東奔西走キャッシュレス 第66回 PayPayだけじゃない個人間送金、銀行口座が使える「ことら送金」はいかが
個人同士でお金のやり取りをする場合、これまでは現金の直接受け渡しか銀行口座の送金機能を使うぐらいしか方法はありませんでした。しかし、最近ではPayPayが注力したこともあってか、PayPayでの送金を利用する人が増えているようです。
銀行業界も以前からこの個人間送金には目を付けていました。そして主要銀行が中心となって設立されたのが「ことら」です。このことらが提供する個人間送金サービス「ことら送金」が、今年10月の段階で累計送金額6,000億円に達したそうです。
改めてこのことら送金を振り返り、そのメリットを考えてみましょう。
○サービス開始2年で順調に拡大
ことら送金は、2022年10月11日にサービスを開始しました。他誌ではありますが筆者は2021年のことら立ち上げ時と2022年のサービス開始直後に、同社の社長に話を聞いています。筆者はメガバンク5行が設立したことらを、銀行業界による個人間送金サービスとして一定の期待感を持って見ていました。
サービススタート時には参加銀行が20行でしたが、1年が経過した2023年10月11日には207金融機関にまで広がり、累計送金額は1,330億円を突破していました。その間、ゆうちょ銀行や各地の地銀、信金などで順次対応を進めてきたことら。
さらに2年が経過した2024年10月11日には、293の金融機関が対応。累計の送金金額が6,000億円を突破しました。さらに今後、419の事業者まで対応範囲が拡大することが明らかになっています。
ネット銀行で対応しているのはSBI新生銀行/住信SBIネット銀行/みんなの銀行ぐらいなので、この方面では対応が遅れていますが、メガバンクやゆうちょ/地銀/信金と幅広くカバーしているところはメリットです。さらに2025年春にはアプラスが提供するBANKITサービスがことら送金に対応予定。BANKITはBaaSとして事業者に対して金融サービスを提供しており、そうしたBANKITで構築されたサービスでことら送金が使えるようになります。
ことら送金のメリットは、銀行間の送金でありながら手数料が無料という点です。10万円までの個人間送金という制限はありますが、送金手数料などはかかりません。送金先は対応金融機関であればどの銀行にも送金できるので、PayPayだけ/d払いだけといった制限もありません。
PayPayの場合、「PayPayで使う」ことが分かっているならPayPay同士で送金してもいいのですが、PayPay以外のユーザーやPayPayをあまり使わない人がいた場合に不便になります。PayPayに送ってもらった上で銀行口座に出金してもいいのですが、手数料がかかります(一部の銀行以外)。
これまでは、銀行送金だといずれかに手数料が発生するので、個人間送金では使いづらいという面がありました。ことら送金ならその点、気兼ねをする必要はありません。銀行に送金されるので、その後の使い方で困ることもありません。いったん送金されたら、月間の無料回数分の送金枠を使って自分の別の口座に送ってもいいですし、好きな決済アプリに入金してもいいでしょう。
ことら送金対応の金融機関同士であれば、自分の口座間でことら送金すれば、銀行間でも「口座振替」のように気軽にやり取りができます。6,000億円の中でもこうした「自分の口座間の振替」需要は多いのではないかと推測しています。
アプリによってUIは異なりますが、ことら送金の場合、口座番号を直接指定した送金に加え、「電話番号」と「メールアドレス」を鍵にした送金にも対応します。これはあらかじめ電話番号かメールアドレスに任意の口座を紐付けしておくと、送金元が電話番号やメールアドレスを指定するだけで送金できる機能です。
電話番号とメールアドレスで別々の口座を紐付けられるので、送金してほしい口座にあわせて送金先として伝えれば、受け取る口座のコントロールもできます。残念ながら複数のメールアドレスを設定することはできませんが、引き落とし口座と入金口座が分かれている場合などに便利でしょう。
いいことばかりに見えることら送金ですが、課題もあります。メガバンクを含む金融機関で、自社アプリではなく外部のアプリ、特に「Bank Pay」を使う例が多いことが挙げられます。これは銀行アプリからそのまま設定や送金ができないというのはデメリットでしょう。住信SBIネット銀行のように自社アプリ内に統合されていてUIも共通化されていると利便性は高く感じます。
前述の通りネット銀行の対応が遅れているのも課題です。「PayPayや楽天がメインなので、銀行もPayPay銀行や楽天銀行しかない」という人もいるでしょうから、そうした人との間ではことら送金ができないことになります。
直接決済アプリとの間で送金ができない点ももったいないところです。資金移動業者としてはアプラスのBANKITが対応しますが、一般的な決済アプリが対応するのは少々難しい印象もあります。
自社サービス内の囲い込みという点では、個人間送金は自社内にとどめた方が有効ですが、ことら送金を経由してほかの決済サービス間でも送金ができれば、自社サービスへの誘導に効果的、という可能性もあります。
このあたり、資金移動業者がどのように判断するか、複数の事業者が動けば面白くなりそうです。資金移動業者の中には、リクルート系の「COIN+」だと銀行出金が無料なので、COIN+対応アプリ同士の送金であれば出金も気兼ねなくできます(少し前までは同じ用途でpringがありました)。対応金融機関はそれほど多くないのですが、PayPay銀行や楽天銀行、イオン銀行もカバーしているので、ことら送金を経由できればさらに便利になりそうです。
