動物も復讐を考えるの? 専門家に聞いた
人間は自分の気持ちを投影しちゃいがちですよね。
Giz Asksでは長年にわたって、動物の行動や心理に関することを探ってきました。どの動物が一番エッチなのか? 一番汚い動物は? 一夫一婦に近い動物は? どの動物が一番多くの人を殺しているのか? 運動する動物はいるのか? などなどです。
そして今日、私たちが取り組む疑問。それは例えば父親を殺された猿は、殺した相手に怒って殺しに行くのかということ。そう、動物は復讐をするのかという疑問です。
1人目
直接的な攻撃ではなく、攻撃者がはるかに強くて攻撃できない場合、代わりに他の弱い誰かを傷つけます。
はい、動物は復讐をします。例えばチンパンジーがそうです。マカクザルもです。しかし、直接的な攻撃ではなく、攻撃者がはるかに強くて攻撃できない場合、代わりに他の弱い誰かを傷つけます。攻撃者の家族を傷つけることもあります。
また、怪我をした動物が明らかに逃げたり隠れたりする方がベターな状況で、ハンターを追いかけたり、待ち伏せしたりすることが多く記録されています。なぜそうするのかは不明です。人間の場合、復讐は通常、私たちが本能的に持つ正義感の非合理さの表れであり、これは多くの霊長類でも見られるもので、社会的協力を促進するために進化してきたものです。私たちは常に他者の利他的行動に報いたいと思い、過度の利己主義を罰したいと思ってしまうものです。
ハンターへの復讐攻撃で知られる動物の中には、高度に社会的なもの(例えば象)もいますが、そうでないもの(クマ、トラなど)もいるので、復讐という行動がなぜ起こるのか良い説明は今のところありません。
Vladimir Dinets(キーン大学動物学非常勤講師、動物行動を研究)
2人目
動物は私たち人間とは非常に異なる視点で状況を見ている可能性が高いため、動物の行動を復讐と仮定することは、私たちの動物への接し方に悪影響を及ぼす可能性があると思います。
多くの動物が「互恵性」を持って互いに関わって生きていることは間違いありません。つまり「あなたの背中をかいてあげるから、その代わり私のもかいて」というお互い様の考え方です。互恵性は否定的な行為にも及ぶことがあります。例えば、ある1匹が協力的でない場合、将来協力を拒否される場合もあります。これは私自身のチンパンジーの研究でも見た現象です。
否定的な互恵性の行動は、厳密には復讐とは同じではありません。
私にとって復讐には道徳的正当化の要素があるからです。他の種にも独自の道徳規範やシステムがあることは明らかです(例えば、フサオマキザルは不公平な状況に否定的に反応します)。しかし、他の種に復讐という概念があるということは、その動物の道徳システムが私たち人間と同じであると仮定することになるため、それには私は懸念を感じます。つまり、動物たちが私たちと同じものを正しいまたは間違っていると見なすという仮定だからです。
よく「旅行に行ったら、猫が復讐するみたいにベッドにおしっこをした」というようなことを耳にしますが、これは猫がベッドにおしっこをすることが悪いと知っていながら、飼い主が留守にしたことを罰するためにそうしたと仮定しているものです。でも実際には、猫は環境の変化によって非常にストレスを感じていた可能性が高いのです。
もしこの行為を復讐と見なせば、飼い主は猫に怒ったりするだけで、次旅行に出る時に猫の環境を変えることはないでしょう。しかし、これをストレスの表れと見なせば、次に出かける際にストレスを軽減する対策を取るかもしれませんよね。これは人間と猫の双方にとって良いことなんです。
実際には動物は私たち人間とは非常に異なる視点で状況を見ている可能性が高いため、動物の行動を復讐と仮定することは、私たちの動物への接し方に悪影響を及ぼす可能性があると思います。
Malini Suchak(カニシウス大学 動物行動、生態学、保全学准教授)
3人目
家族の一つが別の家族と争いになると、ほぼ全ての家族メンバーが加わって助け合います。時にはかなり激しいケンカになることがあります。
私は非ヒト霊長類、特に「ブタオザル」という種を研究しています。ブタオザルは大きな社会集団で生活し、母系社会を形成するサルです。年長の女家長がいて、その子どもたち、さらにその子どもたちがいます。そして多くの場合、全ての子どもたちが一つの家族を形成し、そして別の血縁関係のない雌が自分の家族を持ちます。家族の一つが別の家族と争いになると、ほぼ全ての家族メンバーが加わって助け合います。時にはかなり激しいケンカになることがあります。例えば小規模なレベルでは、家族Aのメンバーが家族Bのメンバーに攻撃を加えた場合、家族Bのそのメンバーが後で家族Aの誰かを追いかけたり、噛んだり、叩いたりすることがあります。
これはあまり一般的ではありませんが、動物Aが動物Bを叩き、その後、動物Bが動物Aの子どもを攻撃するというケース。この行動は他の種類のマカクザルでも見られています。別の研究者がニホンザルでこの行動を研究しています。
Peter Judge(バックネル大学動物行動・心理学教授、動物行動プログラム責任者)
4人目
霊長類が長期間にわたって敵への復讐を企てるのは見たことがありません。
私は霊長類を研究していますが、私の答えとしては復讐は多かれ少なかれあると思います。 もちろん、その動物たちに何をしようとしていたのか、なぜそうしたのかを直接聞くことはできないので、彼らの意図を知ることはできません。しかし、動物園の中で社会集団にいる霊長類たちの研究では、個体が何らかの形で攻撃を受けた場合、攻撃者の関係者を攻撃する可能性が高くなることがわかっています。しかも通常、実際に攻撃した個体ではなく、その第三者を攻撃する傾向があります(この現象はハイエナでも観察されています)。ほとんどの場合、これら「復讐」行為は攻撃の直後におこなわれます。霊長類が長期間にわたって敵への復讐を企てるのは見たことがありません。
一頭の雄が支配的な階層や集団で生活する本質は、恐れからです。期待されるパターンで行動しなければ、必ず報いがあります。一頭の雄と複数の雌からなる大きなサル集団があります。そのような集団では、他の集団との争いや大きな戦いの際に離脱した雌に対して攻撃的な行動が見られることがあります。これら雌は、集団の結束を維持しなかった(正しいパターンで移動しなかった、あるいは支配的な雄が好まないような行動をした)ために罰せられることがあります。この場合の目的は、復讐ではなく、集団を維持し、権力を保つことです。
Stephanie Poindexter(ニューヨーク州立大学バッファロー校 人類学准教授、霊長類の行動生態学などを研究)
10/15 21:00
GIZMODO