とにかくクールなPC「Zenbook S 14」は処理性能が少し気になる
ASUSから先日発売された新たな14インチノートPC「ASUS Zenbook S 14」。
セラミックとアルミニウムを組み合わせたという独自素材の「Ceraluminum(セラルミナム)」が採用された薄型のノートPCです。デザイン性と性能面を兼ね備えた小型のAI PCとのこと。
米GizmodoのKyle Barr氏は、そんなZenbook S 14を実際に触ってみたそうです。以下Barr氏によるレビューをどうぞ。
ASUS Zenbook S 14
これは何?:ユニークなデザインの超軽量ノートPC。性能面は最上位のモデルを選んだほうがいいかも。
販売価格:税込21万9800円から
好きなところ:ユニークな感触とデザイン、明るくて精細なOLEDディスプレイ、小型な割にポートが多く搭載している
好きじゃないところ:Intel Core Ultra 256VのCPU性能はそこまで高くないかも、指紋がつきやすい、「スマートジェスチャー」的な機能が割と無意味
先月のIFAでASUSが披露した「ASUS Zenbook S 14」が発売となりました。謎だった「Ceraluminum」なる素材も今回レビューで確認しています。
まず、Zenbook S 14は優れたノートPCだと思います。
それはハードウェア面であったり、多数のポート、軽量な設計、あるいはユニークな感触の素材とデザインなどいろいろです。
そして、Intelの新しいSoCであるLunar Lakeこと「Core Ultra 200V」のチップが搭載されていることも注目点としてあげられます。
実際触ってみると、性能面について少し思うところがありました。
ASUS Zenbook S 14の概要
先述のようにASUS Zenbook S 14にはIntel Core Ultra 200VのCPUが搭載されています。個人的に今回のレビューがこのシリーズが搭載されたPCを触る初の機会でした。
レビュー機にはCore Ultra 7 256Vが搭載されており、ラインナップの中でちょうど真ん中あたりに位置するものといえます。このバージョンの価格は税込23万9800円となっています。ちなみに上位のCore Ultra 7 258V搭載のバージョンは、税込25万9800円~です。
このチップやRAMの容量によって違いは生まれるでしょう。256Vのレビュー機で試したベンチマークテストでは比較的良さげなスコアがでました。が、「Qualcomm Snapdragon X Elite」や「AMD Ryazen AI 9 HX 370」あたりが搭載された軽量AI PCには及びませんでしたね。Intelの上位チップであればそのあたりに匹敵するか、あるいは勝つのでしょうが、少なくとも今回レビューで使用した256VはLunar Lakeに抱いた期待ほどではなかったということです。
さて、Zenbook S 14は非常に薄い筐体にもかかわらず豊富なポートが搭載されています。下部フレームの厚さと同様の大きさのHDMIポートなどうまく設計されています。
このあたりも含めて、このPCは低価格帯のモデルとして妥協しているわけではないと感じます。しかしながら、やはり多少費用を上乗せしてでも上位モデルを選んだほうがよいかなと思いますね。
デザインとユーザビリティ
Ceraluminum素材でできたカバーの一番の魅力はユニークなデザインといえると思います。
この素材はプラスチックに似ていますが、独特の質感を持っていて、シェルを軽く叩くと心地良い音がします。また、カバー全体に描かれたメタリックなラインがZenbookにモダンな印象を持たせ、普通のグレーや黒の厚いアルミニウムのカバーよりも見栄えも良いです。
カラーバリエーションはスマイアグレーとスカンジナビアンホワイト、シンプルなラインナップです。この素材で問題があるとすれば、指紋が付着しやすいということ。特にグレーは指紋が目立ちますね。
Zenbook S 14は、厚さが約1.2cmと薄く、重さは約1.2kgで軽量です。軽さを比較すると、13インチのMacBook Airが約1.24kg、Dell XPS 13が最少で約1.19kgと大体同じです。
どちらのノートPCもUSB-AポートとHDMIポートがないことを考えるとここはポイントですね。さらに、Zenbook S 14にはUSB-Cポートが2つ搭載されています。
HDMIポートは下部フレーム側面いっぱいの大きさです。が、ボディが底にかけてわずかに傾斜しているので、接続した際にデスクから浮くようになっています。なので、外部モニターを使用する際にポートハブなどを使わずに直接接続できるということです。これは超軽量で薄型のノートPCにとってありがたいことだと思います。
キーボードのキーストロークは1.1mmと浅く、音はほぼしません。個人的に慣れるのに少し時間がかかりました。
タッチパッドには「スマートジェスチャー」という機能が採用されています。タッチパッドの特定の位置で指をスライドさせることで音量やディスプレイの明るさ調整、再生中のビデオの操作などができるというものです。が、最初に付いている位置ガイドの付いたステッカーを剥がすと、すぐにジェスチャーがわからなくなってしまいましたね。とはいえファンクションキーは通常の位置にあるので、結果的に新たなジェスチャーを覚えなくても大丈夫かな。
