった。

朝鮮労働党金正淑(キムジョンスク)郡委員会は2019年4月、行き先を告げないまま美装工25人をトラックに乗せて、再開発工事が行われていた三池淵(サムジヨン)に半ば強制的に連行しようとしたが、気づかれて逃げられるという一件も起きている。

(参考記事:金正恩命令をほったらかし我先に逃げ出す北朝鮮の人々

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