Starlinkのアンテナで妨害波からの影響を受けにくくして受信感度も強化するGPSアンテナ改造法

Starlinkのアンテナで妨害波からの影響を受けにくくして受信感度も強化するGPSアンテナ改造法 - 画像


イーロン・マスクの衛星通信サービス「Starlink」のアンテナは、有用な信号を捉えきれず、他の信号に受信を妨害されてしまうことがあります。これを改善するためのアンテナ改造方法をソフトウェアエンジニアのオレグ・クトコフ氏が解説しました。
Connecting external GPS antenna to the Starlink terminal – Oleg Kutkov personal blog
https://olegkutkov.me/2023/11/07/connecting-external-gps-antenna-to-the-starlink-terminal/
Starlinkのアンテナにはいくつか種類があり、初代から順に「REV1」「REV2」などと呼ばれています。REV1とREV2は丸形、GIGAZINEでレビューした以下の四角いアンテナはREV3、2023年11月に登場したモデルはREV4。他にも「High Performance」などの亜種があります。
コストコで買ってきた人工衛星経由インターネット「Starlink」をセットアップしてインターネットに接続してみたよレビュー - GIGAZINE

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Starlinkのすべてのアンテナは、GPS信号の取得にSTの自動車向けレシーバー「Teseo」シリーズを使用しています。これはGPS/Galileo/GLONASS/BeiDou/QZSSといった複数の位置情報データを取得できる受信機で、クトコフ氏いわく「信頼性が高く、機能満載」。しかし同時に妨害電波の影響を受けやすくもあります。REV1ではフラッシュメモリとSoCの「STA8090」が使用されていましたが、その後はフラッシュメモリが取り除かれ、チップはより安価な「STA8089」に切り替えられています。

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アンテナ内部の構造も違い、丸型のREV1とREV2はスペースに余裕があって4分の1波長のパッチアンテナが採用されていますが、REV3ではコンパクトなセラミックチップアンテナに変わっています。この差により、一部の悪条件下ではREV1とREV2の方がGPS信号をより捉えやすくなっています。
REV3のチップアンテナはローゲイン(~3dB)の無指向性アンテナです。一般的にローゲインはハイゲインより通信強度が弱い分、指向性の広さに優れていますが、Starlinkに搭載されたローゲインアンテナは上空の衛星からの電波や近くにある電波をすべて捉えようとしてしまうため、測位に失敗して「ブート」状態に入ってしまうことがあります。最悪の場合、永遠にブート状態のままになるか、チップを破損させる可能性があるとのこと。

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こうした問題は、適切なGPSアンテナを別途取り付ける改造を施せば解決できるそうです。
Starlinkアンテナにはパッシブアンテナとアクティブアンテナの両方を取り付けることが可能。円偏波指向性アンテナだと、GNSS信号の円偏波を捉えやすく、妨害信号からの保護と、より速い測位ができるのこと。
外部アンテナケーブルはチップアンテナの代わりにスターリンクPCBに直接接続することもできます。まずチップアンテナを取り外し、次にPCBに同軸ケーブルを直接はんだ付け。ケーブルのシールドをGroundピンに付けると便利だそうです。

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電源の供給には、外部アンテナに直接接続するか、バイアスTが使えます。

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PCBには電圧レギュレーターがあり、3.3Vの電力を得ることができます。

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PCBからバイアスTへつなげるとこんな感じ。

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クトコフ氏は3つのGPSアンテナでテストを実施しています。

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結果は以下。いずれのアンテナも、標準のチップアンテナよりアップタイムが短くなりました。
アンテナGPS Fixまでの時間捉えた衛星の数GPS有効内蔵チップ3分5はい130秒10はい230秒10はい345秒13はい
レビューしたのでわかるのですが、Starlinkが起動時に衛星を探すのにかける時間はとても長いです。クトコフ氏は調整の結果、1分以内に11個の衛星を捉えることに成功しています。

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