BitLockerの回復キーを一瞬で奪取する激安デバイスが作り出されてしまう

BitLockerの回復キーを一瞬で奪取する激安デバイスが作り出されてしまう - 画像


Windows 10 ProやWindows 11 ProなどのWindows上位エディションにはストレージ暗号化機能「BitLocker」が搭載されており、攻撃者にPCを分解されてストレージを抜き取られた場合でも情報の閲覧を防ぐことができます。ところが、BitLockerの暗号化解除用の回復キーを一瞬で奪取できるデバイスがセキュリティ系YouTuberのstacksmashing氏によって開発されてしまいました。
Breaking Bitlocker - Bypassing the Windows Disk Encryption - YouTube

◆BitLockerの回復キーを奪取する実例
以下はLenovo製のノートPCで、BitLockerによるストレージ暗号化が施されています。

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ノートPCのカバーを外し始めるstacksmashing氏。

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カバーを外したら、回復キー奪取用デバイスを基板上の端子に当てます。

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デバイスを端子に当てると一瞬で回復キーが読み取られました。ノートPCの分解を始めてから回復キーを奪取するまでにかかった時間はわずか42.9秒です。

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◆回復キーを奪取する仕組み
stacksmashing氏が回復キーの奪取を試みたLenovo製ノートPCには「TPM」と呼ばれるセキュリティチップが搭載されていました。

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TPMにはBitLockerの回復キーが暗号化された状態で保存されています。TPMはシステムの起動時にハードウェアの正常性を確認した上で回復キーを復号してCPUに送信するのですが、TPMとCPU間の通信は暗号化を伴わずに実行されています。stacksmashing氏はTPMとCPU間の通信が暗号化されていないことに目をつけ、LPCバスを通る通信を分析することで回復キーを奪取する手法を考案しました。

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テストに使ったLenovo製ノートPCの基板上には何も実装されていないコネクタが残っていたため、コネクタに電極を接続。

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通信内容を分析することで回復キーを奪取することに成功しました。

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上記の方法では「コネクタに電極を接続する」「通信内容を分析して回復キーを導き出す」といった操作が必要です。stacksmashing氏はこれらの操作を簡略化するために通信内容を処理するためのRaspberry Pi Picoやコネクタを搭載したデバイスを設計しました。

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完成したデバイスの見た目はこんな感じ。デバイスの名前は「Pico TPM Sniffer」で、総コストは約10ドル(約1500円)とのこと。

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反対側にはRaspberry Pi Picoが搭載されています。

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コネクタも搭載しているので、電極を慎重に接続する手間も省けます。

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Pico TPM Snifferを用いることで、冒頭の「42.9秒での回復キー奪取」を実現したというわけです。

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回復キーさえ奪取してしまえば、後はストレージを抜き取って他のマシンに接続して回復キーを用いて復号するだけでストレージの中身を閲覧できます。

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stacksmashing氏は実際にBitLockerで暗号化されたストレージを復号することに成功しています。

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なお、近年のCPUはTPMを内蔵しているものが多く、今回のテストに用いたLenovo製ノートPCのように専用のTPMチップを搭載しているノートPCは減りつつあります。それでもいくつかのモデルでは依然として同様の手法で回復キーを奪取可能とのことです。
stacksmashing氏はPico TPM Snifferの設計図を以下のリンク先で公開しています。
GitHub - stacksmashing/pico-tpmsniffer: A simple, very experimental TPM sniffer for LPC bus
https://github.com/stacksmashing/pico-tpmsniffer

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