Googleから金銭を受け取らずブラウザエンジンも自前でゼロから開発するあらゆる束縛から解放された真のオープンウェブブラウザ「Ladybird」がGitHub創設者から1億6000万円超の資金を調達


MozillaのFirefoxやGoogleのChromeに対抗するべく、企業取引や広告収入なしでゼロからウェブブラウザを開発するため、GitHubの創設者であるクリス・ワンストラス氏と、オープンソースのPC向けOSであるSerenityOSの開発者・アンドレアス・クリング氏が、非営利団体の「The Ladybird Browser Initiative」を立ち上げました。同団体が開発しているウェブブラウザの名称は「Ladybird」で、ワンストラス氏から100万ドル(約1億6000万円)の資金援助を受けています。
Announcing the Ladybird Browser Initiative
https://ladybird.org/announcement.html


Shared post - Ladybird Web Browser becomes a non-profit with $1 Million from GitHub Founder
https://lunduke.locals.com/post/5812560/ladybird-web-browser-becomes-a-non-profit-with-1-million-from-github-founder
The Ladybird Browser Initiativeは全く新しいウェブブラウザをゼロから構築するために設立された非営利団体です。新しいウェブブラウザをゼロから開発するのは不可能だと主張する人もいますが、The Ladybird Browser Initiativeの創設者たちはこれが可能であると信じています。加えて、The Ladybird Browser Initiativeは企業取引や広告収入から資金を調達しなくても、ゼロからブラウザを開発することができると確信しているそうです。
The Ladybird Browser Initiativeが開発しているのは「Ladybird」と呼ばれるウェブブラウザで、2026年中に完全に機能するアルファ版のリリースを予定しています。
Ladybird
https://ladybird.org/


Ladybirdは2023年に最初の主要なスポンサーであるShopifyから10万ドル(約1600万円)の資金を調達しました。そして今回、ワンストラス氏から資金を調達し、非営利団体のThe Ladybird Browser Initiativeを立ち上げたことで、Ladybirdはユーザーから収集した個人情報を販売して利益を上げることがない唯一の主要なウェブブラウザになるための準備を着々と進めています。
The Ladybird Browser Initiativeはジャーナリストのブライアン・ランデュケ氏に対して、「今日、すべての主要なブラウザエンジンはオープンソースであり、それは素晴らしいことです。しかし、問題がひとつあります。それは、主要ブラウザのすべてがGoogleの広告から資金を提供してもらっているということです。また、Chrome、Edge、Brave、Arc、Operaはすべて、GoogleのChromiumをベースとしています。Appleは、Google検索をSafariのデフォルト検索エンジンにするために数十億ドル(数千億円)を受け取っており、Firefoxも同様の契約を結んでいます。つまり、世界にはユーザーを第一に考え、最新のブラウザエンジンを採用した、オープンスタンダードで広告の影響を受けないウェブブラウザが必要なのです」という声明を出し、Googleの影響を受けないウェブブラウザの必要性を訴えています。
The Ladybird Browser Initiativeはユーザーの個人情報を販売したり、広告収入を得たりするのに代わり、オープンウェブに関心を持つ企業や個人からのスポンサーシップをベースに資金調達を行う予定です。The Ladybird Browser Initiativeは「我々は非営利団体であるため、無制限の寄付以外に企業との取引や収益を追及することはありません。ソフトウェアとソースコードは永久に無料で利用できます」と説明しています。
実際、開発中のLadybirdのソースコードはGitHub上で公開されています。
GitHub - LadybirdBrowser/ladybird: Truly independent web browser
https://github.com/LadybirdBrowser/ladybird


運営資金の大部分を寄付に頼るというのは非常に不安定な団体運営方針のように感じますが、Ladybirdはこれまで多額の寄付金を集めてきた実績があり、ワンストラス氏が提供する100万ドルも寄付金という形でThe Ladybird Browser Initiativeに提供されます。すでにThe Ladybird Browser Initiativeは4人のフルタイムの開発者を雇用しており、さらに3人のプログラマーを雇用する予定です。
また、「無制限の寄付以外に企業との取引や収益を追及することはありません」と宣言している通り、Google検索をデフォルトの検索エンジンにするための契約を結ぶこともありません。そのため、「Ladybirdが主張を貫くことができれば、真に独立したウェブブラウザを実現できる可能性が高くなります。つまり、どの企業も制御できないブラウザとなるわけです」とランデュケ氏は指摘しています。
加えて、The Ladybird Browser Initiativeには「企業の寄付者が取締役の席を購入することはできない」というポリシーもあります。多くの非営利団体が当初は高い理想を掲げますが、理事会を企業に支配され、理想の実現から遠ざかっていくことをたびたび見てきたというランデュケ氏は、「Ladybirdが初めからこの問題を念頭に、それを防ぐための措置を講じていることは素晴らしいです」と指摘しました。

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なお、アルファ版のリリースは「2026年中」を予定しているものの、記事作成時点での開発バージョンはすでにかなり進んでいるようで、The Ladybird Browser Initiativeは「我々はすでに、GitHubの問題やプルリクエストの管理、Hacker Newsへのコメントなど、日常的なウェブブラウジングの一部をLadybirdで実行しています。貢献者のコミュニティが積極的にバグを修正し、機能を追加しているため、ブラウザは日々改善されています」と述べ、開発の進捗が順調であることを強調しています。
開発者のひとりであるクリング氏は、「ウェブは人類の偉大な発明のひとつであり、真に繁栄するためには多様で競合する実装が必要です。この業界は何年も前から問題のある方向に向かっており、MicrosoftやOperaなどの企業は独自のブラウザエンジンを放棄してChromiumを採用しています。もちろん、Google、Apple、Mozillaのようなリソースはないので、開発には時間がかかるでしょう。しかし、私は今後の道のりについて非常に楽観的です。Ladybirdには素晴らしい開発者コミュニティが存在しており、着実に進歩しています。我々の強みのひとつは集中力です。大手企業と異なり、我々はウェブブラウザというひとつのことだけに完全に集中しています。私たちは流行を追いかけたり、別の収入源を探したりするつもりはありません。目標は優れたブラウザを構築し、無料で配布し、取り組みに賛同してくれる人から寄付を募ることです」と語りました。

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