佐野正弘のケータイ業界情報局 第124回 決済との連携に踏み込んだ「ドコモポイ活プラン」、その第1弾がなぜ「ahamo」なのか?

NTTドコモは2024年3月21日、「d払い」などの決済サービスの利用で「dポイント」が貯まる新たな料金プラン「ドコモポイ活プラン」を発表。その第1弾として同社は、ahamoユーザーに向けた「ahamoポイ活」を2024年4月1日より提供開始しました。なぜ、NTTドコモの主流となる「eximo」や「irumo」ではなく、ahamoからのスタートとなるのでしょうか。
4万円の「d払い」で「ahamo大盛り」が実質2,750円になる

前回の「オリックス・クレジットを子会社化、金融強化を急ぐNTTドコモに“足りないもの”」では、NTTドコモが金融サービスの強化に急速に動いており、今後金融・決済サービスと連携した料金プランを投入することが期待されると説明しましたが、同社は早々にその実現に向けた動きを見せました。

それは2024年3月21日、NTTドコモが「ドコモポイ活プラン」という新料金プランを発表したこと。これは「ポイ活」という名前の通り、NTTドコモの決済サービスの利用状況に応じて、同社のポイントサービス「dポイント」が貯まりやすくなるもの。現時点では決済サービスとの連携になることから、KDDIの「auマネ活プラン」よりもソフトバンクの「ペイトク」を意識したものといえるでしょう。

同社はその第1弾として、オンライン専用プラン「ahamo」のユーザーに向けた「ahamoポイ活」の提供を2024年4月1日から開始しました。ただ、ドコモポイ活プランは別途新しい料金プランを提供するわけではなく、ポイントを増やしやすくするオプションサービスを既存の料金プランに追加したものとなっています。

実際、ahamoポイ活は通信量20GBの「ahamo」(月額2,970円)に、80GBの通信量を上乗せする「大盛りオプション」(月額1,980円)も加えた「ahamo大盛り」ユーザーに向けたもので、ahamo大盛りユーザーが月額2,200円の「ポイ活オプション」を契約することで、dポイントに関するいくつかの特典が得られる仕組みです。

特典の1つは、スマートフォン決済の「d払い」を利用した時のポイント還元率が3%に増えること。2つ目は、毎月の料金を「dカード GOLD」で支払っていると、d払いを利用した時のポイント還元率が5%に増えること(2024年8月ごろ開始予定)。そして3つ目が「10%還元キャンペーン」の適用になります。

このキャンペーンは、通常3~5%となるahamoポイ活のポイント還元率が、キャンペーン期間中は10%に増量されるというもの。それゆえ、「dカード」をd払いの支払いに使用し、なおかつdポイント加盟店でdポイントカードを提示し、このキャンペーンが適用されれば最大で13.5%のポイント還元が得られるといます。

ahamoポイ活は、すべてのオプションを契約すると月額料金は7,150円となり、決して安くはありません。ただ、ahamoポイ活で還元されるdポイントの上限額は毎月4,000円ですので、10%還元キャンペーンによる還元だけでも4万円分の買い物をすれば4,000円の上限に達することとなります。

それゆえ、少なくともキャンペーンの期間中は、毎月d払いで4万円分の買い物をし、それを通信量に充当すれば、100GBのahamo大盛りを実質月額2,750円で利用できる計算となります。こうした仕組みはペイトクと共通しており、決済サービスをd払いに集中することで通信料をお得にできることは確かでしょう。
「eximoポイ活」では、より踏み込んだ連携の可能性も

ですが、そもそもahamoは若い世代向けにターゲットを絞ったオンライン専用プランで、同社の中ではメインのプランというわけではありません。メインと位置付けられるのはむしろ、使い放題の「eximo」や低価格・小容量の「irumo」であり、それらよりも先にahamoで「ポイ活」を提供したことは気になります。

その理由としてNTTドコモ側は、d払いとの親和性の高さを挙げています。d払いのようなスマートフォン決済はahamoのターゲット層であり、大容量通信を利用する若い世代ほど多く利用する傾向が強いことから、先んじてahamoに向けてサービスを提供するに至ったとしています。

ですが、ahamoポイ活の内容を見ると、NTTドコモはこの分野での出遅れを取り戻すべく、ドコモポイ活プランのサービスの提供を急いだ結果、ahamoからのサービス展開となった印象も受けてしまいます。そのことを示しているのが、1つにdカード GOLDで通信量を支払っている時のポイント還元率アップが実施されるのが2024年8月ごろからと、やや先であること。そしてもう1つが、10%還元キャンペーンの終了時期が未定だということです。

10%ポイントキャンペーンに関して、NTTドコモのリリース内容を確認すると「キャンペーンの仕様は都度見直し・検討を行っており、今後の『ahamoポイ活』特典の提供内容の変更や、『dカード GOLD』ご利用で月々のお支払いを『dカード GOLD』に設定しているお客さま向けの『ahamoポイ活』利用特典の提供開始に伴い、変更となる可能性があります」との注意書きがなされています。

ドコモポイ活プランは、自社系列の決済サービスと密接に連携して顧客を囲い込む、いわゆる「経済圏ビジネス」を強化するためのもの。それだけにNTTドコモは、dカード GOLDによる特典を提供する8月を機として、dカード GOLDの契約を推進するため10%還元キャンペーンの内容を変更する、あるいは終了させる可能性が高いのではないか筆者は見ています。

そしてもう1つ、一連の発表で気になったのが、ahamoポイ活を提供した後に得られた顧客からの声を分析し、「eximoポイ活」に反映させたいと説明していたことです。eximoポイ活はドコモポイ活プランの第2弾として、2024年夏から秋にかけての提供を予定するとしていますが、現時点でその内容は明らかにされておらず、準備が整っていない様子がうかがえます。

そして、eximoポイ活を提供する予定の夏~秋ごろというのは、ahamoポイ活でdカード GOLDの特典を提供する8月と重なるタイミング。それだけにドコモポイ活プランは、eximoポイ活が提供される夏ごろに何らかのリニューアルがなされ、そちらが真のドコモポイ活プランとなることが考えられるでしょう。

しかも、eximoは同社のメインプランの1つでもあるだけに、ahamoポイ活より一層強固なサービス連携、具体的には金融サービスとの連携を図ってくることが予想されます。金融・決済サービス連携では他社の後塵を拝したNTTドコモですが、それをいかに短期間でキャッチアップし、他社を出し抜くことができるのか、当面目が離せない動きが続きそうです。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら

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