キヤノン「EOS R5 Mark II」詳細レビュー 初代R5ユーザーが感じた手応えは

スペックや操作性、人気などから、キヤノンEOS Rシステムのマスターピースとなったフルサイズミラーレス「EOS R5」。いよいよ8月30日に発売になる「EOS R5 Mark II」は、言うまでもなくその2世代目となるモデルです。発表会でファーストタッチを行った私の思うところなどを少し前に「EOS R5愛用カメラマンが触って感じたEOS R5 Mark IIの進化点」で紹介しましたが、今回はEOS R5 Mark IIの実機を用い、使用感や新しく搭載された機能など詳細を紹介したいと思います。

各所に改良が見られるものの、デザインや操作性はR5を継承

まずは操作性ですが、先代モデルとの大きな違いとなるのが電源スイッチの位置。カメラ背面側から見て、左側のトップカバーにあったものが、「EOS R6 Mark II」などのように右側のメイン電子ダイヤルとサブ電子ダイヤル2との間に置かれました。これは、以前よりあったユーザーの要望にメーカーが応えたもので、グリップを握った右手の指だけでON/OFF操作を可能にしています。シャッターボタンと電源スイッチを同軸とするライバルに比べると操作性はやや劣りますが、それでもグリップを握った右手の親指だけで操作できるようになったのはありがたく思えます。また、このスイッチには一部のボタンなどの機能を無効にするロックも備えており、こちらも便利に思えるところです。

ちなみにトップカバー左側には、それまでの電源スイッチの形状とよく似た静止画撮影/動画撮影切り替えスイッチが新たに置かれることになりました。EOS R5を長年使用してきている筆者(大浦タケシ)は、知らぬ間に電源スイッチと勘違いしてしまい、静止画撮影モードから動画撮影モードに切り替わってあわてることが幾度かありました。EOS R5から本モデルに乗り換えたユーザーは、指が慣れるまでしばらく気を付ける必要がありそうです。そのほかのボタンやレバーなど操作部材のレイアウトは従来どおり。EOS R5ユーザーであれば、初見でも操作に迷うことはないはずです。

大きさ重さに関しては従来モデルとほとんど変わらず、グリップの形状なども大きな変化はありません。そのため、EOS R5をこれまで使ってきたユーザーは違和感なくホールドできるように思いますし、実際撮影で使用した印象でもそのように感じました。ちなみに、カメラ本体の横幅は従来モデルと同じ138.5mm、高さは3.7mmほど高い101.2mmとしています。質量については6g重い656gとなります(バッテリー、メモリカードを除く)。

デザイン的なものとしては、いわゆるペンタカバー周辺のシェイプが変わりました。アクセサリーシューからカメラ前面部メーカーロゴまでなだらかなカーブとしていたものから、本モデルと同時に発表された「EOS R1」と同様にペンタカバー上部とメーカーロゴの間にエッジのあるものとしています。好みの分かれるところではありますが、個人的には本モデルの始祖ともいえるデジタル一眼レフ「EOS 5D」の同部分を思い起こしました。

AF性能、描写性能ともに高いレベルで満足

今回の作例撮影では、すべて電子シャッターを用いました。メーカーいわく、従来モデルにくらべローリングシャッター歪みが約40%低減したと発表していることに加え、シャッター方式のデフォルトが電子シャッターになったからです。電子シャッターであれば、静寂を必要とする被写体の撮影などではとても有効ですし、機械的な作動がないためシャッターの耐久性も気にする必要がなくなるなど、ユーザーのメリットは少なくありません。果たして“40%低減”が実用的なものであるかどうか見極めたいところです。

