「Insta360 Ace Pro 2」レビュー 夜景がきれいに撮れる“自撮りアクションカメラ”
360度カメラで定評のあるInsta360が、アクションカメラの新製品「Insta360 Ace Pro 2」を発表しました。前作の登場から1年経っていないこともあり、1/1.3インチの大型センサーやフリップ式の画面など基本的な装備は継承。新たに、複雑な処理をこなすAIチップを追加し、夜景など低照度の画質向上やレスポンスの向上を図っています。自撮りやVlogが高画質かつスマートに撮影できることを売りに、「iPhoneなどスマホと併用するとどんなシーンでも高画質で撮れる便利な超小型カメラ」として存在感が高まったと感じました。
マイナーチェンジながら暗いシーンでの画質を向上
ここ2~3年、アクションカメラは激動のさなかにあるといえます。これまではGoProが圧倒的な知名度やブランド力を生かして人気を誇っていましたが、画質や安定性、装備の弱さなどが指摘されて失速気味になっています。攻勢を強めているのがDJIやInsta360などの中国メーカー勢で、DJIは完成度を高めた「Osmo Action 5 Pro」を10月中旬に投入。DJIを追うように、Insta360も従来モデル「Insta360 Ace Pro」の改良版「Insta360 Ace Pro 2」を投入してきました。
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もともとInsta360 Ace Proの完成度が高かったこともあり、“2”はあくまでマイナーチェンジといった印象で劇的な変化はありません。1/1.3インチの大型センサーやライカ監修レンズを継承しつつ、新たに画像処理を担うAIチップを搭載し、室内や夜景など低照度のシーンがさらにきれいに撮れるようになったのが最大の改良点といえます。
ほかには、ゆがみを抑えた描写で撮影できる「メガビュー広角」モードを新たに追加したほか、シャッターを押す前から映像を記録して決定的瞬間を撮り逃さないプリ録画は時間を120秒まで拡張。カメラ内で360度の水平を維持する好評の機能はしっかり継承しています。
ハードウエアも一部改良が加えられました。主要メーカーのアクションカメラで唯一となるフリップ式の大型液晶は、画面が精細かつ明るくなりました。このフリップ式液晶は先代のInsta360 Ace Proから定評があり、自撮りも大きな画面で確認しながらできるほか、液晶を上に向ければ超ローアングルやウエストレベルの撮影も可能。カメラを真上や真下に向けた状態でも、しっかり構図を確認しながら撮影できます。
マイク周りには、新たにメッシュの大型風防が装着され、風切り音を抑制できるようになりました。マイクに関しては、DJI Mic 2などのワイヤレスマイクの接続にも対応します。バッテリーは容量が1800mAhに向上し、フル充電で約3時間の撮影が可能になりました。18分で80%まで充電できる急速充電にも対応します。
夜間でもネオンが白飛びせず、ブレもしっかり抑えられる
実際にInsta360 Ace Pro 2で動画を撮影してみました。
まず夜景ですが、低照度のシーンを明るく撮影する「PureVideo」モードで撮影。PureVideoは、今回4K/60fpsのなめらかな撮影に対応したのですが、フレームレートを30fpsに抑えると低照度画質がより向上する「PureVideo Plus」が有効になるため、こちらで撮影することにしました。
雨上がりの渋谷スクランブル交差点で撮影したところ、街を行く人々から遠方のビルまでとても明るく精細に描写して驚きました。特に、ビルの照明やネオンが白飛びせずとても映える描写が印象的で、SNSにはもってこいと感じます。明かりのかなり少ない市街地を歩きながら撮影した動画でも、ブレや揺れをしっかり補正しつつ店内もきれいに描写してくれました。
明るい日中の画質も向上しています。ダイナミックレンジが13.5ストップに向上し、4K/60fpsでアクティブHDRを有効にした撮影が可能になったので、明暗差の大きなシーンも白飛びや黒つぶれを抑えて見た目に近い仕上がりで撮影してくれます。
Insta360 Ace Pro 2は、8K/30fpsでの撮影も加わりました。8K動画を表示できるディスプレイがほぼ存在しないので、あえて8K画質で動画を撮影する価値は低いのですが、8K動画を切り出して写真として保存すれば7680×4320ドットのサイズが確保できるので、「秒間30コマの連写機能」として使えると感じます。仕上がった写真も、動画からの切り出しとは思えないほど精細でした。
Osmo Action 5 Proと比べると惜しいところもある
