「実の姉妹のように仲が良い」北朝鮮女性らの脱北逃避行、地域住民も応援

北朝鮮北部にある両江道(リャンガンド)の三池淵(サムジヨン)は、故金日成主席が抗日パルチザン活動を繰り広げ、北朝鮮の正史では故金正日総書記の生まれ故郷とされる「革命の聖地」だ。中国との国境に接し、外国人の目にも触れやすいことから、昨今の都市大改造計画で新たな町へと変貌を遂げた。

その三池淵で、2人の女性の行方を巡り、大騒動が起きている。現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

件の女性2人は、刑期半年以下の軽犯罪者が入所する三池淵市労働鍛錬隊で受刑していた。中国キャリアの携帯電話を使っていたところを摘発され、本来なら重罪になるところを、ワイロを使って大幅な減刑に成功した結果だ。

(参考記事:北朝鮮で「ワイロ」の相場が高騰…払えず収容所送りも

ところが今月初めごろ、2人が忽然と姿を消した。鍛錬隊に入って数週間で看守の安全員(警察官)と仲良くなり、警戒心を薄れさせた。そして、作業時間に「水を汲みに行く」と言って出ていったまま帰ってこなかったのだ。

この脱獄事件で、地域全体が上を下への大騒ぎとなった。中国への国境に接しているため、脱北する可能性が非常に高いからだ。安全部(警察署)はもちろん、保衛部(秘密警察)、国境警備隊まで総出で捜索に当たり、国境警備の人員も通常の2〜3倍に増員された。しかし、12日の時点で行方は見つかっていない。

保衛部は、女性二人はまだ国境を越えておらず、山の中や知人の家に身を隠していると見ている。普段から中国キャリアの携帯電話を使っていたことから、警戒態勢がいつ緩められるかを熟知し、隙を見て中国の貿易業者と連絡を取り、脱北を試みるものとにらんでいるのだ。

実の姉妹のように仲がよく、苦しい中でも手を携えて耐え忍ぶ2人の姿を見てきた地域住民は、「どうか捕まらずに脱北に成功してほしい」と祈るような気持ちで見守っているという。

「脱北する機会はいくらでもあったろうに、ずっと故郷(北朝鮮)に留まり、密輸と中国キャリアの携帯電話使用で教化所(刑務所)に入った夫を支え続けてきた。もう1人の女性も軍に行った息子を支え続けてきた」(地域在住の女性)

コロナ前には、密輸や短期の出稼ぎで中国に出入りし、その豊かな暮らしぶりを目の当たりにしたこの地域の住民は、多かれ少なかれ脱北したいという気持ちを持っているだろう。ただ、非常にリスクが高く、脱北が成功したとしてもいつ捕まって強制送還されるかわからないため、仕方なく北朝鮮に留まっているのだ。

都市大改造計画に合わせて、三池淵には忠誠心の高い住民を集めたというが、それでもあっという間に中国の豊かな暮らしに心を奪われてしまう。北朝鮮当局の強調する「思想」は、かくも脆いものだ。

(参考記事:「木造船脱北」成功を北朝鮮国民が祝福…「自分のことのように嬉しい」

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