LEITZ PHONE 3レビュー - スマホカメラをさらに極めた、ライカ監修スマホの第3弾

ドイツの名門カメラメーカーであるライカカメラとコラボレーションしたスマートフォン「LEITZ PHONE」シリーズの最新モデル、「LEITZ PHONE 3」が4月19日に発売となります。1型という大型センサーのハイエンドカメラを搭載したのが最大の特徴です。

今回、この最新モデルをお借りして試用する機会を得たので、カメラ機能を中心にチェックしてみました。

ライカの表現が楽しめるカメラ

「LEITZ PHONE」は、ライカの監修によるデザインとカメラ性能が特徴のスマートフォンです。端末の開発はシャープが担当。「LEITZ PHONE 1」「LEITZ PHONE 2」に続く3世代目となり、今回もソフトバンクからの独占販売となっています。

従来通り、やはり最大の特徴はカメラ性能です。メインカメラは有効画素数約4,720万画素の1型センサーを搭載。レンズはSUMMICRON 1:1.9/19 ASPH.というライカ銘のレンズを採用します。基本的なスペックは先代の「LEITZ PHONE 2」と変わらないようです。

レンズは焦点距離が35mm判換算19mm相当で開放F値F1.9というスペックのズミクロンレンズですが、撮影時は「1x」として24mm相当、「0.7x」として19mm相当で撮影が行われます。標準の画角がデジタルズームで24mm相当になっている、というわけです。これは従来通りの設計で、基本的なカメラスペックは従来通りです。

19mm相当の画角で起動しつつ、24mm相当の画角で枠を表示してその枠内を記録する「ブライトフレーム」機能も従来通り搭載しています。

カメラの反応はそれほど機敏ではありません。1型センサーから得られた画像をピクセルビニングによって1,180万画素で記録することやオートHDR処理などが影響しているのかもしれませんが、キビキビという感じではありません。

とはいえ、カメラを被写体に向けると認識して最適な撮影設定にする「AI MODE」やオートHDR、オートナイト(自動で夜景モードに切替)といった撮影設定も備え、基本的な撮影は問題なくこなせます。

特に1型センサーということで余裕のある画質が魅力。ハイライトからシャドーまで自然なグラデーションで背景のボケも自然。画素数が1,180万画素なのでそれほど精細感はないですが、スマホカメラでは一般的なもの。シャープネスも自然です。

描写に関してはスマホトップクラスと言ってもよく、色のりに派手さはなく、見た目通りでナチュラル。とにかくリアルな描写です。

ボケ表現をさらに楽しめる「Leitz Looks」

レンズは単焦点なので、19mm相当(0.7倍)以外はすべてデジタルズームです。ズームボタンは2倍までが表示され、さらに最大6倍までのデジタルズームが可能。画質面で言えば、2倍ぐらいが許容範囲で、それ以上になるとそれなりに描写は荒れます。
ズームの作例

スマホ画面で拡大しなければ写っているものが何かは分かるのであまり問題ないですが、拡大すると途端にアラが見えます。まあ、このあたりはデジタルズームではよくあることです。

何といっても楽しいのが、カメラに用意された「Leitz Looks」モードです。これは従来から搭載されている機能で、レンズエフェクトとして、「SUMMILUX 28」「SUMMILUX 35」「NOCTILUX 50」という3本のライカレンズをシミュレートしたモードが用意されています。

それぞれの名称の通り、画角はそれぞれ35mm判換算で28mm/35mm/50mmとなっており、デジタルズームにはなりますが、ズーム倍率ではなくレンズ交換をするように画角を切り替えられるので、これがとても使いやすいのです。通常の写真モードだと19mm/24mm/48mmの切り替えですが、Leitz Looksだと28mm/35mm/50mmという見慣れた画角で、撮影しやすいのもいい感じです。
Leitz Looksの画角比較

さらにLeitz Looksでは、ライカらしい色合いとトーンが一括して設定できるフィルター機能が用意されています。それがMONOCHROME/CINEMA CLASSIC/CINEMA CONTEMPORARY/ENHANCED/VIVIDの5種類。このうち、ENHANCED/VIVIDの2つは「LEITZ PHONE 3」で追加されたものです。

