アメリカでは4.4度以上も高温化した都市部に3400万人が住んでいる

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わたしは3400万分の1でした。

気候変動による気温上昇だけにとどまらず、都市部ではヒートアイランド現象も加わって住民を熱します。でも、実際のところ、自分の住んでいる場所がヒートアイランド現象の影響でどれくらい暑くなっているのかはわかんなかったんですよね。

4.4度以上暑くなった都市部に3400万人が居住

Unequal urban heat

Image: クライメート・セントラル

化石燃料の燃焼を主因とする気候変動によって地球全体が温暖化していますが、すべての場所で均等に気温が上昇しているわけではありません。とりわけ、人口が密集している地域では、都市環境による気温上昇、いわゆるヒートアイランド現象と温暖化の相乗効果でさらに暑くなっています。

今回、アメリカの非営利気候研究機関クライメート・セントラルは、アメリカの全人口の15%にあたる5000万人が住んでいる主要65都市の気温が、建造物や舗装、緑の有無など、人工的な環境によってどれくらい暑くなっているかについて、国勢調査のブロックごとにヒートアイランド指数(UHI指数)を算出しました。

その結果、主要65都市に住む5000万人の68%にあたる3400万人近くが、周辺地域よりも4.4度以上暑くなっている都市部に住んでいることが判明しました。

想像したくもありませんが、ヒートアイランド現象によって気温が6.7度以上高くなっている地域で、14万5000人以上が生活しているとのこと。バックグラウンドで進む気候変動による気温上昇分を加えると、8度以上暑くなっている地域もあると考えられます。

ヒートアイランド現象が上乗せされる危険性

ニューヨーク、ロサンゼルス、ヒューストン、シカゴ、サンアントニオ、ダラスの6都市では、4.4度以上暑くなっている地域にそれぞれ少なくとも100万人以上住んでいるそうです。上位6都市の半分をテキサスが独占していますね。筆者はダラス在住です。ぴえん。

各都市におけるUHI指数の平均値(その都市のヒートアイランド現象による気温上昇の平均値)をみると、より都市化が進んでいるニューヨークは5.4度最も高く、アリゾナ州フェニックスが4.11度最も低くなっています。

この数字だけを見ると、フェニックスは思ったよりましじゃんって感じるかもしれません。でも、フェニックスでは熱中症による死者が数百人にのぼっています。何がヤバいって、ただでも温暖化で暑くなっているフェニックスの気温に、平均して4.1度が上乗せされることです。さらに悪いことに、フェニックスの中でもUHI指数が5.6度以上6.1度未満の地域に1万人以上住んでいます。

もしもヒートアイランド現象がなければ最高気温が40度だったはずの地域に、4.1度から6度上乗せされると、気温は44度から46度に達する計算になります。

筆者がテキサスに引っ越してきた22年前は、真夏に35度を超えると暑く、37.8度(華氏100度)を超えるとニュースになっていました。でも、今は37.8度を超えると暑く感じますけど、35度を切ると涼しい感じさえします。筆者の地域はヒートアイランド現象で暑さが4.1度上乗せされているようですが、ここ数年の肌感覚と一致します。

偏るヒートアイランド現象の影響

ヒートアイランド現象による気温上昇が均等じゃないように、その影響もすべての人に公平ではありません。UHI指数が高い地域は、歴史的に非白人や低所得層が多い地域と重なる傾向にあります。偶然ではなく、歴史的に不公正を生む街づくりをしてきた結果といえます。

アメリカでは、気象災害の中で猛暑が最も人々の命を奪っています。熱波の際には、都市部で何百万人もの住民が熱中症や暑さ関連の症状に苦しむおそれがあります。社会経済的に弱い立場の人々は、冷房使用による電気代の負担も大きくなります。冷房がない住居で暮らす人や、電気代を気にして冷房を使えない人は健康を損ねるリスクが大きく、最悪の場合は死に至ります。

さらに、高齢者や子ども妊娠中の女性基礎疾患を持つ人屋外労働者住居を持たない人などは特に暑さに対して脆弱(ぜいじゃく)で、気をつけていても熱中症にかかる危険性が高くなります。

ヒートアイランド現象を軽減するには

ヒートアイランド現象による気温上昇の鍵は、アルベド(太陽放射の反射割合)、緑地の割合、人口密度といわれています。

まず、舗装された道路や駐車場、暗い屋根や屋上は、より太陽エネルギーを吸収し、その熱を大気に放射して気温を上昇させます。道路や屋根、屋上を明るい色で塗装したり、ビルの屋上に緑のスペースを設けたりすることで、アルベド(太陽放射の反射率)を高くできます。

また、駐車場などのアスファルトが多いインフラを公園や緑地に変えれば、太陽の放射をより反射できるようになり、日陰も増えます。さらに、植物の蒸発散作用によって気温が下がります。緑の割合を増やすと、都市部の夏の気温を1.1度から5度下げられるそうです。

クライメート・セントラルの上級データアナリストであるJen Brady氏は、都市部の樹木がヒートアイランド現象を和らげる効果について次のように話しています。

木々が多い地域では、樹木の被覆が少ない地域と比較して気温が8.3度低い傾向にあります。

気温が電気代や健康に与える影響を考えると、8.3度の違いは大きすぎます。気温が8.3度低くなると、屋外と室内で熱中症になる人の数はかなり減るでしょうし、なんといっても電気代が全然違うはずですよね。

人口密度に関しては、人が多ければ多いほど、交通機関や産業施設、冷房など、人間活動由来の余剰熱が発生します。熱波に見舞われた地域では、冷房によって20%以上の余剰熱が発生するといいます。

日本も例外ではありません。気象庁によると、都市化率の高い大都市では、都市化率の低い都市と比較して、長期的な平均気温の上昇率が大きくなっています。特に、夜間の最低気温の上昇率が極めて大きいようです。夜間は昼間と違って余剰熱が上空へ抜けずに地表付近にとどまるためと考えられています。

世界人口の半分以上が都市部に住んでいます。すでに完成している都市部では、特に気温が高くなっている地域を優先して緑を増やすなど、公平なヒートアイランド現象の緩和策を実施し、都市を拡張する際には、ここに挙げた課題を生かした都市計画を行なう必要があるでしょう。

そして、ヒートアイランド現象の暑さに追い打ちをかける温暖化を止めるために、化石燃料からの脱却を急がなければなりません。

Source: Climate Central, The Guardian

Reference: 気象庁

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