MicrosoftがAI訴訟を「終末的未来論」と揶揄、新聞社をビデオデッキに反対した往年の映画業界になぞらえて嘲笑

MicrosoftがAI訴訟を「終末的未来論」と揶揄、新聞社をビデオデッキに反対した往年の映画業界になぞらえて嘲笑 - 画像


アメリカの大手日刊紙・The New York Timesは2023年12月に、ChatGPTが記事を盗用したとして、OpenAIとMicrosoftを著作権侵害で提訴しました。この訴えに対し、Microsoftは2024年3月4日に裁判所に提出した却下の申し立ての中で、AIが報道を破滅させると予言したThe New York Timesの訴えは非現実的だと断じました。
Microsoft derides ‘doomsday futurology’ of New York Times’ AI lawsuit
https://www.ft.com/content/1cc0c759-946c-41c8-ae0e-b2d8c4c09586
Microsoft Counters New York Times' AI Lawsuit Claims with 'Doomsday Futurology' Critique
https://bnnbreaking.com/tech/microsoft-counters-new-york-times-ai-lawsuit-claims-with-doomsday-futurology-critique
Microsoftは、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に提出した準備書面で、同社を訴えたThe New York Timesの主張を「終末的未来論(doomsday futurology)」と非難し、1980年代にビデオデッキ(VCR)の普及を阻止しようとしたハリウッドスタジオと同じだと指摘しました。

MicrosoftがAI訴訟を「終末的未来論」と揶揄、新聞社をビデオデッキに反対した往年の映画業界になぞらえて嘲笑 - 画像


イギリスの経済紙・Financial Timesによると、アメリカの大手メディア企業として初めてチャットAIを訴えたThe New York Timesは、「MicrosoftとOpenAIはプログラムを構築するために数百万件の記事を違法にコピーし、私たちがジャーナリズムに対して行ってきた多額の投資にフリーライドしようとした」と主張しているとのこと。
AIが著作権侵害によって作られているとの訴えに対し、Microsoftは「ビデオデッキ、あるいは自動ピアノ、コピー機、PC、インターネット、検索エンジンなどがそうであったように、著作権法は大規模言語モデルに対する障害ではありません。また、ChatGPTのようなツールのトレーニングに使用されるコンテンツが、著作物に取って代わることもありません」と反論しました。
Microsoft側の弁護士はさらに、The New York Timesが最初の訴状で提示した著作権侵害の事例は「非現実的なプロンプト」によるものであり、「現実世界のユーザーがGPTベースのツールをどのように使用しているか」を反映したものではないとも批判しました。
このMicrosoftの主張は、「The New York TimesがChatGPTをハッキングして自社の記事のコピーを出力するよう操作した」とするOpenAIの見解を支持するものです。
OpenAI対ニューヨーク・タイムズ裁判でOpenAIが「ニューヨーク・タイムズは自社の記事を引き出すためにChatGPTをハッキングした」と主張 - GIGAZINE

MicrosoftがAI訴訟を「終末的未来論」と揶揄、新聞社をビデオデッキに反対した往年の映画業界になぞらえて嘲笑 - 画像


その上でMicrosoftは、「The New York Timesは、弁護団以外の誰かが実際にそのようなChatGPTの使い方をすることを示しておらず、その主張は同紙が読者に向けて誇張してきたような終末的未来論に相当するものでもありません」と述べました。
Microsoftの申し立てとは別に、OpenAIは2024年2月に提出した独自の却下申請で「ChatGPTはThe New York Timesの購読に代わるものではありません」「通常の方法では、ChatGPTを通じて新聞記事を自由に提供することはできません」と述べて、The New York Timesに反論していました。
AI企業を著作権侵害で訴えているのはThe New York Timesだけではなく、これまでにThe Intercept、Raw Story、AlterNetといった大手メディアや、複数の作家がOpenAIなどを相手に訴訟を起こしています。
こうした点から、AI企業とオールドメディアが初めて本格的に衝突することになった今回の訴訟は、高度なAIがジャーナリズムを含むさまざまな分野に普及することに伴う「成長痛」であるとともに、人間の利益を守りながらAI技術の急速な進歩に対応できるような法的な枠組み作りが喫緊の課題であることを浮き彫りにするものだと位置づけられています。

ジャンルで探す