Leitz Looksの作例

レンズエフェクトとフィルターを組み合わせることで、「50mmのNOCTILUXでモノクロ写真を撮る」といった雰囲気のある写真が撮影できます。特に新しいENHANCEDはコントラストが高く力強い写真が撮影できる、あまりスマホカメラにはない描写でしょう。クラシカルなCINEMA CLASSICもモノクロも、ライカらしい色合いとトーンが再現されていて、通常のスマホカメラの写りとは一線を画します。

個人的には、露出補正がもう少しやりやすかったらよかったと思います。本機でも一般的なスマホカメラと同じように、撮影中に画面上をタッチするとAF枠の横に露出補正バーが表示され、スワイプすると露出補正ができるのですが、微調整がしづらい仕組みです。特にモノクロでは露出補正をしたくなるシーンが多かったので、「Xperia 1」シリーズのように使いやすいUIを期待したいところです。

さらに今回の新モデルでは、このLeitz Looksに絞りのシミュレートも追加されました。物理絞りではなくデジタル処理による絞りですが、SUMMILUX 28/35ではF1.4からF8までを1段ずつ変化させることができます。NOCTILUX 50ではさらにF1.2も選択できます。

絞りの違いによる作例比較

通常、絞りは光を取り込む量とボケ(被写界深度)をコントロールしますが、Leitz Looksの絞り設定はあくまでデジタル処理なので、被写界深度だけしか変わりません。F1.2では背景が大きくボケ、F8では背景までピントが合ったような写真になります。

もちろん、物理的な絞りとは異なるので、完全に被写体と背景が分離されているわけではなく、ときおり不自然な描写になります。1型センサー+F1.9の大口径レンズなので、もともとボケやすく、近接撮影だとどうしてもF8まで絞っても背景はボケてしまいます。どちらかというと1~2mより離れた被写体を撮影する場合に効果を発揮しそうです。

なお、こうした絞りのシミュレート機能は他社製スマホカメラでも一般的で、特に撮影後にも絞りを切り替えられる場合がありますが、「LEITZ PHONE 3」では後から変更することはできないようです。Exifにも絞り値が記録されないので、あとから見返せない点も残念なところです。

いずれにしても、Leitz Looksは「LEITZ PHONE」の真骨頂です。デジタルズームのため、厳密にいうと画質面では不利なのですが、とにかく使いやすく雰囲気がよいので、積極的に使いたくなります。撮影時の記録時間が数秒あるため、ひたすら連写して撮るというよりも、じっくりと画角やトーン/絞りを決めて撮影するという撮り方になるでしょう。

画質面では、19mm相当(0.7倍)や24mm相当(1倍)で撮影した画像は一級品です。1型センサーの余裕に加え、ライカの監修によるものか、陰影の表現もよく、一般的なスマホカメラとは一味違った描写をします。

どうしてもデジタルズームになるLeitz Looksでは、特に50mmのNOCTILUXの画質が劣化しているように感じますが、それを補う写真表現が魅力。特にモノクロやENHANCEDは、親和性が高そうです。

カメラて基本的に「LEITZ PHONE 2」を踏襲しており、画質面では大きく変わらないようです。もともと1型センサーとそれに合わせた設計の単焦点レンズ、ライカの監修というスペックで、インパクトのある写真が撮影できるというのが「LEITZ PHONE」です。そのカメラの表現力は変わっておらず、Leitz Looksの拡充でさらにバリエーション豊かな表現が可能になりました。

どちらかというと、作品作りだったり、映える写真だったり、写真にこだわりたい場合に有利なカメラでしょう。気軽に撮影しても問題はないのですが、Leitz Looksを使う場合は記録時間もかかるため、撮影を楽しむときに使いたい機能です。
アオリ撮影も手軽に

カメラ機能では、もう1つ新たに「ライカ・パースペクティブ・コントロール」機能が追加されました。

これは、カメラの角度を検出して傾いた被写体を補正するという機能です。カメラが傾いていたので被写体の水平が真っ直ぐになっていなかった……といった場合にも補正してくれるのですが、特徴的なのは被写体を認識し、その角度を補正してくれる点です。

