GoogleがChromeからサードパーティーCookieを廃止する計画を撤回


Googleは2020年に、自社が開発するブラウザエンジンのChromiumで「将来的にサードパーティーCookieを廃止する」という方針を打ち立てました。しかし、廃止の実施予定が幾度も延期された結果、Googleは最終的に「サードパーティーCookieを廃止するのではなく、ユーザーの選択肢を高める新しいアプローチを提案します」と述べ、サードパーティーCookieの廃止予定を撤回しました。
A new path for Privacy Sandbox on the web
https://privacysandbox.com/news/privacy-sandbox-update/
Results from our display ads experiment with the Privacy Sandbox APIs - Google 広告 ヘルプ
https://support.google.com/google-ads/answer/15192137?sjid=15986717256411559608-NC
Googleは2019年に「ユーザーのプライバシー保護を向上させつつも、広告の関連性を損なわず、自由でオープンなエコシステムをサポートする新たなイニシアチブ」として、「プライバシーサンドボックス」を提唱しました。
Googleが「ユーザー情報を保護しつつ広告の関連性も損なわない」仕組みの開発を行うと宣言 - GIGAZINE


この一環として、GoogleはサードパーティーCookieのサポートを廃止する方針を発表しました。サードパーティーCookieとは、ユーザーが訪れたウェブサイトとは異なるドメインから発効されるCookieのことで、ドメインを横断したトラッキングが可能でユーザーの行動を計測できることから、アクセス解析やターゲティング広告に利用されています。
Chromeは2年以内にサードパーティーCookieのサポートを廃止する方針 - GIGAZINE


Googleは、サードパーティーCookieの廃止に向けて新たなAPIやトークンの仕組みを作り、Chromiumに統合しようと考えました。しかし、この新しい仕組みはGoogleのエコシステムが広告業界を牛耳ることにつながるとして、各国の公正取引委員会から独占禁止法違反の可能性が指摘されていました。
Googleの考案する新たな「Cookieレスの仕組み」に独占禁止法違反の目が向けられている - GIGAZINE


Googleは当初2022年にサードパーティーCookieを廃止する予定としていましたが、規制当局からにらまれたことで2023年末に予定を延期。その後、さらに予定を変更し、「2024年の第1四半期(1~3月)からユーザーの1%でテストを行い、第3四半期(7月~9月)から段階的にサードパーティーCookieを廃止していく」ことを明らかにしました。
GoogleがサードパーティーCookie廃止へのスケジュールを公開、2024年スタート予定 - GIGAZINE


しかし、2024年4月に、サードパーティーCookie廃止のスケジュールをみたび見直し、「2024年中に廃止計画が完了することはない」としました。
GoogleがサードパーティーCookie廃止のスケジュールを3度目の延期 - GIGAZINE


2024年7月22日、Googleのプライバシーサンドボックス部門担当バイスプレジデントであるアンソニー・チャベス氏は「サードパーティーCookieを廃止する代わりに、ウェブブラウジング全体に適用される情報に基づいた選択が行えるような新しいエクスペリエンスをChromeに導入します。私たちは規制当局とこの新しい道筋について協議しており、これを展開する際には業界と協力していきます」と述べました。
記事作成時点で、チャベス氏が述べる「新しいエクスペリエンス」とは何を意味するのは不明ですが、IT系ニュースサイトのThe Vergeは「Appleが導入しているオプトイン式プライバシーフレームワークであるApp Tracking Transparencyに似たものになる可能性がある」と予想しています。
また、Googleの広告チームはプライバシーサンドボックス技術の初期テストの結果を示すホワイトペーパーも公開。この初期テストでは、サードパーティーCookieを廃止すると広告収益が減少したものの、プライバシーサンドボックスAPIを有効にすると、その影響が軽減されたという結果が報告されています。
Googleのレポートによると、プライバシーサンドボックスAPIは、特に広告主の支出規模と投資収益率を高くしたことがアピールされていますが、一方で同じ顧客に再度アプローチするリターゲティングにおいては効果的ではなかったとのこと。Googleは「今日のリマーケティングが、広告のパーソナライゼーションをきわめて精密に行えるサードパーティーCookieに高く依存しており、これはプライバシーサンドボックスをテストしているサプライサイドプラットフォームがほとんどないためだろう」と分析しています。
GoogleはサードパーティーCookieのサポート廃止を見送るとしていますが、プライバシーサンドボックスAPIの開発は続ける姿勢を示しています。イギリスの規制当局である競争・市場庁(CMA)は「CMAは今後、プライバシーサンドボックスに対するGoogleの新しいアプローチを慎重に検討します。私たちは消費者や市場の結果に対する可能性のある影響を含め、Googleの修正したアプローチに関する意見を歓迎します」とコメントしました。
また、サードパーティーCookieの廃止に反対していた広告業界団体・The Movement for an Open Webの共同創設者であるジェームズ・ローズウェル氏は「私たちは長い間、プライバシーサンドボックスがそのメリットに基づいて競争することを許可されるべきだと主張してきました。広告主がそのアプローチを好み、消費者が主張されているプライバシー上の利点を評価するなら、それは普遍的に採用されるでしょう。受け入れられなかったのは、このような解決策が他の選択肢を排除しながら市場に強制されることでした」と述べています。

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