iOS 18.1から「AirPods Pro 2」で利用可能となる聴力補助・保護・検査機能のレビューが登場、聴覚障害の希望となるか
AppleはiOS 18.1で「AirPods Pro 2」に、ユーザーの聴力をサポートする「ヒアリング補助機能」や手軽に聴力検査ができる「ヒアリングチェック機能」を追加します。複数の海外メディアがひと足先にこれらの新機能を体験し、レビュー記事を公開しています。
Apple’s AirPods Pro hearing health features are as good as they sound - The Verge
https://www.theverge.com/24275178/apple-airpods-pro-hearing-aid-test-protection-preview
AirPods Pro 2: A Review of Apple’s Low-Cost Hearing Aid Tech - WSJ
https://www.wsj.com/tech/personal-tech/apple-airpod-pro-hearing-aid-review-a98e93af
I Tested the Apple AirPod Pro 2 Hearing Aid Software Early. Here's Everything You Need to Know - CNET
https://www.cnet.com/tech/mobile/i-tested-the-apple-airpod-pro-2-hearing-aid-software-early-heres-everything-you-need-to-know/
◆聴覚保護機能
コンサート会場で耳栓の代わりにAirPods Proを使用している人がいます。Appleはこういった使用方法を推奨したり、AirPods Proを聴覚保護デバイスとして宣伝したりしたことはありませんでしたが、最新のアップデートとなるiOS 18.1でAppleはついにAirPods Pro 2に聴覚保護機能を追加します。これはAirPods Proで利用可能な3つのノイズコントロールモードである「ノイズキャンセリング」「外部音取り込み」「アダプティブオーディオ」で機能する保護機能です。
聴覚保護機能専用の特別な設定は存在しておらず、既存の音量低減オプションの拡張版として機能することとなります。Appleによると、聴覚保護機能は「全く新しいマルチバンド高ダイナミックレンジアルゴリズムが、コンサートやその他のイベントの音量を自然なレベルに維持してくれる」そうです。
以下の表はAppleがThe Vergeに提供した、AirPods Pro 2の聴覚保護機能の有効性を示す表。上からAirPods Proで利用できるノイズコントロールモードである「外部音取り込みモード(Transparency mode)」「アダプティブオーディオ(Adaptive Audio)」「ノイズキャンセリング(Active Noise Cancellation)」での、「環境ノイズレベル(Environmental noise level)」「推定全減衰量(Estimated total attenuation)」「適用時のばく露限度(Corresponding exposure limit)」「非保護時ばく露限度(Unprotected exposure limit)」を示しています。
コンサート会場などの環境音が大きな場所でどのノイズコントロールモードを利用するかは個人の好みによりますが、どのモードを使っても聴覚保護機能が耳に入ってくる音量を低減してくれることがよくわかります。なお、ノイズキャンセリング機能を強めれば強めるほど音量を低減してくれるため、聴覚保護機能は「外部音取り込みモード」「アダプティブオーディオ」「ノイズキャンセリング」の順で強くなります。
ただし、AirPods Pro 2の聴覚保護機能で低減できる音には限度があり、銃声・花火の爆発音・削岩機の音などの大きな音は適切に処理できないそうです。また、110dB(A)を超える持続的な騒音も、AirPods Pro 2では処理しきれない模様。クラブやコンサートによっては、この基準値を超える音が鳴ることもあるため聴覚保護機能を過信し過ぎないようThe Vergeは注意を促しています。
◆ヒアリングチェック機能
Appleによると、アメリカの成人の80%以上が少なくとも5年間聴覚検査を受けていないそうです。テクノロジーメディア・The VergeでAirPods Pro 2の新しいヒアリング機能をレビューしたクリス・ウェルチ氏も、2018年頃から聴覚専門医に診てもらった記憶がないと記しています。そんな人々が、AirPods Pro 2の「ヒアリングチェック機能」で気軽に聴覚検査を行えるようになることは、「聴覚検査をないがしろにしているアメリカの人々の習慣を改善する素晴らしいアプローチとなる可能性がある」とウェルチ氏は記しました。
