出会い系アプリでのマッチングがうまくいかない理由は中古車市場の理論で説明できる

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2022年の調査ではパートナーを見つけるのに出会い系アプリを使った人の割合が10%を超えるなど、出会い系アプリが新たな出会いを創出していることは間違いありませんが、一方で出会い系アプリには構造的な欠陥があるという分析を経済学・公共政策の修士号をもつリポーターのグレッグ・ロサルスキー氏が行っています。
The dating app paradox: Why dating apps may be worse than ever : Planet Money : NPR
https://www.npr.org/sections/money/2024/02/13/1228749143/the-dating-app-paradox-why-dating-apps-may-be-worse-than-ever

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ロサルスキー氏は出会い系アプリの欠陥として大きく2つの要素を取り上げています。1つ目は出会い系アプリのビジネスモデルで、多くのアプリが基本無料であるもののプロフィールの注目度を上げたり無制限でメッセージを送信したりする機能は有料となっている点を踏まえ、「ユーザーがマッチングに成功して退会するごとにアプリはユーザーを2人失う」とアプリ側にユーザーのマッチングを成功させるインセンティブが無いことを指摘しました。

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出会い系アプリを運営する企業はもちろん営利目的のため、マッチングしたいユーザーとは反対の意思を持つことになります。ロサルスキー氏はこうした構造について「マッチングアプリのパラドックス」だと述べています。
2つ目の欠陥として、ロサルスキー氏は「出会い系アプリでのマッチング」はノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アカロフ氏の「レモン市場」と同じ構造であると指摘しました。
例えば新車は中古車になった瞬間に大きく価格が下落してしまいますが、それは新車と同じような見た目や使用感でも買い手が「中古だから何か大きな欠陥があるかもしれない」と考え、そのリスクの分だけ値引きを要求するためです。一方で売り手は自分の車が新車同様の高品質な車であることを知っているため、「そんな価格では売れない」と市場から退出してしまいます。すると市場には品質の悪い中古車ばかりがあふれることになり、買い手はさらにリスクを見積もってより大きな値引きを要求し……というループが繰り返されて市場に粗悪品ばかりが並ぶことになってしまいます。アメリカの俗語で品質の悪い中古車のことを「レモンカー」と呼ぶため、アカロフ氏はこうした情報の非対称性によって粗悪品ばかりが出回ってしまう市場のことを「レモン市場」と名付けました。

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出会い系アプリも同様に、最初は「本当の愛を求めるロマンチスト」という優良ユーザーが居るものの、同時に「プロフィールにウソを書いたり重要な情報を書かなかったりする卑劣なユーザー」も存在しています。そうした場において、ユーザーは相手を探す際に「プロフィールが盛られているかも……」と割り引いて考えるのは当然のことですが、一方で正直にプロフィールを書いている優良ユーザーは自分を過小評価されることに嫌気がさしてアプリを辞めるため、最終的には卑劣なユーザーばかりが残り「良いマッチング」が成立しなくなってしまいます。

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ロサルスキー氏は中古車市場では第三者による評価を用いることでこの問題を軽減していることに触れた上で、出会い系アプリでも同様の解決策を模索する必要があると述べました。

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