ディスプレイは、解像度2880x1800の3KのOLEDディスプレイとなっています。これはご想像のとおり色鮮やかで素晴らしいです。印象としては同じASUSの2024年モデルのROG Zephyrus G14のディスプレイと似た感じがしました。ちなみにピーク輝度は約500nitで、ものすごく明るいというわけではないです。
さて、Zenbook S 14にはウェブカメラが搭載されていますが、正直解像度は低いです。とはいえ、個人的にあまりノートPCのウェブカメラには重きを置いていないので基本的に役立つので気になりませんでした。が、頻繁に使用する人にとっては少し留意しておくべきところかもしれません。
パフォーマンスについて
今回、Intel Core Ultra 7 256Vが搭載されたレビュー機のパフォーマンスを限界まで確かめるためにいろいろ試してみました。
ASUSとIntelは、このCore Ultra 200VシリーズでAMDやQualcommのCPUと比べてトップに立てるようにと画策しているようです。今回Core Ultra 7 258Vのほうは触れなかったのでわかりませんが、256Vではさまざまなベンチマークテストを試してみました。いくつかのテストで良いスコアもでましたが、結論としては競合製品ほどではなかったです。
たとえば、BlenderでのテストではPCで動画のワンシーンのレンダリングにかかる時間を計測しました。Zenbook S 14はCPUでのレンダリングに約5分かかりましたが、M3チップのMacBook Airでは4分弱でした。また、Handbrakeで4K動画をエンコードするテストも行ないましたが、こちらもZenbookが8分半以上かかったのに対し、Qualcomm Snapdragon X Elite搭載のMicrosoft Surface Proは5分半ほどでした。
GeekbenchとCinebenchでのCPUベンチマークでは、Core Ultra 7 256Vはシングルコアで競合チップよりも約100ポイント低いスコアでした。マルチコアではその差は約1,000ポイントとなりました。
今回のレビュー機のモデルをほかの競合他社のAI向けの最高級チップと直接比較するのは少し無理があったような気がします。Core Ultra 7 256Vと258Vは多くの点で同じですが、内部的には大きな違いがあるようです。258Vでの結果はまた違ったものになると期待したいですね。
ベンチマークについてあれこれ言うのも楽しいですが、実際のところZenbook S 14を長時間使用しても重くなったりカクついたりすることはありませんでした。ブラウジングでのタスクはまったく問題なかったといえます。
ゲームについてはこのモデルがベストとは言えないと思います。3DMark Time Spyのテストスコアは、全世代のIntel Core Ultra 155Hを搭載したDell XPS 14よりも低い結果となりました。
Intelは、Core Ultra 7 258VではXeSS(IntelのAIアップスケーリング機能)を実行しなくても39fpsを実現できるとしています。今回Core Ultra 7 256Vで『Cyberpunk 2077』をプレイしてみましたが、XeSSを実行して「Low」から「Medium」品質の設定で25fps程度でした。
バッテリー性能
Zenbook S 14は、ブラウジングやさまざまな作業を終日行なえるバッテリーを備えています。
今回数日間触ってみて、充電が必要になるまで平均8時間駆動しました。これは終日外出する、頻繁に持ち出すといった方を除いて、ほとんどの人にとっては十分といえるはずです。
Intel Core Ultra 200Vシリーズのセールスポイントの1つとして動画再生のテストで20時間以上再生可能というものがあります。これは最新のARMと同等かそれ以上の性能です。これらの宣伝については高負荷のタスクがない前提となっています。当然普通に使っていたらこれほど長持ちはしません。
とはいえZenbook S 14は72Whの大容量バッテリーを搭載しているので、詳しいテストは行なう必要がありますがバッテリー性能は良いと思います。
ASUS Zenbook S 14の総括
Zenbook S 14の購入を検討している人に1つアドバイスをするとすれば、Intel Core Ultra 7 258V搭載でRAMが32GBのモデルを選んだほうがいいでしょう。
32GBのRAMであることも長期的に使用すると考えれば適していますし、PCの潮流を考えてもこちらのほうがいいでしょう。
さて、言及するのが最後になりましたが、Zenbook S 14はLunar Lake搭載ということもありすべてCopilot+ PC認定となっています。これについてはCopilot新機能やリコールなどを試してみたいといった方は最大47 TOPSのNPUを思う存分使ってみていただければと思います。そうでなければ、現状ではこのあたりは無視してもいいでしょう。
Zenbook S 14はほかの14インチノートPCと比べてもポートも多く、デザインも良いので広くオススメできます。とはいえ、価格に見合った性能はあるものの、パフォーマンスは少し物足りなく感じますね。クールなデザインに見合うパワーがもう少しほしかったところです。
10/15 23:00
GIZMODO