【朝鮮半島・私はこう見る】「北朝鮮の非核化『リビア方式』は困難」 ユベール・ベドリヌ元仏外相

パリの執務室で産経新聞のインタビューに応じるユベール・ベドリヌ元仏外相(三井美奈撮影)

 南北首脳会談はトランプ米大統領に足かせを作った。米朝首脳会談で、南北融和に逆行する手段を取りにくくなったからだ。トランプ氏は主導権を一気に取り戻すため、北朝鮮に強硬姿勢を示し、問題を複雑にするかもしれない。
 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は北朝鮮の非核化について、核放棄後に制裁を解除する「リビア方式」を提案したが、私は可能だと思わない。
 当時、リビアの核開発は初期段階で、たいした技術力はなく、後ろ盾となる大国もなかった。北朝鮮とは、まるで違う。ボルトン氏は、あり得ない条件を示して「だめなら戦争」と圧力をかけ、交渉に臨む意図ではないか。
 北朝鮮の非核化はすぐに実現はしない。北朝鮮は体制維持の手段として核兵器を製造したのだから、手放す訳がない。核を保有しながら、経済支援を引きだそうとするだろう。
 米国との交渉にも、甘い期待は抱いていないはずだ。トランプ氏は2015年に結んだイラン核合意から離脱を表明した。米国が約束を守らない例は過去にもあった。
 在韓米軍の規模縮小の可能性が浮上しているが、日本は懸念し過ぎるべきではない。米軍の地上部隊は北朝鮮の朝鮮人民軍との戦闘に備えたもので、もはや(米韓同盟の)政治的な意味しか持たない。規模が半減しても同じだ。
 重要なのは、米海軍のプレゼンスを後退させないことだ。米国は、アジアで「航行の自由」を守る必要がある。中国の存在を考えれば、在韓米軍も完全撤退しないほうがよい。
 北朝鮮の核問題で、日本がとれる手段は多くはない。融和を後押しして緊張緩和に努め、北朝鮮の脅威のレベルを下げる以外、平和を守る道はないだろう。北朝鮮は対話している間は威嚇しないのだから。
 ただ、日本は米国だけに頼っていてはだめだ。米国を常に支持していると、米国が危機を醸成した場合、国益を守れなくなるからだ。(聞き手 三井美奈)
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 ■ユベール・ベドリヌ氏 ミッテラン大統領の外交顧問、大統領府事務総長を経て、1997~2002年、保革連立となったシラク政権で外相に就任。著書に「『国家』の復権 アメリカ後の世界の見取り図」など。

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