Googleマップのアップデートで「犯行現場付近にいたユーザー」のデータを法執行機関へ提供することが不可能になる

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Googleマップには、Googleアカウントにログインしているデバイスを持って訪れた場所を保存し、後からルートや位置を確認できるロケーション履歴という機能があります。法執行機関がこのロケーション履歴を提出するようGoogleに命じる「ジオフェンス令状」にプライバシー上の懸念が寄せられる中、Googleがロケーション履歴の内容をアップデートし、事実上ジオフェンス令状が機能しなくなることが判明しました。
Updates to Location History and new controls coming soon to Maps
https://blog.google/products/maps/updates-to-location-history-and-new-controls-coming-soon-to-maps/

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Is This the End of Geofence Warrants? | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2023/12/end-geofence-warrants
Google Changes Map History Tool, Ending Geofence Warrants - Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2023-12-15/google-changes-map-history-tool-ending-geofence-warrants
法執行機関が犯罪捜査などの目的でGoogleに発行する「ジオフェンス令状」は、特定の時間帯に対象区域を通ったすべてのデバイスの位置データを提出するよう命じるものです。テクノロジー系メディアのWIREDによると、法執行機関は2016年からジオフェンス令状による情報請求をGoogleに行っており、その数は年々増加傾向にあるとのこと。
ジオフェンス令状は特定の個人やデバイスを対象としたものではないため、実際には犯罪捜査とは関係のない一般人のデータまで大量に法執行機関へと手渡され、容疑者リストに載せられてしまうことが懸念されています。実際、過去には日課のサイクリングでたまたま空き巣被害に遭った家の前を通り過ぎた男性に対し、警察がGoogleへ身元の開示要求を行った事例も報告されています。
2020年にはジオフェンス令状がアメリカ合衆国憲法の修正第4条に定められた「令状は、宣誓または確約によって裏付けられた相当な理由に基づいてのみ発行され、かつ捜索すべき場所、および逮捕すべき人、または押収すべき物件を特定して示したものでなければならない」という文言に反しており、違憲であるという判決が下されています。Google側もロケーション履歴の改善に乗り出しており、2022年には中絶クリニックやドメスティックバイオレンス(DV)シェルターなど、プライバシー性の高い場所への訪問情報を自動で削除することを発表しました。
Googleが中絶クリニックなどプライバシー性の高い場所への訪問情報をロケーション履歴から自動削除すると発表 - GIGAZINE

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現地時間の2023年12月12日、GoogleはGoogleマップの大幅なアップデートを発表しました。今回のアップデートによる変更点は以下の3つ。
◆1:ロケーション履歴(タイムライン)をユーザーのデバイスに保存する
これまで、ロケーション履歴はGoogle側のデータベースに保存されていましたが、アップデート後はユーザーのデバイスに保存されるようになります。また、デフォルトでオフになっているロケーション履歴をオンにした場合、これまでは18カ月で自動削除される設定でしたが、アップデート後はデフォルトの自動削除期間が3カ月に短縮され、設定を変えない場合は3カ月より古いデータは自動で削除されます。
新しいスマートフォンを購入する時やスマートフォンの紛失が気になるユーザーは、ロケーション履歴をGoogleのクラウドにバックアップすることも可能です。この場合、バックアップデータは自動的に暗号化され、Googleを含む誰も読み取ることができないとのこと。ロケーション履歴のアップデートはAndroidおよびiOSで2024年にかけて段階的に展開され、対象のユーザーには通知が届く予定です。

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◆2:特定の場所に関するアクティビティをマップから直接削除可能
サプライズの誕生日パーティーを企画しており、近くのケーキ屋にGoogleマップを使って向かったとします。新たなアップデートにより、ケーキ屋に関連するアクティビティをすべて1カ所で確認し、数回タップするだけで検索・経路・訪問・共有などのアクティビティを簡単に削除可能になるとのこと。マップから関連するアクティビティを削除する機能は、今後数週間以内にAndroidとiOSで展開されます。

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◆3:マップ上の青い点から直接位置情報をコントロール可能
Googleマップ上にある現在地を示す青い点をタップして、主要な位置情報コントロールにすぐアクセスできるようになる機能が、今後数週間以内にAndroidとiOSで展開されるとのことです。

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ロケーション履歴の大幅なアップデートにより法執行機関のジオフェンス令状が事実上機能しなくなると、デジタルプライバシー権の擁護団体である電子フロンティア財団は報告しています。
電子フロンティア財団は、Googleによるユーザー情報の収集はロケーション履歴だけにとどまらないため、完全な勝利を宣言することはできないとしつつも、少なくともジオフェンス令状が事実上終了することは喜ばしいと主張。「2023年の終わりを迎えるにあたり、テクノロジーユーザーにとって非常に歓迎するべきニュースです」と述べました。

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