「中国のスパイがAIを使ってアメリカのデータを収集している」とアメリカ側が主張、アメリカと中国間の対立構造が浮き彫りに

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中国では、習近平国家主席の下で、世界有数の経済および軍事大国としてアメリカに並ぶという目標を達成するために、技術開発などが行われてきました。また、中華人民共和国国家安全部(MSS)は、その目標を達成するべく、AIを用いてアメリカ国民や企業に対する情報収集を強化していることが報じられています。
Chinese Spy Agency Rising to Challenge the C.I.A. - The New York Times
https://www.nytimes.com/2023/12/27/us/politics/china-cia-spy-mss.html
China Is Stealing AI Secrets to Turbocharge Spying, U.S. Says - WSJ
https://www.wsj.com/tech/ai/china-is-stealing-ai-secrets-to-turbocharge-spying-u-s-says-00413594
かつてMSSの諜報員は、大使館で開かれる会食などに潜入して情報を入手していました。しかし今では、MSSの情報収集や偽装能力は中央情報局(CIA)と対等に渡り合えるレベルにまで高まっているとされています。
アメリカの研究機関「スティムソン・センター」の中国担当ディレクターであるユン・スン氏は「中国では、他国の既存の技術や企業秘密を悪用することが、政府が奨励する一般的な方法となっています。技術分野でのスパイ活動に対する緊急性と活動の激しさは、近年著しく増しています」と述べています。
The New York Timesによると、アメリカの諜報機関は長年にわたって経済の情報のみを収集してきており、軍事企業以外の技術の進歩に関する情報収集は避けてきたとのこと。一方で連邦捜査局(FBI)は、「中国がAIを使って、これまでには不可能だった規模でアメリカ人や企業のデータを収集している」と推測しています。FBIのクリストファー・レイ長官は「中国のスパイはアメリカの企業から盗んだAI技術を使って、大規模なハッキング作戦を立案しています」と主張しました。

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そこでFBIは「保護すべきアメリカの重要技術リスト」にAI技術を追加し、AIが大規模なハッキング作戦を支援するための増幅器として使用されないよう対策を行っているとのこと。FBIでは、AI開発企業自体を保護するのではなく、AIを処理できる強力なチップを開発する企業の保護を優先しています。これにより、たとえハッカーがAIのアルゴリズムを盗むことに成功したとしても、チップの情報を持たない状況が続くと、すぐにアルゴリズムが時代遅れになってしまうとされています。
これまでに中国は数億件もの顧客記録のハッキングに関与してきたと考えられており、「中国は個人情報を盗むことが得意」と評されてきました。
しかし、何十億ものデータを収集すると、人間のハッカーは正確な情報を見つけることに苦心してしまいます。ですが、AIにはそのような制限はありません。
Microsoftのブラッド・スミス社長は「ここ数年、機械学習とAIを利用してデータセットを分析し、ターゲティングに使用する能力を持つユーザーが現れることが懸念されていました。しかし、2021年から2023年の2年間のうちに、それが実際に起こったという証拠を目の当たりにしました」と述べました。また、2021年に起こった、Microsoftの電子メールソフトウェアを実行しているサーバーに対する中国からの攻撃について触れ「非常に具体的なターゲティングの兆候が確認されました。この事件では、AIがターゲティングの改善や改良に活用されたと考えるべきでしょう」と指摘しました。

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アメリカ国家安全保障局(NSA)の元顧問弁護士であるグレン・ガーステル氏は「中国はAIを活用して、健康記録からクレジットカード、パスポート番号から親子の名前や住所まで、ほぼ全てのアメリカ人に関する書類を作成することができます。中国が活用するAIと中国政府のハッカーが合わせれば恐ろしい国家安全保障上の脅威になります」との警告を発しています。
スミス氏は「AIを攻撃的な道具ではなく、強力な防御の盾として使うことができると信じています。兵器化されたAIによる大規模なサイバー攻撃は、AIを用いて対処できるはずです」と語りました。
一方で、中国外務省のワン・ウェンビン報道官は、2023年7月に起こった政府高官数人のメールシステムをハッキングしたという疑惑に対し「アメリカは世界最大のハッキング帝国で、世界的なサイバーテロリストだ」と強く批判し、アメリカのネットワークへのハッキング関与やサイバー攻撃の存在を否定しています。

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