サムスン4K QLEDテレビ「QN90D 4K Neo」は買う価値あり

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Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

コントラストよし、ゲームよし。AIは全能感求めると外すかな。

サムスンの新型TV「QN90D」はほかの今年のTVほどの目新しさはないものの、ディスプレイの質、コントラスト、明るさは期待を裏切りません。

サムスン「QN90D」

これは何?:サムスン最新のQLED 4Kテレビ

価格:43インチで1,500ドル(約23万4000円)~(レビュー機は85インチ・4,800ドル=約75万円のバージョン)

好きなところ:コントラスト最高。ローカルディミングも去年のQN90Cよりいい。明るいディスプレイ。ゲーマーが喜ぶオプションが充実

好きじゃないところ:AI導入のメリットがあまり感じられない視聴環境。メインメニューのUIがイマイチ

Dolby Visionには未対応だし、UIにも不満点はありますが、ゲーミングの機能が向上して、ローカルディミング(ディスプレイのバックライトを複数の領域に分割し、領域ごとにバックライトの明るさを調節する技術)も強化されました。昨年モデルのQN90Cより高くなったけど、買う価値ありです。

競合ひしめく2024年TV市場。4K Neo QLEDは最安1,500ドル(約24万8000円)。中の上の値ごろな価格帯においても、視聴環境のみに注力した点においても、サムスンの新型TVのなかでは一番身近なTVという位置づけになります。

オールラウンドなテレビだけどパッとしない一面も

やりたいことは何でもできて、エレガント。画面はどこまでも明るく、映画『オッペンハイマー』の視聴にも耐えうるレベルです。まあ、クリストファー・ノーラン監督はIMAXの巨大スクリーンでないとあの感動は味わえないと再三言っていますけどね。

身近なTVと書くと、パッとしないTVを連想する人もいるのではないかと思います。ある意味、そのとおりなところもあって、Q4 AI Gen2プロセッサにAIスケーリング機能を各種搭載してはいるのに、非4Kコンテンツでは正直それほど違いがわからなかったり。量子ドットでmini-LEDテレビのカラーは確かに引き立つんですが、AlienwareのQD-OLEDモニターとか、サムスンのほかのOLEDとか見ちゃった後では感動するほどでもないかな。ソニー最新「Bravia 9 mini-LED」ほどのドライバテクノロジーでもないですし、けっきょくサムスン最新の4K TVが割高すぎない価格で買える納得感ですよね。

画質に関しては非の打ちどころがありません。表現力といい、明るさ、コントラストといい、この価格からは想像できないクオリティです。

ただAIは微妙なので、AI最適化という発表を受けて購入を考えている人は、ほかも当たって比べてみてからでも遅くないです。優れたAIアップスケーリング技術で非4Kコンテンツを大画面に対応させるとサムスンは約束していますが、いくらアップスケーリングしたところで、90年代の青春映画『チアーズ』がHuluで絶賛配信中の『SHOGUN』みたいな画質にいきなり化けるなんてこともないわけでして。スポーツの映像はAIのモーショントラッキングのおかげで前より若干クリアになったけど、それだってほとんどの人は言われないとわからない程度の差ですから。

QN90DもほかのサムスンTVも、一番の強みはむしろ接続性とゲームモードにあります。PS5やXBoxシリーズX、パソコンを挿し込めば、たちまち最高のゲーム環境になるので、手持ちのゲーム機を最大限に楽しみたいならQN90Dは有力候補と言えるでしょう。

頑丈でほぼほぼベゼルレス

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Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

レビューで使用したのは2番目にデカい85インチのモデルです(一番デカいのは98インチ)。L字スタンドはネジ数本で卓上にバランスよく固定されます。ぶつかるともちろん倒れるけど、少し粗っぽく扱ったぐらいではビクともしません。

TV本体はかなり薄い28mm。問題なく壁にかけられます。

画面サイズは43インチから98インチまで各種揃っています。使ったのは65インチと85インチのものですが、正直言って自分はもっと小さい画面のほうが近くからでも遠くからでも楽しめるし、扱いやすく感じます。でもこればかりは家の間取り次第かな。住宅事情は人それぞれ異なるので一概には言えませんけどね。

ちなみに98インチの大画面だとリフレッシュレートは最大120Hzどまりなので、その意味でも小さな画面のほうが守備範囲は広め。特にPCなどつないでゲームをやりたいと考えている人は覚えておきたい大事なポイントですね。全体的な画質は良好です(平均1.5~1.8m離れてチェックしました)。

右サイドの後ろ側にはこんな風に4つのHDMI 2.1ポート、USB-Aポート2つ、イーサネット接続のLANポートが1つあります。ワイヤレス接続はWi-Fi 5の接続速度にしか対応していないので、4K番組やゲームのストリーミングには充分ですが、有線のネット接続環境も用意できるなら、あったに越したことはありません。

QN90Dの外観は特に欠点らしい欠点もありません。ベゼルはないも同然だし、丈夫にできていて、ポートも豊富。周辺機器はなんでもつないで使えそうです。

サムスンTVはゲーミングハブが最高

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Photo: Kyle Barr / Gizmodo US

サムスンTVを駆動するのは独自のTizen OSの最新版。仕事場では「サムスンはメニューが好きじゃない」って言ってる同僚もいますが、僕はボタンを何回か押すだけで行きたいメニューに問題なく進めました。ホーム画面は新しいデザインに変わり、アルゴリズムで生成する「For You」のタブやAppのタブもできました。