Insta360 Ace Pro 2は使っていて基本的に不満はありませんでしたが、先日試用したOsmo Action 5 Proと比べると「惜しい…」と感じる部分も散見されました。
まず感じたのが、純正の自撮り棒では縦位置での撮影が難しかったこと。Osmo Action 5 Proは、磁力で簡単に脱着できるマウントが底面と側面に備わる保護ケージがベーシックなキットにも標準で付属しており、自撮り棒を付ける位置を変えれば横位置と縦位置の撮影が手軽に切り替えられるのに対し、Insta360 Ace Pro 2は別売オプションとなるのが残念。せっかく大きなフリップ液晶を生かして自撮りできるだけに、縦位置撮影の利便性を高めてほしかったところです。
電源ボタンを押すと即動画の撮影が始まる機能も、Osmo Action 5 Proは1秒程度で撮影が始まるのに対し、Insta360 Ace Pro 2は2秒ほどかかるのも悔しいところ。このあたりはファームウエアのアップデートによる改良を望みたいところです。
友だちとの自撮りがスマホより高画質に楽しめる佳作
Insta360 Ace Pro 2は先代モデルと比べての大きな変化こそ少ないものの、画質をしっかり底上げした点が評価できます。フリップ液晶の存在や内蔵マイク性能の向上もあり、動きの激しいアウトドアスポーツなど非日常の撮影というよりは、家族や友だちとの楽しい日常をVlogカメラ的に撮影するのに向く製品だと感じます。スマホのインカメラでは画質や画角に不満を感じるシーン、歩きながらや走りながらの撮影、水がかかるシーン、明かりの少ない夜間の撮影など、スマホではちょっと厳しいかな…と感じるシーンでよい相棒となってくれるでしょう。
価格は、スタンダードな通常版キットが64,800円、付属アクセサリーが充実したスターターキットが74,100円となっています。フリップ式液晶による利便性や、AIによる多彩な編集機能を備えたスマホアプリが55,000円からのOsmo Action 5 Proに対する優位点といえ、このあたりを評価できるかが機種選びのカギになりそうです。
磯修 いそおさむ 1996年、アマチュア無線雑誌で編集者としてのキャリアをスタートし、その後パソコン雑誌やWeb媒体の編集者としてデジタル分野の記事を担当。2018年からマイナビニュース・デジタル編集部に加入。専門分野はカメラ、アップル製品とエコシステム、スマートフォン、デジタル家電関連、PCキーボード。画像生成AIなどAIまわりの進化の速さに追いつくべく奮闘しつつ、自身でよい写真を撮影することも心がけている。ニガテな動画撮影は鋭意勉強中。猫が1匹います。 この著者の記事一覧はこちら
マイナーチェンジながら暗いシーンでの画質を向上
ここ2~3年、アクションカメラは激動のさなかにあるといえます。これまではGoProが圧倒的な知名度やブランド力を生かして人気を誇っていましたが、画質や安定性、装備の弱さなどが指摘されて失速気味になっています。攻勢を強めているのがDJIやInsta360などの中国メーカー勢で、DJIは完成度を高めた「Osmo Action 5 Pro」を10月中旬に投入。DJIを追うように、Insta360も従来モデル「Insta360 Ace Pro」の改良版「Insta360 Ace Pro 2」を投入してきました。
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もともとInsta360 Ace Proの完成度が高かったこともあり、“2”はあくまでマイナーチェンジといった印象で劇的な変化はありません。1/1.3インチの大型センサーやライカ監修レンズを継承しつつ、新たに画像処理を担うAIチップを搭載し、室内や夜景など低照度のシーンがさらにきれいに撮れるようになったのが最大の改良点といえます。
ほかには、ゆがみを抑えた描写で撮影できる「メガビュー広角」モードを新たに追加したほか、シャッターを押す前から映像を記録して決定的瞬間を撮り逃さないプリ録画は時間を120秒まで拡張。カメラ内で360度の水平を維持する好評の機能はしっかり継承しています。
ハードウエアも一部改良が加えられました。主要メーカーのアクションカメラで唯一となるフリップ式の大型液晶は、画面が精細かつ明るくなりました。このフリップ式液晶は先代のInsta360 Ace Proから定評があり、自撮りも大きな画面で確認しながらできるほか、液晶を上に向ければ超ローアングルやウエストレベルの撮影も可能。カメラを真上や真下に向けた状態でも、しっかり構図を確認しながら撮影できます。
