宇宙の磁場が新しい星を生む? 銀河が発展するメカニズム

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スピッツァー宇宙望遠鏡によって捉えられた天の川銀河の中心 Image: NASA, JPL-Caltech, Susan Stolovy (SSC/Caltech) et al

数十億の星やガス、塵、そして中心に巨大なブラックホールが存在する天の川銀河。私たちも生活するこの銀河の構造と成り立ちについて、その理解を大きく前進させる研究が発表されました。

天の川銀河には、「銀河ハロー」と呼ばれる銀河を包み込むように丸く広がる広大な領域があります。この銀河ハローがどのような構造なのか、どのように生み出されているのかを、イタリアの国立天体物理学研究所(INAF)の研究チームが明らかにしました。今回の発見は、「Nature Astronomy」に掲載されています。

大規模で磁化された泡構造を確認

研究チームは、ラジオ波やガンマ線など、10以上の異なる周波数を用いて観測を行ないました。その結果、ハローの中に、銀河円盤の上方および下方1万6000光年を超える高さにまで広がる、非常に大規模な磁化された泡構造があることを確認しました。これら泡構造内の磁場は非常に整然とした構造を持っており、月の直径150倍の長さにまで伸びる細いフィラメントを形成しています。

この構造物は、2020年にeROSITA X線望遠鏡によって作成された全天観測マップで検出された、高温ガスの巨大構造「eROSITAバブル」と、同様の過程で形成されたものだと考えられます。

本研究との関わりはありませんが、カリフォルニア工科大学(Caltech)のラジオ天文学と宇宙論の研究者マーティン・オイ氏は、Gizmodoに対し以下のように述べています。

「この研究は、天の川銀河の上方および下方に高温のガスとプラズマからなる"泡"が存在するという説を、より裏付ける証拠となりました。これらの構造は、他の銀河にも存在する可能性があります」

磁場が新たな星を生んでいる?

2010年、フェルミガンマ線宇宙望遠鏡が、天の川銀河の円盤上で他よりも高いエネルギーのガンマ線を放出する謎の構造を見つけたことで、これら高温の泡構造の存在が初めて明らかになりました。

高温の泡構造は、天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホールによって放出される膨大なエネルギーや、超新星爆発が発する熱ガスによるジェット流が作り出していると考えられます。

本研究の主著者であるINAFの研究者、ホウ・ショウ・ジャン氏は以下のようにEメールで述べています。

「天の川銀河のハローに存在する磁場を初めて詳細に測定した今回の研究は、星が新しく生まれる場所、星形成領域と、銀河からガスが放出される現象、銀河風の間に、新たな関連性があることを明らかにしました。観測結果から、磁化された構造が、星の形成に影響を及ぼしている可能性があることがわかりました」

また、銀河風はガスを供給することで星の誕生を活性化させ、銀河の進化に重要な役割を果たしています。星が死を迎えると、残された物質からまた新しい星が誕生します。

今回の新たな発見では、天の川銀河の銀河風と、銀河の中心を横切る棒状の構造の端にある星形成領域との間に、関連があることが示唆されました。この棒状の構造には多くの星、ガス、塵が集まっています。

本研究の著者の1人であるINAFのガブリエーレ・ポンティ氏は、以下のように述べています。

「この研究は、天の川銀河を理解する、大きな一歩となりました。興味深いのは、天の川銀河も他の多くの銀河と同様に、強力な銀河風を放出できることが分かったということです。さらにまた一方では、星形成領域も、銀河風を発生させることに影響を与えています」

期待される銀河の成長と進化の解明

銀河風は、銀河の成長と進化に大きく寄与しています。銀河風を詳細に観測することで、銀河がどのように発展してきたのか解明する糸口となるでしょう。

オイ氏はこのように語ります。

「銀河のハロー、すなわち銀河を取り巻く大規模な領域が、磁気を帯びており、磁場が銀河の進化に重要な役割を果たしているということがわかってきています。天の川銀河は、我々が近くで研究できる唯一の渦巻銀河であり、最も興味深い実験室の1つです」

さらに詳細を知りたい方は、こちらを読んでみてください。

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