ドコモの選択は「Amazonとの協業」、発表会で語られたその狙いとは

NTTドコモとアマゾンジャパンは4月10日、「Amazon.co.jpでのdポイント獲得/利用」「ドコモ経由でのAmazonプライム登録に対する特典提供」の2つの協業を開始しました。この協業の開始にあたって開催された発表会では、NTTドコモから井伊基之氏、アマゾンジャパンからジャスパー・チャン氏の両社長が登壇。この取り組みに対する両者の熱意をうかがわせました。

最初に登壇したNTTドコモの井伊氏は、今回の協働について具体的に触れる前に、NTTドコモの推進するdポイントの現状を振り返ります。2024年3月時点でdポイントクラブの会員数が約1億人に達するなど、“みんなの共通ポイント”として順調に広がっていることを紹介。そして、ドコモとAmazonの協働の歴史について、2012年の2月に電子書籍リーダー「Kindle」への回線提供という形で始まったこと、2018年12月に「d払い」がAmazon.co.jpで利用可能になったことなどに触れ、さらに今回「両社の強みをいかして買い物体験を変えていく」と宣言しました。

具体的な“両社の強み”とは何かといえば、NTTドコモのものとしては「約1億の会員基盤」「年間約3,400億円相当のdポイント利用」「ドコモショップなどリアル・デジタルの顧客接点」、アマゾンのものとしては「数億点の品ぞろえ」「多様な特典を提供するAmazonプライム」「新たな買い物体験を作るテクノロジー」を挙げます。

さらに井伊氏は具体的な協業の内容についても紹介しましたが、詳細は既報のニュース記事をご参照ください。最後に井伊氏は「Amazonが皆様にワクワクする買い物体験を提供していきます。ぜひご期待ください」と自身のパートを締めくくりました。

続いて登壇したアマゾンジャパンのチャン氏は、「最もお客様を大切にする」「最高の雇用主となる」というAmazonのミッションから話をはじめます。そのうえで、「低コスト」「低価格」「顧客満足度」「取引数」「販売事業者数」「品揃え」といった要素のサイクルで成長を図る同社のビジネスモデルをあらためて紹介。さらにカスタマーエクスペリエンスを支える3本の柱として「品揃え」「価格」「利便性」があるといいます。

そして日本でのAmazonの活動を紹介。Amazonは2022年に日本へ1.2兆円の投資を実行し、約14万社の販売事業者の商品を販売、全国で推計17万5,000人以上の雇用を創出しているそうです。

今回の協働のひとつのポイントとなるAmazonプライムについては、配送面でのメリットとエンターテイメントコンテンツという2つの要素を紹介しました。

また今回の取り組みのもうひとつのポイントは、Amazon.co.jpでの買い物でdポイントがたまるということ。Amazon.co.jpでは日本独自の施策として2007年からAmazonポイントを導入していますが、今回の取り組みにより、Amazonポイント/dポイントの両方がたまる/つかえるということになります。施策自体に目新しさはありませんが、数億点という膨大な取り扱い商品を誇るAmazon.co.jpでdポイントが使えるようになるということにはかなりのインパクトといえるでしょう。

両氏のプレゼンテーションは両社の協働の大枠を中心としたもので、詳細が語られたのはその後の質疑応答においてでした。対応したのは、NTTドコモからウォレットサービス部長の田原務氏と営業戦略部長の山本明宏氏、アマゾンジャパンからバイスプレジデント プライム・マーケティング事業統括本部長の鈴木浩司氏の3名です。

記者団との質疑応答とその後の囲み取材で語られたところによれば、今回の取り組みは一時的なキャンペーンなどではなく、長期のパートナーシップを想定したものであるとのこと。記者からは「今回の取り組みは楽天を意識したものか」という質問もありましたが、NTTドコモからは「競合よりもdポイントユーザーのニーズを意識している」(田原氏)、アマゾンジャパンからは「我々が見ているのはお客様。他社がやっているからという発想はない」(鈴木氏)と、いずれも否定的な回答です。

NTTドコモからは「dポイントクラブではECが弱く、会員から(ECでdポイントを使いたいと)リクエストをもらっていた。Amazonと組むことでそのニーズに応えられると考えている」(田原氏)とコメントがあり、ECでdポイントを活用したいというユーザーのニーズに応えるために、考えられる中でもっとも強力なパートナーを選定したということのようです。

Amazonにしても、これまでリクルートIDの連携のように他社ポイントをAmazon.co.jpでの買い物に利用する枠組みはあったものの、Amazon.co.jpでの買い物で外部のポイントを貯められる取り組みは初めてのことです。「日本ではポイント施策が重要」(鈴木氏)という言葉もあったように、日本国内での施策としてはポイント還元の訴求力が大きいという認識の模様。この認識からAmazon.co.jp独自のAmazonポイントを展開してきたわけですが、それを一歩進めてオープンな共通ポイントであるdポイントを貯められるようにする今回の試みは、Amazonユーザーへの利便性提供という意味で大きな進歩になります。

両者の取り組みが独占的/排他的なものなのかという質問については明確な回答はされず、NTTドコモからは「dポイントは基本的にオープンなプラットフォームで、その方針に沿ったもの」(田原氏)、アマゾンジャパンからは「今後については回答を控えるが、ドコモ/dポイントの協働は重要・戦略的な取り組みと考えている」(鈴木氏)と語るにとどまりました。両社のコメントを総合すると、明示的に排他的な契約になっているわけではないにしても、互いに相手を重要なパートナーと位置付けているのは間違いなさそうです。

なお今回の取り組みでは、60歳以上のドコモユーザーがドコモ経由でAmazonプライムに登録したうえで、d払いを利用してAmazon.co.jpで買い物をすると、還元率が1%上乗せされるという特典があります。この特典については、60歳以上のユーザーでECの利用率が低いことから、この層に特典を追加してアピールしたいという考えに基づく施策のようです。NTTドコモにとっては、同社のアドバンテージであるドコモショップなどの顧客接点を活用できるポイントになるでしょう。

質疑応答の後には、今回の両社の取り組みのテレビCMに出演する浜辺美波さんと指原莉乃さんによるトークセッションも開催されました。浜辺さんはスーパーやコンビニエンスストアでdポイントを使って買い物をすることもあるそうで、「Amazon.co.jpでdポイントが使えるようになると選択肢が増えて生活の幅が広がりますね」と今回の協働を歓迎。指原さんは毎日Amazon.co.jpから荷物が届くヘビーユーザーとのことで、「これ以上便利になってどうするのかっていう感じ。うれしい人ばかりなのでは?」と話していました。

「お二人が、お互いにdポイントでなにかプレゼントするなら何を贈りますか?」という質問には、浜辺さんは「日本酒」、指原さんは「入眠グッズ」を挙げていました。

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