ワクチン「公平な普及」資金2・9兆円不足 G20協調に影

 【カイロ=佐藤貴生、ロンドン=板東和正】21~22日開催の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)では、新型コロナウイルス克服に向けた取り組みが主要な課題の一つとなった。ワクチン実用化が現実味を増す中、首脳らは発展途上国を含めた公平な普及の重要性を強調した。必要な資金は約280億ドル(約2兆9千億円)不足しているが、各国の新型コロナ対策の思惑もあり、国際協調が円滑に進むかは見通せない。
 議長国サウジアラビアのサルマン国王は21日の開会演説で、新型コロナのワクチン製造や治療、診断のレベルは進歩しているとの認識を示した上で、これらに「すべての人がアクセスできる条件」をつくる必要があると訴えた。
 ワクチンをめぐっては米製薬大手ファイザーが米規制当局に緊急使用許可を申請し、実用化への期待が高まっている。
 ただ、実用化後も世界各地に行き渡るまでには時間を要するとされ、先進国間でワクチン囲い込みの動きもみられる中、途上国が取り残されることへの懸念も出ている。
 21日の議論では、フランスのマクロン大統領が「裕福な人だけがウイルスから自らを守り、通常の暮らしを取り戻すシナリオ」を回避すべきだと主張した。一部の国だけが感染を収束させても、他の地域から再び感染が広がる恐れがあるため、ドイツのメルケル首相もすべての国に対しワクチンへのアクセスが確保されない限り、「世界的流行は抑えられない」と述べた。
 世界保健機関(WHO)などはワクチンや治療薬、診断薬の開発・普及に向けた国際的な協力体制「ACTアクセラレーター」を立ち上げており、その1部門でワクチンを共同購入する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」には米国やロシアを除く世界187カ国・地域が参加する。
 ただ、WHOによると、ACTアクセラレーターには年内に約42億ドル、2021年末までに約239億ドルが追加で必要。国連のグテレス事務総長はG20サミット前、ワクチン実用化に向けた動きを「希望の光」とする一方、世界全体の国内総生産(GDP)の約8割を占めるG20メンバー国に「G20には資源がある。われわれには連帯が必要だ」と資金協力を訴えた。

ジャンルで探す