音声を盗んだりアーティストを置き換えたりする「略奪的AI」を非難する書簡にビリー・アイリッシュやスティーヴィー・ワンダーなど200人以上の著名人が署名


近年ではAIの発展により、人間のアーティストの歌声などを学習して新たな楽曲を作り出す技術が登場しています。アーティストの権利団体「Artist Rights Alliance(ARA)」は2024年4月2日、「人間のアーティストの権利を侵害し、音楽の価値を下げかねないAIの使用は控えるべき」との書簡を発表しました。この書簡には、ビリー・アイリッシュ氏やスティーヴィー・ワンダー氏など、200名以上の著名アーティストが署名しています。
200+ Artists Urge Tech Platforms: Stop Devaluing Music - Artist Rights Alliance - Medium
https://artistrightsnow.medium.com/200-artists-urge-tech-platforms-stop-devaluing-music-559fb109bbac
Billie Eilish, Nicki Minaj, musicians warn against replacing human artists with AI
https://www.axios.com/2024/04/02/musicians-letter-ai-replace-artists


Billie Eilish, Pearl Jam, 200 artists say AI poses existential threat to their livelihoods | Ars Technica
https://arstechnica.com/information-technology/2024/04/billie-eilish-pearl-jam-200-artists-say-ai-poses-existential-threat-to-their-livelihoods/
Billie Eilish, Nicki Minaj, Katy Perry Sign Open Letter on AI
https://www.hollywoodreporter.com/business/business-news/billie-eilish-nicki-minaj-open-letter-ai-1235864532/
AI技術の発展に伴って、アーティストの楽曲を使用してAIモデルのトレーニングを行ったり、実際のアーティスト風の曲をAIが生成したりといった事例が増加しており、これらのAIが生成した楽曲によってアーティストに支払われるロイヤリティが減少してしまうことが危惧されています。
ARAは公開書簡で「AIは責任を持って使用すれば、人間の創造力を高め、世界中の音楽ファンに新しくエキサイティングな体験を与えられる大きな可能性を間違いなく秘めています。しかし、一部のプラットフォームやAI開発者はAIを用いてその創造力を阻害し、アーティストやソングライター、ミュージシャン、権利者を弱体化させています」と指摘しています。


さらに、「私たちはプロのアーティストの歌声や肖像を盗み、クリエイターの権利を侵害し、音楽のエコシステムを破壊しかねないAIの略奪的な使用からアーティストたちを保護する必要があります。私たちは全てのデジタル音楽プラットフォームや音楽サービスに対し、ソングライターやアーティストの芸術性を損なう、または置き換えたり、私たちの作品に対する公正な報酬の支払いを拒否したりといったAI音楽生成技術やコンテンツ、ツールを開発または展開しないことを誓うよう呼びかけています」と述べています。
この書簡に署名したのは、ビリー・アイリッシュ氏やスティーヴィー・ワンダー氏のほか、ニッキー・ミナージュ氏やケイティ・ペリー氏、エルヴィス・コステロ氏、サム・スミス氏ら200名以上のアーティストです。ARAは「AIは彼らの芸術に現実的な脅威をもたらしかねません」と指摘しています。
200+ artists call on tech companies to stop AI use that devalues music and infringes upon the rights of human artists. AI has enormous potential as a tool for human creativity – but when used irresponsibly, it poses an existential threat to our art. https://t.co/AaxboN5CEX pic.twitter.com/CPBeRX46td— Artist Rights Alliance (@artistrightsnow) April 2, 2024

ARAのエグゼクティブディレクターのジェン・ジェイコブセン氏は「現役のアーティストは、音楽ストリーミングサービスが活況を迎える中で生計を立てるのに苦労しています。そして今、AIが生成する『ノイズの洪水』と戦うというさらなる負担を抱えています。生成AIを非倫理的に使用して人間のアーティストを置き換えることは、アーティストとファンの両方にとって、音楽エコシステム全体の価値を下げることにつながります」と指摘しました。
一方でジェイコブセン氏は「今回の書簡によって法律が制定されることは考えていません。私たちはテクノロジーとデジタルのパートナーに、この市場を責任ある市場に変え、従来の品質を維持したまま、AIが人間のアーティストに取って代わらないよう協力を呼びかけています」と述べています。

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