Huaweiはアメリカによる経済制裁を乗り越えて自給自足のチップネットワークを構築している

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アメリカ市場から締め出された状態が続いている中国の大手IT企業・Huawei(ファーウェイ)が、もはやアメリカに頼ることなく自給自足でチップを製造できるようなネットワークを構築していることが報じられています。
China Secretly Transforms Huawei Into Most Powerful Chip War Weapon
https://www.bloomberg.com/graphics/2023-china-huawei-semiconductor/

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State investment fund is helping Huawei build its chip network
https://www.androidheadlines.com/2023/12/state-investment-fund-helping-huawei-build-chip-network.html
Expert says SMIC can make more powerful SoCs for Huawei using tech it already owns - PhoneArena
https://www.phonearena.com/news/5nm-chips-for-huawei-possible-using-deep-ultraviolet-lithography_id153116
トランプ政権下でアメリカは「情報通信上のリスクがある製品」のメーカーとしてHuaweiを危険視し、2019年、政府機関によるHuawei製品の購入禁止を決定。2020年に、Huaweiと中国のスマートフォンメーカー・ZTEを「国家安全保障上の脅威」に指定しました。
HuaweiとZTEがついに「国家安全保障上の脅威」に指定される - GIGAZINE

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by Kārlis Dambrāns
半導体製造に必要な極端紫外線リソグラフィ(EUV)装置をほぼ独占的に扱っているオランダのメーカー・ASMLには、中国へのEUV技術の輸出が禁止されました。
こうした措置により、Huaweiは世界で競争できる端末を作ることが難しい状況に追い込まれました。しかし、中国政府や地方政府の助けにより、じわじわと力を取り戻していきます。
Huaweiはアメリカの制裁を受けないように、深圳市の投資ファンドの支援などを受けて、自らが表に出ない形で地方の小規模企業と協力し、チップ生産の体制を整えていきました。その中には、リソグラフィ装置開発技術を持つSiCarrierの子会社も含まれており、ASMLの元従業員も雇われたとのこと。
半導体製造の点でいうと、台湾のTSMCや韓国のSamsungが3nmプロセスノードの製品を生産する中、中国のSMICは7nmプロセスノードまでしか作れませんでした。これは前述の通りEUV技術が止められており、代わりに深紫外線リソグラフィ(DUV)装置を使用するためです。
プロセスノードは小さいほどチップ内のトランジスタ数を増やし、性能とエネルギー効率を高められるため、「プロセスノードを小さくできない」というのは「性能差で追いつくのが難しい」ということです。実際、Huaweiが2023年秋に発売したMate 60に搭載されているSMIC Kirin 9000Sは、他国のSoCに比べると5年ほど遅れた品だとのこと。しかし、もともとアメリカが狙っていた効果は「中国の技術を8年は遅らせること」だったため、これは3年ほど巻き返していると表現できるようです。
チップ専門家のバーン・リン氏によると、SMICはDUV装置で5nmプロセスノードの製品を製造可能なところまできているとのこと。さらに、2023年10月にキヤノンが発表したナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術のようなマスク技術を取り込むことができれば、SMICも2nmプロセスノードまで対応可能だとみられています。
すでに他の部品のサプライチェーンも確立されつつあり、Huaweiは2024年にスマートフォンの販売数を倍増させる計画だとのこと。「Huaweiはアメリカの経済制裁を乗り越えて復活する」というのは、決して可能性の低い話ではないのかもしれません。

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