マイク周りには、新たにメッシュの大型風防が装着され、風切り音を抑制できるようになりました。マイクに関しては、DJI Mic 2などのワイヤレスマイクの接続にも対応します。バッテリーは容量が1800mAhに向上し、フル充電で約3時間の撮影が可能になりました。18分で80%まで充電できる急速充電にも対応します。
夜間でもネオンが白飛びせず、ブレもしっかり抑えられる
実際にInsta360 Ace Pro 2で動画を撮影してみました。
まず夜景ですが、低照度のシーンを明るく撮影する「PureVideo」モードで撮影。PureVideoは、今回4K/60fpsのなめらかな撮影に対応したのですが、フレームレートを30fpsに抑えると低照度画質がより向上する「PureVideo Plus」が有効になるため、こちらで撮影することにしました。
雨上がりの渋谷スクランブル交差点で撮影したところ、街を行く人々から遠方のビルまでとても明るく精細に描写して驚きました。特に、ビルの照明やネオンが白飛びせずとても映える描写が印象的で、SNSにはもってこいと感じます。明かりのかなり少ない市街地を歩きながら撮影した動画でも、ブレや揺れをしっかり補正しつつ店内もきれいに描写してくれました。
明るい日中の画質も向上しています。ダイナミックレンジが13.5ストップに向上し、4K/60fpsでアクティブHDRを有効にした撮影が可能になったので、明暗差の大きなシーンも白飛びや黒つぶれを抑えて見た目に近い仕上がりで撮影してくれます。
Insta360 Ace Pro 2は、8K/30fpsでの撮影も加わりました。8K動画を表示できるディスプレイがほぼ存在しないので、あえて8K画質で動画を撮影する価値は低いのですが、8K動画を切り出して写真として保存すれば7680×4320ドットのサイズが確保できるので、「秒間30コマの連写機能」として使えると感じます。仕上がった写真も、動画からの切り出しとは思えないほど精細でした。
Osmo Action 5 Proと比べると惜しいところもある
Insta360 Ace Pro 2は使っていて基本的に不満はありませんでしたが、先日試用したOsmo Action 5 Proと比べると「惜しい…」と感じる部分も散見されました。
まず感じたのが、純正の自撮り棒では縦位置での撮影が難しかったこと。Osmo Action 5 Proは、磁力で簡単に脱着できるマウントが底面と側面に備わる保護ケージがベーシックなキットにも標準で付属しており、自撮り棒を付ける位置を変えれば横位置と縦位置の撮影が手軽に切り替えられるのに対し、Insta360 Ace Pro 2は別売オプションとなるのが残念。せっかく大きなフリップ液晶を生かして自撮りできるだけに、縦位置撮影の利便性を高めてほしかったところです。
電源ボタンを押すと即動画の撮影が始まる機能も、Osmo Action 5 Proは1秒程度で撮影が始まるのに対し、Insta360 Ace Pro 2は2秒ほどかかるのも悔しいところ。このあたりはファームウエアのアップデートによる改良を望みたいところです。
友だちとの自撮りがスマホより高画質に楽しめる佳作
Insta360 Ace Pro 2は先代モデルと比べての大きな変化こそ少ないものの、画質をしっかり底上げした点が評価できます。フリップ液晶の存在や内蔵マイク性能の向上もあり、動きの激しいアウトドアスポーツなど非日常の撮影というよりは、家族や友だちとの楽しい日常をVlogカメラ的に撮影するのに向く製品だと感じます。スマホのインカメラでは画質や画角に不満を感じるシーン、歩きながらや走りながらの撮影、水がかかるシーン、明かりの少ない夜間の撮影など、スマホではちょっと厳しいかな…と感じるシーンでよい相棒となってくれるでしょう。
価格は、スタンダードな通常版キットが64,800円、付属アクセサリーが充実したスターターキットが74,100円となっています。フリップ式液晶による利便性や、AIによる多彩な編集機能を備えたスマホアプリが55,000円からのOsmo Action 5 Proに対する優位点といえ、このあたりを評価できるかが機種選びのカギになりそうです。
磯修 いそおさむ 1996年、アマチュア無線雑誌で編集者としてのキャリアをスタートし、その後パソコン雑誌やWeb媒体の編集者としてデジタル分野の記事を担当。2018年からマイナビニュース・デジタル編集部に加入。専門分野はカメラ、アップル製品とエコシステム、スマートフォン、デジタル家電関連、PCキーボード。画像生成AIなどAIまわりの進化の速さに追いつくべく奮闘しつつ、自身でよい写真を撮影することも心がけている。ニガテな動画撮影は鋭意勉強中。猫が1匹います。 この著者の記事一覧はこちら
10/22 22:06
マイナビニュース