「For You」にはSamsung TV Plusと地上アンテナから好みに合いそうな番組がピックされるのですが、ストリーミングサービスの好みに合わせて選ばれた最初の2つはガン無視でスルーしちゃいました。スマートTVならいざ知らず、それ以外のTVはこんなコンテンツの押しつけはホントやめてほしいものです。かつて文豪フランク・ハーバート(SF超大作『DUNE』原作者)も書いているじゃないですか、「If wishes were fishes, we’d all cast nets(願いが魚みたいに単純なもんなら、みなとっくの昔に網でとってボロ儲けしてるわい)」ですよ。

「Daily+」というメニューからは、サムスンがPRしたいコンテンツ(ワークアウトなど)にアクセスできます。まるでメニューのなかに押し込めたTVリモコン。リモコン探してる人はこんなところまで探さないので、置き場所としてこれ以上おかしな場所はないと言っていいでしょう。

いっぽうゲーム関連のものすべてがそろっているのが「Gaming Hub」のメニューで、かなりの充実度。Game PassとかGeForce Nowが大々的にPRされているほか、Blacknutみたいに知名度の低いサービスも多少揃ってます。コントローラーなどの周辺機器は、もう設定を開かなくてもこのメニューから追加が可能です。ゲーム機をHDMIに挿し込むとポップアップが現れるのもここだし、ゲームの種類に応じた詳細設定もこのインゲームの「Game Bar」にあります。『Baldur’s Gate III』やりながらミニマップの明るさを少し上げたいと思ったら、そのオプションも見つかるといった具合に、ゲームの操作を手軽で楽しいものにしてゲーマーのQOL(生活の質)を上げる工夫が詰まっています。

TVのメニューでワクワクするなんて普通ありえないことですが、最新のサムスンTVは面倒を肩代わりしてくれるところが最高です。たとえばPS5やXboxシリーズXを挿し込めば、QN90D側で設定を自動的に調整してゲームモードにササっと切り替えてくれる手際のよさです。

Dolby Visionは使えませんが、サムスン独自の「HDR10+」が代わりに使えます。今のところサムスンのプラットフォームで使えるのはYouTube、Prime Video、Huluぐらい。これは今後に期待、ですね。

AIは肩透かし。でもコントラストはすばらしい

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Photo: Kyle Barr / Gizmodo

QN90Dはどこに座っても、素晴らしい映像が楽しめます。「視野角最大55度」というサムスンの話は嘘じゃありませんでした。去年のQN90Cよりは少し視野角が狭くなっていますが、コントラストはそれを補って余りある改善度。まあ、個人的には視野角より画質が優先です。どうしても視野角にこだわる人で出費を問わない人は、どのみちOLEDを探しているのでは。

サムスン製min-LEDは御多分に漏れず、QN90Dも輝度は高い数値。テストしてみたら、全画面・標準設定でHDRのピーク輝度は639ニト。ローカルディミングも十分で、推奨されているアングルから眺めると、あらゆるものがクッキリ鮮明に見えます。横から眺めても、縁から光が漏れることもないし、ぼやけることもなし。

編集部のオフィスに置いたら本当にキレイでした。とはいえ、あらゆる光の状態で完ぺきな映像が楽しめるわけではありません。QN90Dには反射予防のコーティングが施されてはいますが、蛍光灯は最低限の明るさに落としても反射します。照り返しも少し出ます。蛍光灯をTVに向けない限り、普通の間取りではそれほど問題ではないですけどね(幸いうちのオフィスで直接向けることは不可能)。

前評判が高かったAIのアップスケーリングに関しては、評価が難しい。4K以外のコンテンツをいかに現代のTVに合わせるか、ですからね。昔の番組も高価な大画面TVで普通に観る以上に楽しめるというのがサムスンの説明で、実際N90Dで眺めると、ほかのTVより昔の番組はきれいに再現されます。でも、うわーーーー!となるほどの違いではないんですよね。いろんな意味でAIアップスケーリングって微妙な変化なので、やってないと言われれば、あ、そうってそれを鵜呑みにしちゃうぐらいの差なのです。

『ジョンウィック:チャプター4』の4Kじゃない版と4K Blu-ray版を比べてみたら、4K版のほうがはるかに鮮明で、違いは歴然。アップスケーリングが裏で動いているはずなのに差を埋めるほどではない印象です。試しに大昔のソニーTVで同じディスクを流して比べてもみたんですが、解像度の差は目視では確認できませんでした。

サウンドは選ぶモデルによって違います。自分が試した85インチモデルは60W・ 4.2.2チャンネルのシステム搭載ですが、50インチモデルは40W・2.2チャンネル、43インチモデルは20W・2チャンネルといった具合。

大画面TVのサウンドは上質で、大音量も出ます。どう転んでも外付けのサウンドバーやサラウンドサウンドシステムには敵いませんけどね

一度に使えるワイヤレスヘッドフォンは2つまで。このスケールのTVでは及第点ですね。対応機種では360オーディオもサポートしています。

QN90Dは採点項目すべてが◎

QN90D Neo QLED 4K買って後悔しないTVです。Dolby Vision HDRサポートにさえこだわらなければ。 カラーコントラストに優れ、どんな視聴にも耐える輝度。AIに無駄に力を注いでしまった感はありますし、そのせいで去年のQN90Cより微妙に改善された部分にまでケチケチと難癖つけてしまいましたが、上質なTVであることに変わりはありません。

ゲーマーは特に新刷新のゲーミングモード、かなり楽しめます。強いて弱点を挙げるなら、あんまり騒がれていないのがこのTVの残念なところかな。これって自分的にはかなりの誉め言葉。

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