まずは、子どものピアノ発表会にEOS R5 Mark IIを持ち込んでみました。撮影メニューの「サイレントシャッター機能」をONにし、無音シャッターに設定。AFの「検出する被写体」を「人物」としました。シャッター音を発しない電子シャッターは、このようなシチュエーションは心強く、周りに気を使うことなくシャッターを切ることができます。AFも狙った人物に迷うことなくピントが合い、いわゆる“ガチピン”の画像が得られました。感度は、開放値の暗い望遠ズームレンズを使ったためISO12800に設定しましたが、JPEGの撮って出しでは大きく拡大しない限りノイズは目立たず、階調再現性の破綻も見受けられません。撮影は手持ちで行いましたが、最大8.5段の手ブレ補正機構の安心感は極めて高いものがありました。

続いて航空機の撮影にトライ。ここでは、まず「ブラックアウトフリー表示」をONにセット。文字通り、連続撮影を行ってもブラックアウトしないため、アングル的に高い精度で被写体を追うことができます。AFモードはサーボ(コンティニュアス)を選択。「検出する被写体」は「乗り物優先」にし、同時に視線入力をONにしました。乗り物優先AFは確実に航空機を捉え、正面でも横でも、あるいはカメラの真上を飛行する航空機に対してもしっかりとピントを合わせてくれました。ピントに関して、この機能任せで撮影してもまったく問題ないように思えました。

また、画面のなかに複数の航空機が写っている場合、本来写したい航空機でない別の航空機をカメラが選択してしまうことがありましたが、視線入力によりピントを合わせたい航空機を見つめるとすぐにその航空機にAFフレームが乗り移り、以降ずっとトラッキングし続けます。こちらもとても便利に思えました。「乗り物優先」は航空機のほか、クルマやバイク、鉄道車両にも有効なので、そのような被写体の撮影では視線入力とともに積極的に活用するとよいでしょう。

そのほか新たに搭載したAF機能として、カメラが登録した人物にピントを合わせる「登録人物優先」と、サッカー、バスケットボール、バレーボールの競技ではメインとなる被写体の動きをカメラが瞬時に認識しAFフレームを移動する「アクション優先」が目新しく思えます。こちらは子どものサッカーでトライアルしてみました。

「登録人物優先」は実に便利で、登録した人物の顔にピントを合わせ続けます。激しく動き回るサッカーの撮影でも、登録した人物を確実に捉えてくれます。登録するための人物の画像を必要としますが、設定自体は簡単で、運動会はじめさまざまなシーンで重宝しそうです。ちなみに10人まで登録は可能で、優先順位が設定できるのも便利に思えました。

「アクション優先」はサッカーの場合、シュートやヘディング、パス、ドリブル、スライディングなどを認識するといいます。実際、そのようなシーンの被写体を逃さず、決定的瞬間を見逃さない機能であるように思えます。ただし、結果として見た場合、追っている被写体(AFフレームに入っている被写体)であれば同様の写真は撮れてしまうわけで、本当に効果はあったのかというちょっとした疑問点も。時間をかけてじっくりと検証する必要がありそうです。なお、サッカーの撮影では30コマ/秒の連続撮影、ブラックアウトフリー機能も使用しました。本モデルの守備範囲は、フラグシップモデルであるEOS R1のお株を奪いかねない領域まで及ぶように思えます。

シャッターを切った瞬間、最大15コマ分時間をさかのぼって記録を行うプリ連続撮影機能の搭載もEOS R5 Mark IIのトピックといえます。どのようなシーンがこの機能に最適なのか考え、野鳥の羽ばたくシーンを狙ってみました。カメラを構えてシャッターボタンを半押しすると、早速バッファに画像が記録されることがファインダー内の情報で確認できます。

ただし、トライアルした日はとても暑く、直射日光の当たるところでカメラを構えましたが、しばらくするとカメラ内部の温度上昇を示すアイコンが画面に表示されるようになり、最後にはプリ連続撮影ができなくなってしまいました。夏場は、この機能の使用に留意する必要がありそうです。ちなみに本来の使い方ではありませんが、動画撮影用である別売オプションのクーリングファン「CF-R20EP」を装着したらこの問題は解決しそうです。また、プリ連続撮影はバッテリーの消耗も激しく、小一時間ほどの撮影でバッテリー交換の表示が出てしまいました。予備のバッテリーを多めに持っておいたほうがよさそうですが、本機能は最新の「LP-E6P」でないと作動しません。従来の「LP-E6NH」や「LP-E6N」は残念ながら対応していないので、こちらも注意しておきたいところです。

