AIによる名場面ハイライトの試みをスポーツ専門チャンネル・ESPNが開始するも「必要部分まで省略されている」と不備の指摘

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スポーツの試合のハイライトや概要をまとめたニュース記事は、得点が入ったシーンや記録を確認できたり、盛り上がったシーンを振り返ることができたりと、試合の中継を見た人にも後から情報を知りたい人にもうれしいコンテンツです。アメリカのスポーツ専門チャンネルであるESPNは、試合の概要をまとめたニュースをAIが執筆するプロジェクトを公開しましたが、そのニュースには「人間が書いた場合には絶対に含まれている重要なニュアンスが欠けている」と指摘されています。
ESPN’s AI-generated sports recaps are already missing the point - The Verge
https://www.theverge.com/2024/9/10/24240955/espn-generative-ai-reports-womens-soccer-lacrosse-premier-league

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ESPNは2024年9月6日から、AI技術を活用してスポーツイベントの概要記事を作成する試みを発表しました。まずはプレミアラクロスリーグ(PLL)とナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ(NWSL)の報道を提供し、将来的に他のスポーツにも拡大する予定とのこと。発表に際してESPNは「AIが生成した試合概要は、これまで提供されていなかったコンテンツをファンに提供し、十分に報道されていないスポーツの情報を強化することを目的としています。一部スポーツの試合概要は現在ESPNデジタルプラットフォーム上に存在していないため、AIが生成した概要は既存の報道を補うツールとなり、既存の報道に代わるものではありません」と述べています。また、AIが生成した概要は品質と正確性を保証するために人間の編集者によって確認されるとともに、AIによって作成されたコンテンツには必ず「ESPN Generative AI Services」と付記されるなど、品質と透明性を保証しているそうです。


しかし、ブロガーのパーカー・モロイ氏は「ESPNのAIによるスポーツニュースは、非常に当たり障りのない基本的な記事であり、重要なニュアンスが抜け落ちています」と指摘しています。モロイ氏によると、2024年9月8日に開催されたサッカーの試合は、アメリカサッカー界のレジェンド的存在であるアレックス・モーガン選手の引退試合であり、モーガン選手の所属チームは試合に破れたものの、試合後には感動的なスピーチやパフォーマンスが行われましたが、AIが生成した試合概要のニュースでは、その試合がモーガン選手の引退試合であること、試合後に感動的な一幕があったことなどは一切触れられていなかったそうです。モロイ氏は「この明らかな省略は、ニュース価値のある出来事の背景や感情的な重みをAIが捉える能力について、深刻な疑問を投げかけています」と指摘しました。
スポーツメディアのAwful AnnouncingもESPNのAI記事について指摘しており、最初に掲載された試合の概要では、試合の展開やゴールを決めた選手、試合結果の標準的な概要が紹介されているのみで、モーガン選手に関する記述はどこにもなかったそうです。記事は翌朝に修正され、モーガン選手の引退に触れる短い文章が追加されました。
ESPN AI recap of Alex Morgan’s final professional match fails to mention Alex Morgan https://t.co/AgIv6FDGnp pic.twitter.com/5WiMlVoLvG— Awful Announcing (@awfulannouncing) September 9, 2024
Awful Announcingは「ESPNは人間の編集者が品質と正確性のために確認していると強調しましたが、誰もモーガン選手の話題がないことに気付かなかったのか、それとも試合結果のニュースには不要と感じたのかは不明です。AIによる概要は確かに事実に基づいていますが、NWSLおよびアメリカ女子サッカーに多大な貢献をしたモーガン選手の引退について触れていない記事は、スポーツゲームを360度の視点から見ることのできる人間のライターを、AIによるサービスが再現できないことを物語っています。十分なサービスを受けていないスポーツのファンに提供するのが、ストーリー全体を語らない質の低いAIによる概要ならば、それにどのような価値があるのでしょうか?」と語っています。
AIが作るコンテンツについて、「脚本家や俳優の仕事を奪うようなAIの使用を規制せよ」という要求を含めたストライキが実施されたり、ゲームのAI使用をめぐったストライキ実施も宣言されたりと、「AIに仕事を奪われる」という不安の声がしばしば挙がります。実際に、労働市場分析企業のBloomberryが「ChatGPTなどの生成AIが登場したことで悪影響を受けた仕事」について分析した結果、「ライティング」や「翻訳」の仕事が強く影響を受けていることが判明しており、ジャーナリストやライターはメディアがAIを導入することに敏感になりつつあります。
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コラムニストのトム・ジョーンズ氏は、ESPNが「AIが一部スポーツの試合概要に取り組むことによって、人間のジャーナリストはより影響力のある仕事に取り組めるようになる」と主張している一方で、現在の範囲はあくまで実験段階で、「今後より多くのスポーツでAI記事が作られることを妨げるものは何もありません」と指摘しています。ジョーンズ氏はスポーツジャーナリストが抱える不安について「サッカーやラクロスというこれまで報道が少なかったスポーツについて、新たなジャーナリストを雇用するのではなく、AIに任せる選択をESPNは下しました。これは、ジャーナリストを時代遅れにすることを目的として、既存の仕事を機械に投入するものです」と述べています。
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