ネコには世界はどのように見えているのか。人間の視界と比べてみた
BUSINESS INSIDER 2024年8月18日掲載の記事より転載
・人間とネコの視覚の最大の違いは、網膜にある。
・ネコは人間のように色を見分けることができず、遠くを見ることもできない。
・だが暗闇の中で見る能力は、人間よりもネコの方が上だ。
ネコはその光る目の奥に、何を見ているのだろうか?アーティストのニコライ・ラム(Nickolay Lamm)は、10年近く前に、動物の視覚の専門家3人に話を聞き、ネコが人間と比べてどのように世界を見ているのか、仮説に基づいて視覚的に示した。
人間とネコの視覚の最大の違いは、網膜にある。網膜は、目の奥にある組織で、視細胞と呼ばれる細胞がある。
視細胞は、光線を電気信号へと変換する。光は神経細胞によって処理され、脳へと送られ、私たちに見えている映像に変換される。
視細胞には2種類、桿体細胞と錐体細胞がある。桿体は、周辺視と暗視を司り、明暗を判別する。錐体は、昼間視と色覚を担っている。
ネコもイヌも、桿体が多く、錐体は少ない。人間はその逆で、夜は見えにくいが色を判別することはできる。
だが、ラムは人間に、大好きなペットの目線で世界を見せてあげたかった。写真はすべて、上が人間の見え方、下がネコの見え方になっている。
視野
視野とは、両目の焦点が合っている時に見ることができる範囲のことだ。真正面はもちろん、上下左右に見えるものも含まれる。ネコの視野は200度あり、平均的な人間の180度と比べ、わずかに広い。
視力
視力とは、視覚の鮮明さのことだ。平均的な人間の視力は1.0。ネコの視力は0.2~0.1の間だ。つまり、人間が30メートルや60メートル先に見えるような景色を見るために、ネコは6メートルの距離にいなければならないということだ。下の写真がぼやけているのはこのためだ。
色覚
ネコが色をまったく認識できず、グレー系でしか見ることができないというのは、よくある誤解だ。人間は三色型色覚、つまり赤、緑、青を見えるようにしてくれる3種類の錐体視細胞を持っている。ネコも三色型色覚なのだが、人間と同じではない。ネコの見え方は、色覚異常のある人の見え方と似ている。青系、緑系はよく見えるのだが、赤系とピンク系の識別が難しく、緑っぽく見えたり、紫が青系のように見えたりする。
鮮やかな色相や色の彩度を、我々と同じように見ることもできない。
視距離
専門家らは、ネコは近眼で遠くのものを見ることができないと考えている。だが、近くのものを見る能力は、獲物を捕まえるのに適している。
暗視
ネコは、細かい部分や鮮やかな色を見ることはできないが、暗闇の中で見る能力は高い。網膜に明かりに敏感な桿体がたくさんあるからだ。その結果、ネコは人間に必要な光の約6分の1があれば、ものを見ることができるのだ。
また、網膜の後ろにタペタムと呼ばれるものがあり、それが暗視力を高めていると考えられている。タペタムの細胞は鏡のような働きをする。桿体と錐体の間を通り抜ける光を、反射して視細胞へと戻し、夜間のかすかな光を捉えられるようにするのだ。暗闇でネコの目が光るのはこのためだ。
ニコライ・ラムはこのプロジェクトのため、オール・アニマル・アイ・クリニック(All Animal Eye Clinic)のDVM(獣医学博士)でDACVO(Diplomate of American College of Veterinary Ophthalmologists:アメリカ獣医眼科学会指導医)のケリー・L・ケトリング(Kerry L. Ketring)、ジ・アニマル・アイ・インスティテュート(The Animal Eye Institute)の博士、DJ・ホイスラー(Dr. DJ Haeussler)、ペン・ベット(Penn Vet)の眼科グループに話を聞いた。
Photo: Getty Images
10/29 14:35
GIZMODO