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外貨使用禁止令に為替レートの急激な変動…混乱気味の北朝鮮経済

自国通貨が信用を失い、米ドルや中国人民元が広く使われるようになった北朝鮮。過去に何度も「国内での外貨使用禁止令」を出しているものの、いずれもしばらくするとうやむやになっていた。

北朝鮮当局は最近になって、またもや外貨使用禁止令を下したが、国民から強い反発の声が上がっていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、政府が最近、全国で外貨使用を禁じ、違反者は厳しく罰するとの通達を出したと伝えた。

咸鏡北道の様々な機関、工場、企業所にも今月になって、外貨使用禁止の通達が下され、企業、個人問わず取り引きには必ず北朝鮮ウォンを使うように強いている。北朝鮮ウォンの最高額紙幣は5000ウォン(約90円)。概ねコメ1キロ分に相当する額に過ぎず、高価なものを買うには外貨を使うのが一般的だった。

商人は、外貨が使えなくなったことで、日々北朝鮮ウォン紙幣の勘定に追われている。ボロボロの紙幣が多いことから、糊でくっつけ直す作業に長時間を費やす有様だという。

外貨使用禁止令について情報筋は「国の経済が厳しくなるたびに、外貨を国営銀行にかき集めるために外貨の使用を禁止し、北朝鮮ウォンの使用を強いてきた」と説明した。国の目論見は、国民の外貨タンス預金を奪い去ることにあるとした情報筋だが、外貨使用禁止令が今まで一度も効果を発揮したことも、国民が自主的に外貨を銀行に預金したこともないと述べた。

(参考記事:何度失敗しても懲りない北朝鮮の外貨強制預金

情報筋はまた、市場などでの外貨の使用を禁止する一方で、外貨商店や外貨レストランでの外貨使用を認めていると、当局のダブルスタンダードなやり方を批判した。ちなみにこれらの場所で外貨で支払いをすると、お釣りは北朝鮮ウォンで返されるとのことだ。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は、外貨使用禁止令に伴い、市場から外貨が消えたとし、米ドルや中国人民元を使っているのを見つけたら全額没収するという当局の方針に、現地住民から強い反発が上がっていると伝えた。

こちらでも、ボロボロの北朝鮮ウォン紙幣の扱い方で商人たちが頭を痛めているのは同じで、破れた紙幣を糊でくっつける作業が日課の一つになっていると説明した。

当局は、手持ちの外貨をすべて銀行に預けるように強調しているが、引き出すときには北朝鮮ウォンに換算して手渡されるため、誰も預けようとしないという。

(参考記事:金正恩のキャッシュレス禁止令で蘇る「貨幣改革」の悪夢

一方、復数のデイリーNK内部情報筋からの情報によると、首都・平壌では1元(約17円)の交換レートが、今月2日の965北朝鮮ウォンから、8日には660北朝鮮ウォンとなり、3割以上下落している。

また、コロナ鎖国でストップしていた貿易の再開に向けてワック(取扱い枠)の発行が行われる直前の先月18日には1ドル(約110円)が7000北朝鮮ウォン台で取引されていたが、8日には5990北朝鮮ウォンと、16%も下落した。中国と国境を接する平安北道の新義州(シニジュ)でも同様の現象が起きている。これは、2009年の貨幣改革(デノミネーション)以降、最大の下げ幅だ。

北朝鮮国内の高位幹部は、今月3日に中央党(朝鮮労働党中央委員会)から、「ワックを受け取ったからとすぐに貿易に参加できるわけではない、党の許可なしに貿易に参加すれば密輸と見なし重罪に処す」との方針が下されたと伝えた。

(参考記事:運行再開が遅れる北朝鮮行きの国際列車…本格的な貿易再開はまだ先か

別の情報筋によると、各貿易会社は買い込んでいた米ドルと中国人民元を大量に売り払っている。貿易の再開によって外貨の需要が高まることを見越した貿易会社やトンジュは、高額の利子と引き換えに金を借りて外貨をかき集めていたが、貿易の再開が当面見込めなくなったため、損切りのために売り払っているという。

為替レートの急激な変動を受けてか、北朝鮮国内の物価は上昇傾向にあり、コメ価格は平壌ではたった6日で22%も上昇した。両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)や、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の穏城(オンソン)でも10%以上上昇した。トウモロコシ価格も2割以上急騰し、平壌ではトウモロコシ1キロが、貨幣改革以降最高の3000北朝鮮ウォン(約54円)を記録した。

前年の収穫物が底をつく春窮期に突入し、穀物価格のさらなる上昇が予想されており、平壌市民の間からは「このままではコメ価格が1万北朝鮮ウォン(約180円)まで上がりそうだ」「(1990年代後半の大飢饉の)苦難の行軍が繰り返されるのではないか」と不安の声が上がっていると、情報筋は伝えた。

(参考記事:金正恩氏「苦難の行軍を決心した」…党細胞書記大会が閉幕

当局は、市場での販売品目を大幅に制限するなど、統制を大幅に強化するなど、経済のリスク要因が続出しており、北朝鮮経済の混乱はしばらく収まりそうにない。

(参考記事:北朝鮮、市場での物品販売を規制…国主導の経済に回帰か

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