電源を切っても文字や画像を表示できる電子ペーパーは一体どんな仕組みなのか?


電子書籍リーダーなどに採用されている電子ペーパーは、「紙のような質感」「電源を切っても表示が消えない」といった特徴を備えており、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイとは異なる仕組みで動作しています。そんな電子ペーパーの仕組みについてまとめてみました。
電子ペーパーの基礎
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/67/10/67_881/_article/-char/ja
電子ペーパーの表示のしくみとは? -目にも環境にもやさしい「未来の紙」が実用化!-|テクノ雑学|TDK Techno Magazine
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/knowledge/117
Electronic Ink|E Ink Technology
https://www.eink.com/tech/detail/How_it_works
Wenting Zhang / Glider · GitLab
https://gitlab.com/zephray/glider
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイはディスプレイそのものが発光して目に光を届けています。一方で、電子ペーパーは自身は発光せずに外からの光を反射して表示内容を目に届けています。このため、電子ペーパーはギラつきのない紙に似た質感を実現できます。また、電子ペーパーは電圧をかけることで何度でも内容を書き換え可能なほか、電源を切っても表示内容が保たれるという特徴も持っています。これらの特徴から、電子ペーパーは電子書籍リーダーや小売店の価格表示板などで活用されています。


最初の電子ペーパーは1970年代にアメリカのゼロックスが開発した「Gyricon」だとされています。Gyriconは「半分を白く、半分を黒く塗った極小の球体」を大量に並べて、電界の変化によって球体を回転させて白黒画面を表示していました。
記事作成時点では、「極小カプセルの中に異なる電荷を帯びた白色粒子と黒色粒子を封入し、電界の変化によって白もしくは黒の粒子を表面側に移動させる」という「電気泳動方式」と呼ばれる方式が主流です。「電気泳動によって極小の粒子を移動させる」というアイデア自体は1960年代に松下電器(現パナソニック)の太田勲夫氏が特許を取得していましたが、粒子の凝集や沈殿に関する課題や生産性の向上には1987年に日本で出願された特許やマサチューセッツ工科大学の研究成果が大きく寄与したとのこと。


白黒の電子ペーパーの表面にカラーフィルターを追加することで、カラー表示も可能となります。


さらに、「白色粒子と黄・赤・青の三原色粒子」を極小カプセルに封入することで非常に多くの色を再現可能にする方式も開発されています。


例えば、2024年5月に登場したカラー電子書籍リーダー「Kobo Libra Colour」や「Kobo Clara Colour」には、RGBカラーフィルター搭載電子ペーパー「E Ink Kaleido 3」が採用されており、4096色を表示可能。両モデルでカラー表示した際の見た目は、以下の記事でチェックできます。
楽天Kobo史上初のカラー電子ペーパー搭載リーダー「Kobo Libra Colour」「Kobo Clara Colour」で実際に電子書籍を読んでみたレビュー - GIGAZINE


なお、電子ペーパーには「表示の切り替えに時間がかかる」という弱点が存在しますが、近年では高速な表示切り替えが可能な電子ペーパーも開発されており、60Hzという液晶ディスプレイなどと遜色ないリフレッシュレートを備えた電子ペーパーも登場しています。以下のムービーでは、60Hzの電子ペーパーを用いてブラウジングしたり映像を視聴したりする様子を確認できます。
Modos Paper Monitor Status Update - YouTube

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