山形大学の研究チーム、AI活用でナスカの地上絵を発見しまくる

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Image: shutterstock/chamski

AI使用で発見率は16倍、発見された数は倍になったそう。

ペルーにあるナスカ地域の地面に広がる430の地上絵を発見するのに、100年もかかりました。技術が進んだ今、科学者チームはAIを活用したアプローチで、たった半年で303もの地上絵を発見。発見が困難な図形も発見されています。

ナスカの地上絵とは?

「ナスカの地上絵」とは、ナスカ平原にある砂利で描かれた巨大な幾何学図形や動植物の絵のこと。紀元前200年から紀元後500年頃、原住民たちが地表にある暗い砂利を取り除き、下の白い砂質土壌を露出させて描いたものです。あまりに巨大なため、空からしか全体像を見ることができない地上絵がほとんどです。

山形大学の地上絵研究

絵自体は古代のものですが、発見されたのは20世紀入ってから。大量に見つかったわけですが、それでも多くの絵が見逃されていたままでした。2020年には、ネコ科の動物を描いた地上絵がこの地域の丘の斜面で発見されました。昨年、山形大学の研究グループが物体検出アルゴリズムを使用して4つの新しい地上絵を特定しましたが、広範囲にわたる調査はその時はおこないませんでした。今回、より大きなチームが編成され、より広範囲をAIを活用して調査したのです。

最近のモデルは「小さくて識別が困難なレリーフタイプの地上絵に焦点を当てています。これは、大きな線タイプの形象的地上絵の分布は過去にマニュアルでおこなわれた空中調査からわかっているからです」とチームは今週初めに「全米科学アカデミー紀要(PNAS)」で発表された論文で書いています。

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Image: Sakai et al., PNAS 2024.

AIを使った発見方法

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は一般的に数万枚の画像で訓練されますが、このチームのモデルは、数百個の既知の地上絵の画像だけで訓練されています。IBMの地理空間プラットフォーム「PAIRS」でまずはデータをクリーンアップしてからモデルに入力。その後、モデルはナスカ平原を格子状に分割し、地上絵が含まれていると思われる区画を強調表示しました。特定された候補の地上絵は、その後、考古学者に送られ、人間の目で本物とそうでないものを選別しました。

モデルの訓練に多くのデータがなくても、チームはAIのアプローチが効果的に地上絵を特定できることを証明しています。AIは1309の潜在的な地上絵を提示。その後2ヶ月かけて、チームは303の形象的地上絵と42の新たに特定された幾何学的地上絵を識別しました。

大きな絵と小さな絵には違うパターンあり

チームはまた、大きな地上絵と小さな地上絵が描いているものには異なるパターンが存在することを特定しています。巨大な地上絵は一般的に動物や植物を描いていますが、レリーフタイプの地上絵は人間、首のない頭、家畜化されたラクダ科の動物を描いていました。小さな地上絵は、平均してナスカ平原地域を縦横に走る古代の道から約43メートルの場所に位置しているため、絵を作った人たちがその絵を見るために使用されていた道だった可能性があるとのことです。

新しく発見された小さな地上絵のうち、野生生物を描いた47の地上絵には、鳥、猫、蛇、猿、キツネ、シャチ、魚の姿が含まれていました。チームは論文の中で、大規模な地理空間データ技術とデータマイニングが空中考古学における発見のペースを加速させたと書いています。

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