最新の電気自動車向けバッテリー工場は古いバッテリーをリサイクルすることでより環境に優しい工場へと進化している

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世界的に普及が進む電気自動車において、最も重要なパーツとなるのが「バッテリー」です。最新の電気自動車用バッテリー工場では、古いバッテリーをリサイクルして新しいバッテリーが製造されるなどの環境に配慮した取り組みが行われていると、経済紙のThe Economistがまとめています。
Gigafactories are recycling old EV batteries into new ones | The Economist
https://www.economist.com/science-and-technology/2022/10/26/gigafactories-are-recycling-old-ev-batteries-into-new-ones
今後の自動車産業において、電気自動車およびその主要パーツであるバッテリーは非常に重要な位置を占めています。そのため、自動車産業が盛んな国では、電気自動車向けのバッテリーを製造する工場の誘致を成功させるべく、さまざまな取り組みを実施しています。電気自動車向けのバッテリー製造工場は、テスラがパナソニックと共同で2014年に建設したアメリカ・ネバダにあるバッテリー工場向けの造語「ギガファクトリー」にならい、ギガファクトリーと呼ばれることがしばしばあるそうです。
スウェーデンの首都・ストックホルムの西部にあるヴァステラスにも、最新のギガファクトリーがあります。この工場では、エアロック式のドアの中で、頭の先からつま先まで無菌の白いスーツに身を包んだ作業員が働いており、電気自動車用のバッテリー工場というよりも、製薬会社の研究室のように見えるそうです。
このギガファクトリーは元テスラの幹部2人が設立したスウェーデンのバッテリーメーカーであるNorthvoltの工場です。このNorthvoltの工場は、ギガファクトリーの「モデル工場」と呼ばれており、電極などのバッテリー用部品を他メーカーから購入する工場と異なり、電気自動車用バッテリーで必要となるすべてのパーツを製造可能な設備が整っているとのこと。Northvoltの工場では顧客が開発中の新車向けバッテリーセルを開発しており、顧客にはボルボ・カーズ、BMW、フォルクスワーゲンなどが名を連ねています。これらのメーカーがテストに使用する試作車のバッテリーを設計・製造し、テストをクリアしたバッテリーはより大規模なバッテリー工場で大量生産されることとなるそうです。
Northvoltはボルボ・カーズと合弁でスウェーデンのヨーテボリに2つ目のギガファクトリーを建設予定で、これとは別にドイツでもギガファクトリーを建設中。さらに、2030年までに合計で年間150GWhの生産量に到達することを目標としています。これが実現すれば、Northvoltのギガファクトリーだけで年間200万台の電気自動車用バッテリーを製造することが可能となります。さらに、注目すべきはNorthvoltのギガファクトリーではバッテリーの原料となるリチウム、コバルト、ニッケル、マンガンなどの素材の約半数が、リサイクルによってまかなわれる予定である点です。Northvoltがこの野心的な目標を達成できれば、環境負荷を大幅に削減することにつながる「循環型製造業」への大きな一歩になると経済紙のThe Economistは指摘しています。

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リチウムイオンバッテリーでは、一方の電極である負極でリチウム原子から電子を奪ってイオンが生成され、電解液の中を移動して、もう一方の電極である正極へと移動します。一方、電子は外部回路を伝って正極に向かうことで、電気自動車の場合はモーターに電力を供給することとなります。そして、イオンと電子は正極で再結合し、充電器に接続され、プロセスが逆転するまでそこに留まるそうです。
電気自動車用バッテリーのコストの約40%を占めるのが正極です。正極はさまざまな化学物質の組み合わせで作られており、この化学物質の成分の違いがバッテリー技術における重要な差別化ポイントとなっています。そのため、各メーカーだけでなく、スポーツカーからファミリーカー、大型SUVに至るまで、電気自動車では車種に合わせて正極の化学組成が微調整されています。正極の化学組成として一般的なのは、ニッケル、マンガン、コバルトの組み合わせです。負極は炭素の一種である超高純度グラファイトが利用されるのが一般的。また、活物質を安定させたり、性能を調整したりするために、どちらの電極にも他の物質が添加されるケースがあります。
活物質は懸濁液に浸され、正極に使用される物質はアルミホイルに塗布され、負極は銅の上にグラファイトを塗ることで作成されます。そして、アルミホイルをオーブンで乾燥し、プレスし、再び巻き取ります。Northvoltのギガファクトリーでは、正極と負極をリチウムを含む電解液とセパレータと呼ばれる膜で挟み込むことで、バッテリーセルを生成。このセパレータという膜を設けることで、リチウムイオンを通して電極同士が接触してバッテリーがショートすることを防ぐことができるそうです。
このバッテリーセルがリチウムイオンバッテリーの基本単位となります。次に、作成したバッテリーセルをパッケージングする工程に移りますが、「これにはさまざまな方法がある」とThe Economistは指摘。よく使われるのは「角型」のセルモジュールで、これはアルミニウム筐体の中に自動車の電力要件に応じて数十個のバッテリーセルを組み込むというものです。
パッケージングが終了したのち、バッテリーモジュールをテストする必要があります。良品と判断されたモジュールは、自動車メーカーに直接出荷され、電気自動車に搭載されるか、ポーランドのグダニスクにあるNorthvoltの工場でグリッドバランシングなどの産業用途に利用されることとなるそうです。

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Northvoltのギガファクトリーでは、使用済みのバッテリーを回収したのち、これを分解して生産の第一段階である正極や負極の原材料とします。Northvoltの環境担当責任者であるエマ・ネーレンハイム氏は、「バッテリーを解体し、セルを砕いて『黒液』と呼ばれる粉状にする方法は、ロボットにより日々改良されています」と語りました。
Northvoltはスウェーデンの豊富な水力・風力エネルギーの利用や、リサイクルおよび再生可能エネルギーの利用が進むことで、バッテリーの製造に必要な原材料やその採掘・輸送により生成されるカーボンフットプリントを減少させることができると主張しています。
ただし、リサイクルされるバッテリーのすべてが新しいバッテリーの材料となるわけではありません。例えば、黒鉛は浄水器に使えるものの、新しい正極の材料に使うことはできないそうです。そのため、Northvoltはフィンランドの木材製品会社であるStora Ensoと共同で、環境に優しい代替品を模索しており、「植物の細胞壁に含まれるリグニンという天然高分子から負極に使用する炭素を生成する方法」の開発に取り組んでいます。
さらに厄介なのは、原料の調達先に問題があるケースです。例えば、バッテリーの正極に使用されるコバルトの多くはコンゴ民主共和国から産出されていますが、この国では多くの採掘作業に児童労働が用いられています。そのため、Northvoltをはじめとするバッテリーメーカーは児童労働を用いる生産者からの原料を仕入れることを避けるために、鉱山と直接取引するようにしているそうです。これにより、原料の出所が追跡しやすくなり、生産基準のチェックが容易になるとのこと。

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なお、バッテリー製造を循環型製造業とするべく取り組みを行っているのはNorthvoltだけではありません。電気自動車用バッテリーの製造大手である中国のCATLは、再生可能エネルギーの利用やバッテリー材料のリサイクル、生産プロセスの改善などによりバッテリー製造におけるカーボンフットプリントを削減できるという見方を示しており、実際に世界の10か所にある工場で「水力発電を電力源とする施策」を導入すべく取り組みを行っています。

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