いずれにしても、無料で銀行口座に送金してもらえるなら、好きな決済アプリに入金したり、クレジットカードの引き落とし口座の足しにしたり、「ことら税公金」として税・公金納付に使ったり、自由に使えるので個人的には嬉しいところなので、もっと普及してもっと使いやすくなるとありがたいところです。
銀行業界も以前からこの個人間送金には目を付けていました。そして主要銀行が中心となって設立されたのが「ことら」です。このことらが提供する個人間送金サービス「ことら送金」が、今年10月の段階で累計送金額6,000億円に達したそうです。
改めてこのことら送金を振り返り、そのメリットを考えてみましょう。
○サービス開始2年で順調に拡大
ことら送金は、2022年10月11日にサービスを開始しました。他誌ではありますが筆者は2021年のことら立ち上げ時と2022年のサービス開始直後に、同社の社長に話を聞いています。筆者はメガバンク5行が設立したことらを、銀行業界による個人間送金サービスとして一定の期待感を持って見ていました。
サービススタート時には参加銀行が20行でしたが、1年が経過した2023年10月11日には207金融機関にまで広がり、累計送金額は1,330億円を突破していました。その間、ゆうちょ銀行や各地の地銀、信金などで順次対応を進めてきたことら。
さらに2年が経過した2024年10月11日には、293の金融機関が対応。累計の送金金額が6,000億円を突破しました。さらに今後、419の事業者まで対応範囲が拡大することが明らかになっています。
ネット銀行で対応しているのはSBI新生銀行/住信SBIネット銀行/みんなの銀行ぐらいなので、この方面では対応が遅れていますが、メガバンクやゆうちょ/地銀/信金と幅広くカバーしているところはメリットです。さらに2025年春にはアプラスが提供するBANKITサービスがことら送金に対応予定。BANKITはBaaSとして事業者に対して金融サービスを提供しており、そうしたBANKITで構築されたサービスでことら送金が使えるようになります。
ことら送金のメリットは、銀行間の送金でありながら手数料が無料という点です。10万円までの個人間送金という制限はありますが、送金手数料などはかかりません。送金先は対応金融機関であればどの銀行にも送金できるので、PayPayだけ/d払いだけといった制限もありません。
PayPayの場合、「PayPayで使う」ことが分かっているならPayPay同士で送金してもいいのですが、PayPay以外のユーザーやPayPayをあまり使わない人がいた場合に不便になります。PayPayに送ってもらった上で銀行口座に出金してもいいのですが、手数料がかかります(一部の銀行以外)。
これまでは、銀行送金だといずれかに手数料が発生するので、個人間送金では使いづらいという面がありました。ことら送金ならその点、気兼ねをする必要はありません。銀行に送金されるので、その後の使い方で困ることもありません。いったん送金されたら、月間の無料回数分の送金枠を使って自分の別の口座に送ってもいいですし、好きな決済アプリに入金してもいいでしょう。
ことら送金対応の金融機関同士であれば、自分の口座間でことら送金すれば、銀行間でも「口座振替」のように気軽にやり取りができます。6,000億円の中でもこうした「自分の口座間の振替」需要は多いのではないかと推測しています。
アプリによってUIは異なりますが、ことら送金の場合、口座番号を直接指定した送金に加え、「電話番号」と「メールアドレス」を鍵にした送金にも対応します。これはあらかじめ電話番号かメールアドレスに任意の口座を紐付けしておくと、送金元が電話番号やメールアドレスを指定するだけで送金できる機能です。
電話番号とメールアドレスで別々の口座を紐付けられるので、送金してほしい口座にあわせて送金先として伝えれば、受け取る口座のコントロールもできます。残念ながら複数のメールアドレスを設定することはできませんが、引き落とし口座と入金口座が分かれている場合などに便利でしょう。
いいことばかりに見えることら送金ですが、課題もあります。メガバンクを含む金融機関で、自社アプリではなく外部のアプリ、特に「Bank Pay」を使う例が多いことが挙げられます。これは銀行アプリからそのまま設定や送金ができないというのはデメリットでしょう。住信SBIネット銀行のように自社アプリ内に統合されていてUIも共通化されていると利便性は高く感じます。
前述の通りネット銀行の対応が遅れているのも課題です。「PayPayや楽天がメインなので、銀行もPayPay銀行や楽天銀行しかない」という人もいるでしょうから、そうした人との間ではことら送金ができないことになります。
直接決済アプリとの間で送金ができない点ももったいないところです。資金移動業者としてはアプラスのBANKITが対応しますが、一般的な決済アプリが対応するのは少々難しい印象もあります。
自社サービス内の囲い込みという点では、個人間送金は自社内にとどめた方が有効ですが、ことら送金を経由してほかの決済サービス間でも送金ができれば、自社サービスへの誘導に効果的、という可能性もあります。
このあたり、資金移動業者がどのように判断するか、複数の事業者が動けば面白くなりそうです。資金移動業者の中には、リクルート系の「COIN+」だと銀行出金が無料なので、COIN+対応アプリ同士の送金であれば出金も気兼ねなくできます(少し前までは同じ用途でpringがありました)。対応金融機関はそれほど多くないのですが、PayPay銀行や楽天銀行、イオン銀行もカバーしているので、ことら送金を経由できればさらに便利になりそうです。
いずれにしても、無料で銀行口座に送金してもらえるなら、好きな決済アプリに入金したり、クレジットカードの引き落とし口座の足しにしたり、「ことら税公金」として税・公金納付に使ったり、自由に使えるので個人的には嬉しいところなので、もっと普及してもっと使いやすくなるとありがたいところです。
10/28 20:32
マイナビニュース