この機能は本来、建物の傾きを補正するために使うもののようです。いわゆるアオリ撮影というものですが、カメラだと専用のレンズを使うことで下から見上げるように建物を撮影しても真っ直ぐに記録できます。これをデジタル処理で実現するのがパースペクティブ・コントロールです。同様に、人を撮影しようとして傾いていても、これを補正してくれます。

撮影時は画面内に枠線が表示され、その範囲内が記録されます。その枠から外れたところは記録されないので、枠線を確認しないと望んだ範囲が記録されないので注意が必要です。また、「見上げるような」写真で補正するというよりも、少し離れた建物を真っ直ぐにするぐらいのイメージです。

ハイパフォーマンスのスペック、アップデートも3年保証

スマホとしてはハイエンドに位置づけられます。SoCはSnapdragon 8 Gen 2、メモリは12GB、ストレージは512GB。SoCは前モデルから1世代新しくなりました。さらに新しいSnapdragon 8 Gen 3搭載スマホも出てきていますが、現時点ではハイエンドと言って差し支えないでしょう。

ベンチマークテストをしてみると、Snapdragon 8 Gen 2にふさわしい数字で、十分なパフォーマンス。実際に使っていて通常の作業に不満は感じません。その割には、特にLeitz Looksで書き込み時間が必要になる点は気にかかりますが、普段の作業でパフォーマンスに支障はないでしょう。

ディスプレイは6.6型有機ELのおなじみPro IGZO OLEDで、解像度はWUXGA+(2,730×1,260)。IPX5/IPX8相当の防水性能、IP6X相当の防塵性能に加え、おサイフケータイやQiのワイヤレス充電(2024年5月認証取得予定)もサポート。5G SAを含む幅広いネットワークに対応しますが、残念ながらミリ波は非対応です。

nanoSIMとeSIMのデュアルSIMもサポートしていて、当然SIMフリーなので他社回線のユーザーも購入できます。バッテリー容量は5,000mAh。

なお、本機の発売を前にソフトバンクでは、新しい購入プログラム「新トクするサポート(プレミアム)」を発表しています。48回払いで購入して一定の条件を満たすと、13カ月目以降に端末を返却することで残債の支払いが免除されるというもの。ソフトバンクではすでに「新トクするサポート(バリュー)」で同様のプランがありましたが、これをハイエンド端末でも利用できるようにしたというプログラムです。

ただし「プレミアム」では、「あんしん保証パック」(月額最大1,740円)と「早トクオプション利用料」(最大12,100円)が追加されているので、これらの設定がない「バリュー」に比べると高めの設定になっています(この2つの条件を選ばずに24回払いを利用することも可能)。

このプログラムを利用すれば比較的安価に購入でき、1年での買い替えにも対応できるため、今後も「LEITZ PHONE」がリリースされれば、毎年機種変更していけそうです。

スマホとしてはシャープ製のスマホならではの便利機能、最新のAndroid 14搭載で3年間のOSアップデート保証もあります。1年で返却する買い方だけでなく、長期の利用でも安心できるでしょう。

第3世代目まできちんと開発を続けてくれているのも好感が持てます。今回はさらに、カラーが前モデルの光沢のあるライカホワイトからライカブラックになり、ダイヤモンドパターンを施したレザー調のデザインになって、カメラ感が増しています。

専用ケース/専用のレンズキャップも付属。特にレンズキャップはマグネットで装着するタイプで、取り回しがしやすくなっています。本体側のレンズ周辺にマグネットが内蔵されているということで、試しにシグマのマグネットキャップを試してみましたが、残念ながら合いませんでした。世の中にはマグネット式のレンズフィルターもあるので、そうした使い方ができるかもしれませんが、今回は試せていません。

シャッター音も小さく短い音で何度も撮影したくなりますし、デザイン性も写真の楽しさも感じられます。スマホカメラをさらに極めたのがこの「LEITZ PHONE 3」と言えそうです。

小山安博 こやまやすひろ マイナビニュースの編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。最近は決済に関する取材に力を入れる。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、PC、スマートフォン……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 この著者の記事一覧はこちら

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