X(旧Twitter)は世論を分断しアメリカ大統領選挙の操作をもくろむ中国のプロパガンダアカウントをMetaや検察官が報告しても放置している

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X(旧Twitter)は2022年にイーロン・マスク氏によって買収されて以降、コストカットや方針の変更などによりフェイクニュースやインプレッション稼ぎのボットが増加しています。大手日刊紙のワシントン・ポストの調査で、2024年のアメリカ大統領選挙に影響を及ぼそうとしている中国などのプロパガンダアカウントが、他のソーシャルメディアから排除された後もX上では放置されていることがわかりました。
Propaganda accounts found by Meta still flourish on X - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2024/02/16/x-meta-china-disinformation/

X(旧Twitter)は世論を分断しアメリカ大統領選挙の操作をもくろむ中国のプロパガンダアカウントをMetaや検察官が報告しても放置している - 画像


Elon Musk’s X allows China-based propaganda banned on other platforms | Ars Technica
https://arstechnica.com/tech-policy/2024/02/elon-musks-x-allows-china-based-propaganda-banned-on-other-platforms/
現代社会においてソーシャルメディアは選挙や政治を動かす力を持っていますが、中国やロシアなどは非友好国の選挙結果を変えるため、ソーシャルメディア上でのプロパガンダ活動に従事しています。実際に2016年のアメリカ大統領選挙では、ロシア陣営が民主党候補だったヒラリー・クリントン氏を落選させるための工作を行っていたことがわかっており、アメリカの民主主義プロセスを弱体化させる上でソーシャルメディアのプロパガンダが有効であることが示されました。
その後、FacebookやInstagramを運営するMetaやTwitter、YouTubeなどのソーシャルメディア各社は外国の干渉キャンペーンを抑制するために協調し、外部の研究者や法執行機関とも協力してきました。これらの企業は、外国のプロパガンダネットワークに関する情報共有のための会議を隔週で開き、疑わしいアカウントの削除に取り組んできたそうです。
ところがXは過去数カ月にわたり、会議に代表者を派遣していないとのこと。最後にXの代表者として会議に出席していたのは、Xの選挙の公正性チームに所属し、フェイクニュース対策に従事していたアーロン・ロデリックス氏でしたが、2023年9月にロデリックス氏を含む選挙の公正性チームは解雇されています。マスク氏はロデリックス氏らの解雇について、「ああ、選挙の公正性を損なっていた『選挙の公正性』チームですか?もうなくなってしまいました」とXで発言しています。
Oh you mean the “Election Integrity” Team that was undermining election integrity? Yeah, they’re gone.— Elon Musk (@elonmusk) September 27, 2023
ワシントン・ポストの調査によると、Metaが2023年のレポートで報告したXのプロパガンダアカウント150個のうち、136個が2024年2月15日の時点で存在していたとのこと。Metaが2023年の5月、8月、12月に「中国を拠点とする欺瞞(ぎまん)的キャンペーンに参加した」と報告した123個のアカウントも、8個を除いていまだにX上で活動しているそうです。また、ニューヨーク州東部地区連邦検察局が告訴状で「中国公安部が運営している」と言及した複数の中国関連アカウントも、いまだに削除されていません。
中国を拠点とするプロパガンダキャンペーンで用いられるXアカウントは、10代のトランスジェンダーへのケアを制限する法案や極右思想、ロシアメディアのイスラエル戦争に関する記事などを投稿またはリポストしており、大半は北米に住む一般人を装っています。スタンフォード大学インターネット天文台(SIO)の技術研究マネージャーであるルネ・ディレスタ氏は、「これらのアカウントの存在は、国家主体がメディアやアメリカ人になりすまし、アメリカの政治に影響を及ぼそうとしている事実を補強します。2022年の中間選挙を前に、研究者とプラットフォーム整合性チームは、外国の影響キャンペーンを妨害するために協力していましたが、このコラボレーションは止まってしまいました。Twitterは同業者によって特定されたネットワークにさえ対処していないようです」と述べています。

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米中経済・安全保障問題検討委員会で中国の検閲とプロパガンダの研究を行っているキーラン・グリーン氏は、中国共産党の指導部はあらゆる手段を使って海外の人々に影響を与えていると指摘。「その手法の中には、ハッシュタグにゴミのような投稿を氾濫させたり、政府に批判的な著名専門家になりすましたり、ボットアカウントを使って社会的なコンセンサスに誤った印象を与えたりすることが含まれます。目的は必ずしも人の心を変えることではなく、反中国的な言説を形成することが不可能なほど言説を混乱させることにあります」と述べています。
他にも、2023年7月には検閲を理由にアメリカ政府がソーシャルメディア企業に対してフェイクニュースキャンペーンの警告を行うことを禁止する判決が出るなど、外国のプロパガンダキャンペーンから選挙を守る取り組みは苦境に立たされています。Xの元上級政策担当者であるアニカ・コリアー・ナバロリ氏は、「Twitterは2020年の選挙を前に人員を増強し、当時最高の信頼と安全が得られるようにしましたが、すべてが2016年以前の状態に戻ってしまいました。政府と企業の、そして企業間のコミュニケーション不足を目の当たりにしています」とコメントしました。

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