相次ぐ中国のEVメーカーの倒産により所有者はスマホアプリのアップデートやクラウドサービスに依存した機能へのアクセスを失いつつあるとの指摘


中国ではテスラを抜いて世界で最も多くの電気自動車を販売したメーカーとなった「BYD」を含め、100社以上の電気自動車メーカーが生き残りをかけてしのぎを削っています。一方で、価格競争などに敗れた一部のメーカーは破産といった道を選んでおり、その結果車両のロックやエアコンなど、スマートフォンアプリで操作する機能が使用できなくなっていることが指摘されています。
EV owners face software blackouts as startups go under in China - Rest of World
https://restofworld.org/2024/ev-company-shutdowns-china/


激しい価格競争と政府による補助金が段階的に廃止されつつある中国では、100社以上の電気自動車メーカーが奮闘していますが、2020年以降、SingulatoやAiwaysなど、20社以上のメーカーが市場からの撤退を表明しています。2022年2月にはハイエンド電気自動車メーカーのHiPhiが財政難に苦しんだ結果、生産を停止しました。
中国自動車ディーラー協会によると、相次ぐ電気自動車メーカーによる破産の申請や操業停止によって推定16万人ものドライバーが窮地に立たされているとのこと。実際に、2023年10月に破産を申請した上海を拠点とする電気自動車メーカー「WM Motor」では、車のロックとエアコンを遠隔操作するためのスマートフォンアプリを提供していたほか、車のダッシュボードには走行距離や充電状況などを表示していました。しかし、WM Motorによる破産申請後、アプリを含めたこれらの機能が使用できなくなっているほか、一部のユーザーからはインターネット接続が必要なビルトインカーステレオが機能しなくなったことも報告されています。
あるオーナーは「車のシステム全体がまひしており、エンターテインメントシステムの使用や車両の状態を確認することはおろか、アプリにログインすることもできません。これは安全上非常に問題です」と批判しました。


その後、WM Motorはこの件について謝罪し、問題が解決したことを報告。しかし、一部のドライバーからは「車載エンターテインメントなどの基本的な機能にアクセスすることが困難」といった声が上がっているほか、WM Motorのアプリ自体が中国のアプリストアで入手できないことも指摘されています。
海外メディアのRest of Worldは「中国におけるEV市場の競争が激化する中で、多くの電気自動車がスマートフォンを用いた制御やソフトウェアの更新まで、クラウドサービスに依存しているという事実は、車両の長期的な保守性に対する懸念を引き起こしています」と述べました。
関係者によると、今回のWM Motorをめぐる一件は、独自の工場と研究開発組織を備え、ゼロから独自の事業を構築したWM Motorだからこそ起こる特殊なケースとのこと。「他の多くの電気自動車メーカーは、既存の自動車メーカーやテクノロジー企業の子会社であるか、パートナーシップ協定を結んでおり、電気自動車事業が破綻したとしても、別の企業にアフターサービスを引き継ぐことができます」と関係者は語ります。


また、「WM Motorにとって最良の選択肢は、デジタルサービスを含むアフターサービスに関する業務を他企業に引き継がせることです。これにより、再び電気自動車の購入者が増加する可能性があります」と述べました。なお、WM MotorはRest of Worldの要請に対しコメントしていません。

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