「核の脅威 世界で広がっている」 広島平和式典でグテレス事務総長

平和記念式典であいさつするグテレス国連事務総長=広島市中区の平和記念公園で2022年8月6日午前8時44分、滝川大貴撮影

平和記念式典であいさつするグテレス国連事務総長=広島市中区の平和記念公園で2022年8月6日午前8時44分、滝川大貴撮影

 米国の原爆投下から77回目の「原爆の日」を迎えた6日、広島市の平和記念公園で平和記念式典が開かれた。松井一実市長は平和宣言で、ロシアのウクライナ侵攻を機に広がる核抑止論に懸念を表明。核保有国のリーダーに「被爆地を訪れ、核兵器を使用した際の結末を直視すべきだ」と呼びかけた。被爆地選出の首相として初参列した岸田文雄首相は、非核三原則を堅持する考えを示したが核兵器禁止条約には触れなかった。式典後の被爆者代表との面会では「核兵器なき世界」に向け、核保有国への働きかけを優先させる考えを示した。

 松井市長は宣言で、核保有国に対し、「国民の生命と財産を守るには、核兵器をなくすこと以外、根本的な解決策は見いだせない」と核廃絶への行動を促した。日本政府に対しては、核禁条約に一刻も早く参加するよう求めた。

 岸田首相は式典のあいさつで、ウクライナ侵攻を念頭に「核兵器の使用すらも現実の問題として顕在化し、『核兵器のない世界』への機運が後退している」と言及。現状の打開に向け、核兵器保有国の核軍縮義務を定めた核拡散防止条約(NPT)を重視する考えを示した。

 初参列したグテレス国連事務総長はあいさつに臨み、「深刻な核の脅威が中東から、朝鮮半島へ、そしてロシアによるウクライナ侵攻へと世界各地で急速に広がっている」と懸念を強調。「人類は実弾が込められた銃で遊んでいる」とし、核保有国による核戦争は断じて許容できないと述べた。

 99カ国と、欧州連合(EU)の代表らが参列し出席者は計2854人。原爆が投下された午前8時15分に合わせて1分間の黙とうをささげた。国連事務総長の参列は2010年の潘基文(バンキムン)氏以来2回目。市は外務省と協議し、ロシアと、同盟国のベラルーシは招待しなかった。

 松井市長と遺族代表は、この1年間で死亡が確認された4978人の名前を記した原爆死没者名簿を原爆慰霊碑下の奉安箱に納めた。名簿123冊の記載人数は計33万3907人となった。被爆者健康手帳を持つ人は3月末で11万8935人。平均年齢は84・53歳で、初めて84歳を超えた。

 広島市中区の原爆ドーム前を流れる元安川では6日夕、犠牲者を追悼する灯籠(とうろう)流しが行われた。【矢追健介、井手千夏】

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