時速1200kmの超高速交通システムを目指した「Hyperloop One」が全資産売却・従業員解雇で事業終了へ

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チューブの中を人や荷物を載せた車両を時速1200kmで走らせるという、実業家のイーロン・マスク氏が提唱したオープンソース企画「Hyperloop(ハイパーループ)」構想の事業化を目指していた「Hyperloop One」が、全資産を売却した上で残っている従業員も2023年の年末をもって解雇する予定になっていることがわかりました。
Hyperloop One to Shut Down After Raising Millions to Reinvent Transit - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-12-21/hyperloop-one-to-shut-down-after-raising-millions-to-reinvent-transit
The hyperloop is dead for real this time - The Verge
https://www.theverge.com/2023/12/21/24011448/hyperloop-one-shut-down-layoff-closing-elon-musk
事情に詳しい匿名の関係者がニュースサイト・Bloombergに語った内容によると、Hyperloop Oneには2022年初頭時点で200人以上の従業員がいましたが、すでに大半が解雇されており、ロサンゼルスにあったオフィスも閉鎖されているとのこと。保有資産であるテストコースや機材なども売却が進められていて、売却手続きの監督をするために残っている従業員も2023年12月31日をもって雇用関係が終了することになっているそうです。
Hyperloop Oneの株式の大半は、2016年からドバイ資本のDP Worldという会社が保有しており、Hyperloop Oneが持つ知的財産権はDP Worldに譲渡されることになっています。
なお、Hyperloop Oneは2023年初頭にペーパーカンパニーと合併し、株式は無価値状態になっていて、Hyperloop Oneの所有者はそのペーパーカンパニーの株主のみという状態になっているそうです。
ハイパーループ構想は、テスラやSpaceXなどのベンチャーを成功させてきたイーロン・マスク氏が打ち出したもので、アイデアをオープンソースにして積極的な参加を呼びかけたところ複数の企業や学生グループが参加しました。その陣営の1つがHyperloop One(旧名称:Hyperloop Technologies)でした。
Hyperloop Oneは2016年、ラスベガス近くの砂漠で屋外走行テストを実施。
時速1200kmの超高速移動体「Hyperloop」が初の屋外走行テストに成功、実走行ムービーも公開される - GIGAZINE

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2017年にはテストコースで時速310kmでの走行に成功。
ハイパーループ開発陣営の一つ「Hyperloop One」が実物大の車両で時速310kmの走行に成功、ムービーも公開 - GIGAZINE

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航空会社などを中核としたコングロマリットのヴァージン・グループが出資して「Virgin Hyperloop」となっていた時期もあり、2030年以降の商業展開を目指してコンセプトムービーが公開されたこともあります。
真空チューブ内をポッドが駆け抜ける「ハイパーループ」の乗客体験ムービー、2030年以降の商業展開が目標 - GIGAZINE

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2020年には有人走行にも成功していますが、速度は時速160km程度。その後、新型コロナウイルスのパンデミックの影響でヴァージン・グループは貨物優先の方針を打ち出してハイパーループ構想から撤退、名称もHyperloop Oneに戻されました。またこの時期に創業者や当時の経営陣はほぼ退陣しています。
かつては複数のライバルがいて、そのうちの1社であるHyperloop Transportation Technologiesは2018年にフルサイズのポッド「Quintero One」を公開するところまで至っていますが、Hyperloop Oneより先に事業化を諦めており、Hyperloop Oneの事業終了によってハイパーループ構想は完全に挫折したことになります。
なお、提唱者のイーロン・マスク氏自身は地下に掘ったトンネルの中を高速に移動できるシステムを実現すべく「The Boring Company」を設立。
イーロン・マスクの時速200kmで走れる「地下トンネル」がどれくらい時短につながるかを示すムービーが公開 - GIGAZINE

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ラスベガス・コンベンション・センターの地下への環状線敷設を実現しましたが、終点近くになると渋滞が発生していて、そもそもハイパーループ構想のもとにあった「市街地の渋滞に巻き込まれるイライラをなくしたい」というコンセプトは実現していません。
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• Discord | "イーロン・マスクの高速地下トンネル計画「ハイパーループ」はいつか実現すると思う?" | GIGAZINE(ギガジン)
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