Googleがインターネット広告市場を独占するための施策「ジェダイ・ブルー」や「Project NERA」の詳細が明らかに

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2021年10月22日(金)、Googleがテキサス州の司法長官であるケン・パクストン氏から、独占禁止法(反トラスト法)違反で再提訴されました。パクストン司法長官らがアメリカ合衆国ニューヨーク南部地区連邦地方裁判所に提出した(PDFファイル)173ページにもおよぶ修正訴状から、Googleがインターネット広告上で行ってきた不正行為の数々が明らかになっており、経済紙・Financial Timesの記者であるPatrick McGee氏やプログラマーのAmos氏が、その詳細をまとめています。
An *enormous thread* on alleged @Google @Facebook collusion based on the just-released *unredacted* complaint from the Texas AG. First filed December.
Anything PURPLE is newly unredacted.
Yellow/Orange is just normal highlights.
1/?— Patrick McGee (@PatrickMcGee_) October 22, 2021
RT ???? (with permission):
"Ok so, I just read through all 173 pages of the unredacted Google antitrust filing and I have to say that either Google is screwed or society is screwed, we'll find out which.
Unordered list of fun things I learned:"— fasterthanlime ???? (@fasterthanlime) October 23, 2021
◆Googleのアドエクスチェンジにおける優位性を悪用した「Dynamic Allocation」
Googleのアドエクスチェンジ(AdX)プロセスは、1日あたり110億件もの広告枠を処理しています。これについてGoogleは、「ニューヨーク証券取引所とナスダックで行われる取引数の合計よりも、AdXでの1日の取引数の方が多い」と自慢しています。
Googleはインターネット広告ビジネスにおいて販売元として立ち回っているわけではありません。Googleは広告ビジネスにおける最大の売り手であり、買い手でもあります。そのため、修正訴状には「Googleはピッチャーでありバッターでもあり、審判でもあります」と記されており、公正な取引を形成するには多くの役割を担いすぎていると指摘されています。加えて、Googleの上級社員は同社の広告ビジネスについて「例えるなら、ゴールドマン・サックスやシティバンクがニューヨーク証券取引所を所有しているようなものです。さらに言えば、証券取引所はニューヨーク証券取引所しかないとしたらどうでしょう」と述べており、Googleがインターネット広告において寡占状態にあることを認めています。
Googleはパブリッシャーの収益を最大化するためと称し、「Dynamic Allocation」というプログラムをスタートしました。しかし、このプログラムの正体は「パブリッシャーにとって最善の利益を犠牲にしながら、パブリッシャーにとって最良の広告在庫を奪うというものでした」と訴状は主張しています。
AdXにおいて、Googleは自身が最高入札者ではなくても落札できるようにシステムを不正に操作していたことも明らかになっています。Google内部の多くの従業員がこの事実を認識しているとも指摘されており、「もしもGoogleが何かしらの仕様変更で広告の収益率が下がると言った場合は逃げてください。Googleが言っていることはすべて嘘です」とAmos氏は指摘しています。
修正訴状では「Googleは町医者などの中小企業(広告主)による広告入札を、ある価格から別のより高い価格に、広告主に開示することなく操作することが可能です。Googleはこのように価格を操作することで、Google以外の広告主が競売で勝っていたとしても、自社のプラットフォームがパブリッシャーにとって最も価値のあるインプレッションを提供できるようにしています」と指摘されています。
Google manipulating bids behind advertisers' backs: pic.twitter.com/lWe9bWMzZa— fasterthanlime ???? (@fasterthanlime) October 24, 2021
◆ヘッダー入札に対抗すべく編み出された「ジェダイ」プログラム
Googleのこういった市場独占に対抗すべく編み出されたのが、ヘッダー入札です。これは、パブリッシャーが広告枠を複数の広告システムに振り分け、最も高い入札額を募り、そこへ広告枠を販売するというもの。2016年にはアメリカの主要オンラインパブリッシャーの70%がヘッダー入札を採用していました。
これに対してGoogleが取った対策が、「ジェダイ」と呼ばれるプログラムです。Googleは「ジェダイ」について、「パブリッシャーにとって最適ではない利回りを生み出すプログラムであるため、外部に公開されてしまった場合にはメディアに批判される深刻なリスクがある」と記していたことから、ユーザーや顧客に歓迎されないプログラムであることは明らか。具体的に「ジェダイ」で何をしているのかというと、「AdXにおけるGoogleの手数料のみをゼロにする」だそうです。

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◆「ジェダイ」プログラムをFacebookとの共謀にまで拡大した「ジェダイ・ブルー」
その後、2017年3月に入ってFacebookがヘッダー入札を自社の広告ビジネスに採用すると発表。すると、GoogleはすぐさまFacebookとの間で秘密の契約「ジェダイ・ブルー」を結びました。修正訴状は「Googleはこの『ジェダイ・ブルー』が違法な契約であることを認識していたため、誰かに契約について知られてしまった場合にお互いをカバーするための方法をまとめていた」と指摘しています。
Googleから「ジェダイ・ブルー」の契約を持ちかけられたFacebook側の幹部は、「Googleがこの取引でヘッダー入札を潰したかったのは明らか」と語り、Facebookがヘッダー入札に注力することを防ぐための契約が「ジェダイ・ブルー」であったと認めています。「ジェダイ・ブルー」はFacebookとGoogleが広告枠の競売においてFacebookが枠を落札できる頻度を上げるという契約。修正訴状は「Facebookが入札・落札する頻度と最低金額を設定することで、文字通り競売を操作していた」と2社の共謀を批判しています。

