ソフトバンク株主総会、「プラチナバンドは楽天には譲りません」

ソフトバンクは6月23日、第36回定時株主総会を開催しました。登壇したソフトバンク代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏は、今後の成長戦略について「総合デジタルプラットフォーマーとしてあらゆる産業のデジタル化に挑戦して次世代の社会インフラになる」との指針を改めて説明。そのために、5G(スタンドアローン)のエリア拡大を進めていること、社会全体がデジタル化されるとさまざまな顧客データをかけ合わせた新しいサービスを創出できること、社会課題を解決して事業の成長につなげていくこと、などを株主に向けて説明しました。

PayPay、黒字化よりもシェア拡大を優先したい

質疑応答では、株主から多くの質問が寄せられました。

取締役の数が多くないか、という質問に宮川社長は「役員構成につきましては、各取締役が有するスキルや経験を含め、最適な構成であるものと判断しております。なお、同規模の企業における取締役の人数と比較しましても、適切な人数規模であると考えております」と回答。

現状の株価について経営陣はどのように捉えているか、という質問には「今朝ちょうど1,500円を超えたところです。(個人的に)1,500円が、ひとつの大きな壁だという認識を持っております」としたうえで、「現状の株価は、我が社のポテンシャルが反映されてるとは思っておりません。自分自身はまったく満足しておりません。私自身も1人の株主ですが、自社グループの将来性を考えますと、現在の株価は非常に安い」と主張。今後、総合デジタルプラットフォーマーとして全ての産業に取り組んでいく方針であり、これからも成長の機会は増え続けていく、と説明しました。

PayPayの手数料を有料化したことに伴う利用者数や加盟店数の変化について、また黒字化の見込み、上場の予定について聞かれると「手数料の有料化以降も、ユーザー数は順調に増加を続けております。(PayPayは)個別のグループ会社の話になるので、簡単にご説明しますが、ユーザー獲得費用を除くとすでに黒字化の水準まで来ております。ただ、ブレーキを踏んで黒字化を目指すより、今はマーケティングを優先してシェアの拡大を図ります。それが結果的にPayPayの企業価値を高めることにつながる、という考えです」と回答。上場については、有力な選択肢の1つとしながらも、現時点でお話しすることはできません、としました。

今後、社会のDX化についていけない人も出てくるのでは、と聞かれると「DXに対応できない人が残って、日本の中で情報の格差が生まれることは、新たな社会課題と認識しております。ソフトバンクでも誰1人取り残すことのないデジタル社会の実現に向けて取り組んでおります。具体的には、シンプルスマホやキッズホンを販売するなどして、幅広い年代のお客様が扱いやすいスマートフォンを取り揃えていきます。また、全国の販売店にスマホアドバイザー配置し、スマホ教室を開催しています。最近では自治体と連携して、車で移動するスマホ教室を開始しました」。地域格差の解消に取り組んでいきたい、誰1人取り残すことのないデジタル社会の実現を追求していきたい、と繰り返して説明しました。
プラチナバンドを楽天に譲る考えはない

プラチナバンドについて、900MHz帯と700MHz帯の両方を持っているが、コスト面で無駄ではないか、900MHz帯に一本化して700MHz帯は総務省に返上し、電報オークションを経由して楽天へ譲渡すべきではないか、という意見には「現在、700MHz帯は5Gで使用しております。基地局はすでに12,000局を建設し、運用済みです。すでに1,500万人以上の5Gのお客さまが利用しているので、電波の返納は現実的ではありません。まったく考えられません。加えまして、900MHz帯はLTEの主力バンドであり、他のキャリアに比べても多くのトラフィックを運んでおります。900MHz帯を5Gに移行する時期につきましては、LTEの終了時期まで難しいと考えております。700MHz帯は5Gで、900MHz帯はLTEで運用、というのが当社の方針であります」としました。

親子上場について、今後、親会社による非公開化はあるのでしょうか、という質問には「当社は上場会社として自立的に経営を行うことで、更なる成長ができると考えております。非公開化はまったく考えておりません」。

同席した創業者であり取締役の孫正義氏は「いまの世の中は何でもあり得るんじゃないか」とにこやかに話し、そのうえで「だから断定はできないと思いますけど、少なくともいまソフトバンク株式会社として立派に社会的使命を果たしております。宮川社長からご説明しました通り、業績も大いに期待できるところがある。このまま成長していけると思っております」とフォローしました。

会社でワイモバイルを使用しているが、ソフトバンク回線の時に比べて著しく遅い、という意見には「ご迷惑をおかけしております。ただ、ソフトバンクとワイモバイルとの間で通信品質に差はつけておりません。通信品質の改善につきまして、継続して取り組んで参ります。電波改善要望アプリというものも用意しております。是非、お声を寄せてもらえれば」。

ロシアのウクライナ侵攻の影響について聞かれると「ウクライナで戦争による被害が出ていることに対して、大変遺憾に感じております。現時点で(ソフトバンクには)大きな影響は出ておりません」。
スマホ単体の販売拒否は再発防止に努めていく

キャリアショップにおける端末の販売拒否の問題について聞かれると、同席した代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの榛葉淳氏は「一部の店舗において、スマートフォン本体だけを販売することをお断りする事象があったことに対して、のご質問と理解しました。このことは残念ながら事実でございます。すでに対策を講じました。今後も研修を重ね、全国のスタッフが誤解しないよう、各店舗に必ず注意事項をポスターで掲示するとともに、再発の防止に努めて参りたいと思います」としました。

DX市場は競合企業が非常に多いが、そうした環境の中でどう戦っていくのかという質問に対し、同席した代表取締役 副社長執行役員 兼 COOの今井康之氏は「我々は2017年からDX本部を立ち上げ、各業界の企業の皆さまと新しい事業展開をやってまいりました。我々の差別化ポイントとしては、グループにヤフーがありLINEがありPayPayがある。まさにエンドユーザーのところに、最もフィットするポイントを持っている。それがソフトバンクだと思います。これを利用して、いろんな企業の皆様と新しいDXを作っていく、ということを推進しております」と説明しました。
5Gのエリア拡大は他社を一歩リードしている

5Gの進捗状況について、宮川社長は「3月末に人口カバー率90%を達成しました。他のキャリアさんと比べても一歩リードしている状況です。この先、真の5G(スタンドアローン)というものに切り替わっていくタイミングです。スマートフォンだけの事業から、社会のあらゆるインフラになっていく。ここを急ピッチで工事しております。今後、みんなが使えるものになる、そんなフェーズに入ってきます。5Gのネットワーク作りを、まずは他社より先行したというメリットが必ず出てくる。ご期待いただければ」としました。

半導体不足については「そんなに大きな影響は出ていませんが、サーバーの販売をやっているソフトバンクC&Sという子会社で仕入れが少し止まりました。昨年、もう少し売上が立つ予定でした。それから、我々がコンシューマで主力商品として取り扱っているiPhone、iPadに半導体不足の影響が少しあり、品薄の状態になりました。とはいえ、そこまで業績に影響を与えるほどではありません」。

6Gの取り組みについては「光に近いような周波数帯を使う技術であり、実験はすでに開始しています。おおむね順調です。6Gになると、今まで人と人の通信だったものが、だんだんモノとモノ、それから飛行機みたいなモノまで入ってきますので、3次元空間でどうインフラを作るのか、ということが6Gの定義になってきます。他社のみなさんも衛星から電波を吹かせることをやられたり、我々みたいなHAPSまで上空を降りてきたり。ソフトバンクでは、低軌道衛星とHAPSの二軸で3D化にチャレンジしていきたいと思います」としました。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら

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