「シオニスト」という言葉がヘイトスピーチになるかどうかMetaが検討中、イスラエル建国に反対する超正統派ユダヤ教徒からは批判の声

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シオニストとは、ユダヤ人としての国家をかつてユダヤ人の国家が存在した土地に建設しようとする近代的ユダヤ人の運動「シオニズム」を信奉する人々を指す言葉です。このシオニストという言葉がヘイトスピーチに該当するかどうかについて、FacebookやInstagramを運営するMetaが検討中であることが明らかになりました。
Meta Considering Increased Censorship of the Word “Zionist”
https://theintercept.com/2024/02/08/facebook-instagram-censor-zionist-israel/

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Inside Meta, a debate over when the word ‘Zionist’ is hate speech - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2024/02/09/meta-zionist-hate-speech/
テクノロジー系メディアのThe Interceptは、Metaが2024年1月30日に複数の市民社会団体に「Metaは現在、特に『シオニスト』という用語に関連したヘイトスピーチのポリシーを再検討しています」と記したメールを送ったと報じました。情報筋によると、Metaはまだ最終的な決定を下したわけではなく、市民社会団体やデジタル権利擁護団体からポリシーに関するフィードバックを求めている段階だそうです。
Metaは長年にわたり、中東にユダヤ人国家であるイスラエルを建国するという歴史的運動の支持者と、現在のイスラエル政府の支持者を指す「シオニスト」という言葉を許可してきました。しかし、ハマスとイスラエルの軍事紛争が発生して以降、ソーシャルメディア上で反ユダヤ的なヘイトスピーチが増加していることを受けて、Metaはポリシーの見直しに乗り出したとみられています。もし、シオニストという単語を含む幅広い投稿がヘイトスピーチだと認定されれば、イスラエルに対して批判的な投稿が大量に削除されるようになる可能性があります。
アメリカ最大のユダヤ人団体である名誉毀損防止同盟のCEOを務めるジョナサン・グリーンブラット氏は、「発言者が反シオニストであれ白人ナショナリストであれ、シオニストという言葉はしばしば『ユダヤ人』をおとしめる際の代名詞として使われます」とコメント。ハマスとイスラエルの軍事衝突以降、Facebookなどのソーシャルメディアでは、反ユダヤ的かつ脅迫的な文脈でシオニストという言葉を使うケースが増えていると主張しています。
Metaの広報担当者であるコリー・チャンブリス氏は、「私たちは、国籍や宗教などの保護された特性に基づいて、他者を攻撃することを許可しません。このポリシーを施行するには、人々がどのような言葉を使ってこれらの特性に言及しているのかを理解する必要があります。シオニストという言葉は、保護された特性ではない個人のイデオロギーを指すことが多いですが、ユダヤ人やイスラエル人を指す言葉としても使われます。中東での出来事のために偏った言説が増加していることを考慮すれば、シオニストという用語を使用した投稿を審査する指針を検討することが重要だと考えます」と述べました。

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しかし、シオニストという言葉はもともと宗教や人種ではなく政治的イデオロギーを指すものであり、ヘイトスピーチの幅を広げることがより強力な言論統制につながる懸念もあります。親パレスチナのデジタル権利団体である7amlehの共同設立者であるナディーム・ナシフ氏は、「シオニズムはイデオロギーであり、人種ではありません。私たちがMetaに伝えたように、これは滑り坂のようなものです。シオニストという言葉を検閲することにより、正当な政治的議論の一部であるイスラエルやシオニズムを批判する多くのコンテンツが削除可能になってしまいます」と述べています。
イスラム教徒の民間擁護団体であるMPower Changeで立法・政治ディレクターを務めるヤスミン・タエブ氏は、「ガザで大量虐殺が行われている最中に、イスラエルに批判的な親パレスチナ派の言論弾圧が起きています。Metaは政治的言論が抑圧されないようにするポリシー実施に取り組むべきなのに、まったく逆のことをしています」とMetaの取り組みを批判しました。
また、同じユダヤ人であっても、シオニズムに賛成したり理解を示したりする人々と、シオニズムに反対する人々に分かれています。特にイスラエル国外に住むユダヤ教超正統派の中には、「神がメシアの時代にユダヤ人国家を再建する」という教えに従い、「人間がユダヤ人国家であるイスラエルを建国することは神の教えに反する」とイスラエルに否定的な主張を持つ人々が存在します。これらのシオニズムを批判するユダヤ人にとって、「シオニスト」という言葉は「ユダヤ人」と同一ではありません。
ユダヤ人活動家組織・Jewish Voice for Peace(平和のためのユダヤ人の声)の代表者であるダニ・ノーブル氏は、「パレスチナの自由を求める反シオニストのユダヤ人組織として、私たちはMetaが政治的イデオロギーである『シオニズム』の範囲を拡大し、民族的・宗教的アイデンティティである『ユダヤ人』と同じものとして扱うことを検討していると知って恐怖を抱きました。このポリシーの転換は、パレスチナ人の人権を侵害するイスラエル政府の政策や行動に対する説明責任から、イスラエル政府を守る結果となるでしょう」と述べています。

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Metaが新たなポリシーの下で検閲可能になると例示した投稿には、「シオニストは戦争犯罪人だ。ガザで何が起きているのか見ればいい」「私はシオニストが嫌いだ」「今夜の進歩的学生協会の会合にシオニストは入れません」といったものが含まれていました。
特にナシフ氏は「毎日のニュースを読むがいい。シオニスト、アメリカ人、ヨーロッパ人の連合が世界を支配しようとしている」という投稿を例に挙げ、これはユダヤ人が世界を支配しているといった陰謀論ではなく、アメリカ・ヨーロッパ・イスラエル間の戦略的同盟と外交政策の連携に対する批判だと指摘。こういった政治的な妥当性がある主張が陰謀論と混同され、政治的批判ができない状況になってはならないとナシフ氏は主張しています。
ノーブル氏は、「反シオニズムと反ユダヤ主義を混同することは、国家や軍隊に対する正当な批判を抑圧することにより、人権のために戦う世界中のすべての人々に害を与えます。それだけでなく、真の反ユダヤ主義やあらゆる形態の人種差別、過激主義、抑圧を解体するための私たちの集団的な努力を損ない、ユダヤ人の安全を実際に守る上で何の役にも立ちません」と述べ、Metaの方針を批判しました。

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