イラストレーターの4分の1と翻訳者の3分の1がAIによって仕事を失っていることが明らかに


クリエイターの権利団体であるSociety of Authors (SoA)が、会員を含めたクリエイターを対象とした調査を2024年1月に行い、イラストレーターの4分の1以上、翻訳家の3分の1以上が生成AIによって仕事を失ったことがわかったと報告しています。
SoA survey reveals a third of translators and quarter of illustrators losing work to AI - The Society of Authors
https://www2.societyofauthors.org/2024/04/11/soa-survey-reveals-a-third-of-translators-and-quarter-of-illustrators-losing-work-to-ai/
SoAは2024年1月に、1万2500人の会員やその他の著者を対象に調査を実施し、787件の回答を得ました。調査結果によると、回答者の約22%が「仕事で生成AIを使用したことがある」と答えたとのこと。職業別で見ると、AIを使用したことがあると答えたのはイラストレーターの12%、翻訳家の37%、小説家の20%、ノンフィクション作家の約25%でした。また、イラストレーターと作家の約31%は「アイデアを出すために生成AIを使用した」と回答しています。
一方で、一部の翻訳家やイラストレーターは、出版社や発注団体から生成AIの使用を求められていることも明らかになりました。翻訳家の8%とイラストレーターの5%がクライアントの要望で仕事に生成AIを使用したと答えています。


また、調査結果から、生成AIがクリエイターのキャリアに与える影響に関する懸念が浮き彫りになったとSoAは述べています。特に、生成AIの登場によって仕事を失ったり、仕事の価値が下がったりしているクリエイターのグループが報告されています。
イラストレーターの26%と翻訳家の36%以上が、生成AIによってすでに仕事を失ったと回答しました。さらに、イラストレーターの37%以上と翻訳家の43%以上が、生成AIによって仕事の収入が減少したと述べています。将来的な創作活動による収入への影響については、小説家は65%以上、ノンフィクション作家は57%以上、翻訳家は77%、イラストレーターは78%が「生成AIによって負の影響を受ける」と考えています。
そして、回答者の86%以上が「自分のスタイルや声、容姿が生成AIの出力に模倣・再現されること」を懸念しているとのこと。また、同じく86%以上が「生成AIの使用が人間の創作物の価値を下げること」を懸念していたそうです。


一部の回答者は、特にコピーライティングやコンテンツ制作の分野で、生成AIが人間の創作者に取って代わる可能性があると懸念を示しました。これにより、クリエイティブ業界の品質と多様性が低下することが危惧されているとSoAは指摘しています。
そして、生成AIの規制の必要性、具体的には「著作権者の作品がシステムの開発に使用される前に同意を求めること」や「クレジットと補償を与えること」「生成AIシステムの出力にはそのようなラベルを付けること」などについては、ほぼ全員が賛成しました。
回答者の94%が、自分の作品が生成AIの開発や出力に使用される際には、クレジットと補償を求めています。また、95%が、そのような使用には同意が必要だと考えていることがわかりました。
さらに、回答者の95%は政府に対し、同意・補償・透明性の確保のためのセーフガードと規制を導入するよう求めています。そして、オーディオ、ビデオ、表紙、イラスト、意思決定、編集、翻訳の支援に生成AIが使用された場合、出版社やその他の組織はそれを明示すべきだと答えたのは回答者の90%以上でした。また、回答者の97%が、消費者には透明性を求める権利があり、自分が読んだり見たり聞いたりしたものの全部あるいは一部をAIで生成したことを知らされるべきだと答えました。


SoAは、生成AIが一部の創作者にとって有用なツールとなる可能性がある一方で、同意や報酬、透明性の確保などに向けた緊急の行動が必要であり、クリエイターの権利を尊重すべきだと訴えています。また、AIの開発者に対しては、過去の侵害と将来の使用に対するクリエイターへの報酬モデルを構築するため、業界と協力するよう求め、人間の創造性と著作権を保護することを約束すべきだと述べています。

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