GORE-TEXが新素材に切り替え。さらに薄く、軽くなっても機能は不変
「防水性」「透湿性」「防風性」。言わずと知れたGORE-TEXの高機能素材に大改革が進められていると聞き、GORE-TEX主催のケイビングツアー(洞窟探検)に参加してきました。
GORE-TEXが新たなフェーズへと進化するために、メスが入れられたのは機能性を担保しているGORE-TEXの根幹とも言える「メンブレン」(写真・下)。従来のメンブレンとはまったく異なる新しいGORE-TEXメンブレンを体験してきました。
新開発のまったく新しい「ePEメンブレン」とは
GORE-TEX素材の機能性を支える「メンブレン」とは、蛍石と呼ばれる鉱石を原材料とするフッ素樹脂を使用していました。
今回の大改革というのが、このメンブレンを環境負荷の高いフッ素樹脂から脱却するというもの。GORE-TEX製品は、これまで蛍石を原料とする「ePTFEメンブレン」(いわば、フライパンのテフロンのようなもの)でしたが、これを全面的に非フッ素系素材である「ePEメンブレン」へと切り替えていくことが発表されました。
防水性・透湿性・防風性を担保するために、厳格な製品テストで知られるGORE-TEXですが、気になるのは、機能性の根幹とも言えるメンブレンを変更してしまってもスペックは担保されているのかということ。
GORE-TEXが掲げる「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY」(「あなたをドライに保ち、快適に着用できることを約束します」という意味)は、これまで通り約束されるのでしょうか。
ご多分に漏れず、自然環境ファーストの企業努力が強いられている現代において、機能性も手を抜けない…アウトドアブランドならなおさらのことですが、そう簡単なことではないのでしょう。
「ePEメンブレン」が実現したのは薄さと軽さだけではない
そんな新たなGORE-TEXを装い向かったのは、山梨県は「富士風穴」。青木ヶ原樹海にポッカリと口を開けた全長200mの洞窟です。
今回着用したウェアは、GORE-TEX製品のなかでももっともハイレベルのパフォーマンスに相当する「GORE-TEX PROプロダクト」。水場かつ岩場で地底深くへと潜っていくようなアクティビティにもってこいのスペックです。
新素材「ePEメンブレン」の特徴として、従来のメンブレンよりも軽く、薄い素材のため、よりしなやかに仕上げることができます。環境面の配慮から推進した新素材の開発ですが、その過程で得た柔軟性は、より過酷な環境下でのアクティビティで重宝されることでしょう。
より環境負荷の低い製品づくりのため、ゴア社では10年にわたり新素材の開発を進めてきたと語るのは、マーケティング担当の阿部 功さん。
アウトドアに携わるブランドとして、これまで通りユーザーの「アクティビティのおける責任」を果たすのがわれわれの使命です。したがって、従来のウェアと同様にGORE-TEX独自の厳しい耐久テストをもって、新素材『ePEメンブレン』の機能性を担保しています。(阿部さん)
それは環境面においても同じで、製造過程で発生するCO2削減や、環境負荷の低い素材を使用することもまたアウトドアにおける「責任」だと考えています。(阿部さん)
アップダウンを繰り返しながら、洞窟奥深くへと進んでいくと残暑厳しい屋外とは一転、洞窟内は気温0℃の世界が広がっています。洞窟に逆さに伸びる氷柱「氷筍(ひょうじゅん)」や、万年氷を横目に歩みを進めていきます。
GORE-TEXウェアのおかげで気温零下のなか寒さも感じないだけでなく、ハシゴを降りたり、這いつくばったり…汗ばみながらも不快感はなく、従来のGORE-TEX製品通りのスペックを発揮してくれました。
新素材のウェアがより軽く薄い新素材が実現した一方で、「ePEメンブレン」の課題として「撥油性」の低下が挙げられるそう。汗や皮脂などの付着はメンブレンの機能性を下げる一番の要因であり、従来通り、GORE-TEX製品のメンテナンスはきちんと“洗う”ことが機能性の担保とウェアが長持ちする秘訣です。
最後に阿部さんは意気込みを語ってくれました。
より軽く薄い新素材が実現した副産物として、従来の素材のゴワつきが解消され、同じスペックのウェアよりもより小さくパッキングすることができるようになりました。
新素材『ePEメンブレン』の導入はまだ始まったばかり。新しいメンブレンで機能性を担保しながら、新たにどんなことができるか楽しみにしていただきたい。(阿部さん)
Photo: 萩原昌晃
10/29 18:00
GIZMODO