ザトウクジラの豪快な食事法「気泡で網を作って獲物を一気に食べてます」
ただの泡じゃなくて巧みに操作されて作られていた!
ザトウクジラには手がありません。だからといって器用じゃないかと言われるとそうじゃないんです。
新しい研究で、吐き出した気泡で網を作って獲物を捕まえる能力があることがわかり、クジラは道具を使用できる動物として分類されるべきだと論じています。
器用に泡を出して網を作っていた
気泡で漁をするクジラたちは、2019年7月にアラスカ沖で研究者たちによって目撃されました。5日間にわたり、研究チームはクジラたちが泡の網を作る様子を撮影。実はこれ、広く観察されている行動で「バブルネット・フィーディング」と呼ばれています。
この調査で特に注目されたのは、網の実際の構造、サイズ、泡と泡の間隔でした。その後2年間、研究チームは更なる調査のためにアラスカ沖で泡の網の測定を続けました。
数十頭のクジラが作った何百もの泡の網を記録した結果、記録された網のすべてに複数の円形の泡の輪が含まれており、内側の輪ほど小さくなっていることがわかりました。
ロイヤル・ソサエティ・オープン・サイエンス誌に掲載された論文では、気泡データの分析によって、クジラたちが無作為に網を作っているのではないことを発見したと説明されています。
無作為どころかむしろ、クジラたちは一定の速度で泳ぎながら泡を作る速度を変えることで、深さや泡と泡の間隔を変えたりと、いろいろな方法で網のサイズと構造を操作していたのです。
作られた網は魚の群れを小さな領域に追い込むための障壁として使用され、クジラたちはその中に追い込まれた獲物たちを一気に食べていました。
獲物たちを集めて追い込むことでエネルギーを節約して食事をしているのかと思いきや実はそうでもないようです。研究チームによるとザトウクジラは、網を作らずに直接獲物を食べるクジラと同じペースで呼吸していることが判明。また、網を作るのに使うエネルギーは、網を作らないクジラが餌を食べる際に使うエネルギーと同程度であることもわかりました。
一度にたくさんの獲物を食べられるから
ではなぜ網を作るのかというと、一口でより多くの餌を集められるからのようです。網を作るクジラたちが追い込んだ獲物たちに向かっていく1回の間に、網を作らないクジラは最大15回獲物に向かっていく必要があると論文では述べられています。全体として、網で集められた獲物の密度は7倍も高いと推定されています。
研究チームは、このクジラの行動が道具使用の定義を満たすと主張しています。道具使用の定義は「取り付けられていない環境中の物体」を目的を持って使用し、別の物体や生物を変更、位置決め、あるいは制御することなんだそうです。
また道具の製作は、哺乳類、鳥類、魚類、昆虫など、さまざまな種で見られていますが、動物界において実は一般的な行動ではありません。
ハワイ大学海洋哺乳類研究プログラムのディレクターLars Bejder氏はプレスリリースで
多くの動物が餌を見つけるために道具を使いますが、実際に道具を自ら作ったり修正したりする動物はごくわずかです。ザトウクジラは、内側に輪がある網を巧みに泡で作り出し、輪の数、網のサイズや深さ、泡と泡の間隔など、細部を積極的に制御しています。
と説明しています。
08/26 19:30
GIZMODO