ヒアリングチェック機能を使用するには静かな場所に移動する必要があります。テスト実施前にiPhoneがイヤーチップのフィット感と環境ノイズを素早く分析し、問題がないことを確認します。ヒアリングチェック機能はApple純正のシリコンチップに合わせて調整されているため、サードパーティー製のイヤーチップを使用している場合、適切なテスト結果が得られない可能性があるそうです。
テストが始まると3度のビープ音が鳴るので、ユーザーが音が聞こえたらiPhoneの画面をタップするだけでOK。ヒアリングチェック機能について知っておくべきなのは、「テストが予測したりごまかしたりできないように設計されている」という点です。テストではいつでも任意の周波数を再生でき、音が再生されるタイミングもバラバラで、テスト開始から10秒経っても音が鳴らないこともあるそうです。テスト時に鳴るビープ音は信じられないほど小さな音であることもある模様。
テスト結果は以下のように画面に表示され、PDF形式で出力することも可能です。ウェルチ氏の場合、両耳とも「聴力低下はほとんどない」という結果になっているものの、右耳よりも左耳が聴力低下していることが明らかになりました。
なお、聴力低下の大まかな分類は以下の通り。
・~25dBHL(損失はほとんどない)
・26~40dBHL(軽度の聴力低下)
・41~60dBHL(中程度の聴力低下)
・61~80dBHL(重度の聴力低下)
・80dBHL~(最重度の聴力低下)
ウェルチ氏は「左耳が右耳よりも明らかに聴力が低下していることがわかりましたが、これは日常生活では気付けていませんでした」と言及。以下はヘルスケアアプリに保存されたヒアリングチェック機能の結果をPDF形式で出力したもの。出力したデータは補聴器機能の設定などに利用できます。
ヒアリングチェック機能はわずか5分程度で終わるそうで、ウェルチ氏は「ヒアリングチェック機能がTikTokなどのソーシャルメディアで話題になるのは間違いありません。これは、すべての認識を高めるのに素晴らしいことだと思います。難聴は驚くほど一般的で、世界保健機関によると、世界中で15億人が何らかの程度の難聴を抱えて生活しています」と記しました。
◆ヒアリング補助機能
軽度から中程度聴力が低下している18歳以上のユーザーは、AirPods Pro 2を臨床グレードの補聴器として利用することができます。ヒアリング補助機能を有効にすると、聴力検査の結果を使用して音楽・電話・動画コンテンツのサウンドを最適化してくれます。
設定ではスライダーを動かして補聴器機能の増減、トーン、バランスを調整することが可能。これらのオプションはiPhone・iPad・Macのコントロールセンターからもアクセス可能で、使用するコンテンツに合わせて適宜調整できるよう配慮されています。AirPods Pro 2のステム上で指を上下にスライドすることで音量を調整することができますが、ヒアリング補助機能を有効にすると同じ動作で音量の増減を制御することが可能です。
ヒアリング補助機能は「外部音取り込みモード」でのみ利用可能で、Appleは「ユーザーが音に完全に慣れるまで時間がかかる場合があり、場合によっては数週間かかる」と説明しています。
ニューヨーク・マガジンの美術評論家であり、聴覚障害の診断を受けたジェリー・サルツ氏は、マンハッタンのオフィスでAirPods Pro 2のヒアリングチェック機能を使用し、ヒアリング補助機能を試し、同機能に感銘を受けたと語っています。ただし、詳細な評価ができるほどヒアリング補助機能を長く使用した人は記事作成時点ではいません。そのため、iOS 18.1がリリースされてからAirPods Pro 2のヒアリング補助機能とOTC補聴器の詳細な比較が行われるようになるだろうとThe Vergeは記しています。
AirPods Pro 2の販売価格はApple公式のオンラインストアだと税込3万9800円ですが、Amazon.co.jpだと税込3万8192円です。AirPods Pro 2はJabraやソニーなどのOTC補聴器よりも安価です。
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ただし、重度の難聴の人はより高価な補聴器を探す方がいいとThe Vergeは推奨しています。また、AirPods Pro 2のヒアリング補助機能はバッテリーを消費するため、ヒアリング補助機能を有効にした状態での使用時間は約6時間ほど。これは市販の補聴器やOTC補聴器よりもはるかに短いバッテリー持続時間です。
10/22 19:00
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