ローリングシャッター歪みについては、今回撮影した画像を見る限り気になる部分は見受けられませんでした。視覚的に許容範囲内に収まっていると理解してよいかと思います。野球のバッターや、ティグラウンドでゴルファーがクラブをスイングした瞬間など高速で動くものでは、それなりにローリングシャッター歪みが出てくると思いますが、そうでなければ十分実用的であり、メーカーが誇らしく謳うのも理解できました。

縦横2倍の画素数にする「カメラ内アップスケーリング」は実用的

最後に、縦横の画素数を2倍にする「カメラ内アップスケーリング」をチェックしてみました。この機能を使えば、オリジナルの4500万画素の画像が1億7900万画素の画像となりますが、単に画素数を増やすだけであればジャギーが発生するだけで解像感の向上は望めません。ディープラーニング技術を用いた補間処理を行うことで、1億7900万画素の解像度を実現しているといいます。ライバルのメーカーのなかには、イメージセンサーを微動させて複数回のシャッターを切り高画素の画像を得る機能を搭載するカメラを見かけます。しかしながら、本機能は記録されている画像に対して処理を行うため、どのような被写体でも対応可能なのがメリットとなります。実際その効果は高く、それまで見えてなかったものが見えるようになると言っても過言ではありません。元画像をそのままアップスケーリングする方法に加え、カメラ内の画像編集機能でトリミングを行なったとき同時にアップスケーリングを行うことができるのも便利に思えます。

今回トライアルできなかった機能もまだまだ多いEOS R5 Mark II。紹介できた機能だけを見てもいずれも効果的で、強力に撮影をサポートしてくれそうです。そのようななか、ちょっと不満に思えたのが、RAWフォーマットのサイズがJPEGのように選べないこと。先代モデルもそうでしたが、4500万画素の半分のMサイズ、さらにその半分のSサイズが欲しく思えます。私ごととなりますが、依頼仕事は近年紙への印刷よりもインターネットへの掲載が多く、フルの画素数では持て余してしまうことも少なくありません。RAWのサイズが選べれば、メモリーカードも保存用のハードディスクも経済的に使えるように思えます。

また、こちらも主観的なものですが、チルト式の液晶モニターも検討してみてほしく思えます。EOS Rシステムは、いずれのモデルもバリアングル液晶モニターを採用しており、本モデルも例外ではありませんが、上方向や下方向に液晶モニターを向ける際、光軸から液晶モニターの画面が大きく離れてしまい、特に三脚を使用したときなど使いにくく感じます。動画撮影を考慮してバリアングル液晶モニターにしたと耳にしたことがありますが、動画撮影者のなかにもこのタイプの液晶モニターは使いづらいという話も聞いています。チルト式にすればボディからはみ出すヒンジはなくなりますし、どのような方向に液晶モニターを向けても光軸から大きく外れることがないため使いやすく思えてなりません。バリアングル派のユーザーの方もいらっしゃると思いますが、メーカーにはRAWフォーマットのサイズと同様に考えてみてほしいところです。

多彩な機能を備え、全方位の撮影に対応すると言っても過言ではないEOS R5 Mark II。EOS Rシステムのマスターピースらしいフルサイズミラーレスに仕上がっています。あとはその卓越した機能をどれだけ使い熟し、写り(作品)に活かせるかが、このカメラのユーザーに与えられたテーマとなりそうです。8月30日の発売を前に、すでに多くの予約が入っているとのことで、先代と同様に写真愛好家注目のモデルとなるでしょう。

著者 : 大浦タケシ おおうらたけし 宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。 この著者の記事一覧はこちら

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