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◆ウェブを「所有されていないが運営されている」壁に囲われた庭にするための「Project NERA」
「Project NERA」の中心となるのは、Googleが開発するウェブブラウザであるChromeで2018年9月から実装されたログインを必須とする仕様です。
修正訴状には「パブリッシャーがGoogleに広告在庫への独占的なアクセス権を与えるために、Googleはパブリッシャーに損なシナリオを用意しています。Googleは市場で最も人気のあるウェブブラウザのChromeを所有していることを利用し、パブリッシャーの顧客をターゲット・追跡して、Googleの広告在庫を販売しようとしました。この実現のために、GoogleはまずユーザーがChromeにログインする機能を導入しました。GoogleはまずChromeにログイン機能を導入し、その後、欺瞞的かつ強制的な戦術を用いてユーザーにログインすることを強制しました。例えば、Googleはユーザーが同社のGmailやYouTubeといったサービスにログインすると、自動的にChromeにログインするように仕様を変更しています。また、ユーザーがChromeからログアウトしようとすると、Googleはユーザーが使用中のGoogleプロダクトからログアウトさせるという罰を与えています。さらに、Googleは別の欺瞞的なパターンを用いてユーザーにChromeのトラッキングを許可させることで、オープンウェブ上でのユーザーのトラッキングを実施していました」と記されており、Chromeがログイン必須という仕様に変更した理由はユーザーをトラッキングするためだったと指摘しています。
Re: forced Chrome logins
Don't need cookies if you own the browser! pic.twitter.com/WIl9Hf8KOL— fasterthanlime ???? (@fasterthanlime) October 24, 2021
◆AMPもページ読み込みの高速化をうたいヘッダー入札機能を削除
モバイル端末でのインターネット体験をより高速かつ快適にするためにGoogleが開発したフレームワークの「AMP」。GoogleはAMPからヘッダー入札機能を削除したのち、パブリッシャーに対して「AMPを採用することでページの読み込み速度が高速化する」と宣伝しました。しかし、Google社員は「AMPはパフォーマンスの中央値を向上させるのみで、他社が提供する類似テクノロジーと比べてページの表示速度が高速化することはないと認識していました」と指摘しています。
More highlights re AMP performance claims: pic.twitter.com/c8544t8DcR— fasterthanlime ???? (@fasterthanlime) October 24, 2021
◆GoogleアドマネージャーなどGoogleの広告関連ツールが徴収する手数料
現在、Googleは統合型の広告管理プラットフォーム「Googleアドマネージャー」を提供しており、この製品を通じてパブリッシャー広告サーバー市場を独占しています。Googleアドマネージャーはアメリカにおける競合製品市場の90%以上を支配しているそうです。GoogleはGoogleアドマネージャーの使用料として取引額の19~22%を徴収していますが、これはパブリッシャー広告サーバー市場の平均の2~4倍に相当する「法外に高い手数料」だそうです。そのため、修正訴状は「広告取引所における類似サービスの手数料よりも指数関数的に高い」と指摘。この他、修正訴状は「Googleディスプレイネットワーク」が取引額の32~40%を手数料として徴収している、とも指摘しています。
そのため、Google社内からは「広告取引所は莫大な利益を生むビジネスであってはいけません。買い手と売り手を円滑にするための公共財のようなものであるべきです」と、自社サービスの手数料に懐疑的な声も挙がっている模様。
なお、モバイルアプリケーションネットワーク市場におけるGoogleのシェアは、競合サービスであるFacebook Audience Networkの8倍であることがGoogleの内部資料から明らかになっています。

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他にも、GoogleはGoogle以外の広告取引所に広告枠をルーティングする際、取引額の5%を手数料として請求されているにもかかわらず、Google以外の広告取引所がGoogleサービスに広告枠をルーティングする際は、手数料として取引額の10%を請求していることが明らかになっています。
また、広告サーバーの切り替えについて専門家は「飛行中の航空機でエンジンを切り替えるようなもの」と表現しており、「インターネット広告市場においてパブリッシャーは広告サーバーを切り替えることができないのが現状」と説明しています。実際、AdXはディスプレイ広告において60%のシェアを獲得していたと指摘されています。
広告サーバーの切り替えが難しいことから、競合プラットフォームが手数料の値下げを実施しても、市場シェアを大幅に獲得するには至らなかった模様。なお、2016年にGoogleの幹部は同社のプラットフォームが法外に高い手数料を徴収する理由について、「できるから実施している」という傲慢な発言をしたことが明らかになっています。

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なお、Googleはインターネット広告市場における巨大な力を利用し、無数のオンラインパブリッシャーやオンラインニュースペーパーといったコンテンツ制作者に流れていくはずの広告費(22~42%)をプラットフォームの利用料として徴収したと修正訴状は指摘しています。
加えて、Yahooが1日の広告インプレッション数で90億回という数字をたたき出していた2009年時点では、Googleの広告インプレッション数はわずか2億回程度だったそうで、この頃はまだアドエクスチェンジや広告サーバー市場で現在のようなGoogle独占の構図は成り立っておらず、「市場は競争的でした」と修正訴状には記されています。

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