巨大IT規制法 競争確保で攻防 実効性が課題、欧州では反発も

スマートフォンやアプリが社会に浸透した現代において、デジタル市場における健全競争の確保は大きな課題とされている。政府は今回の巨大IT規制法により市場を活性化させ、デジタル社会の推進や経済成長を目指したい考えだ。ただ、規制強化の動きが先行する欧州などでは巨大IT企業による反発の動きも見られ、新法はその実効性が問われることになる。

能動的な対応可能に

デジタル市場での米グーグルとアップルの力は強大だ。従来の独占禁止法で規制しようとしても、市場支配の事実を細かい調査を基に示す必要があるなどハードルが高く、所管する公正取引委員会はこれまで2社の寡占に対して的確な対応を取れなかった。

これに対応して新法は今回、事前に禁止・順守する事項を定め、違反に高い課徴金を科すことにまで踏み込んだ。さらに巨大ITに対し規制順守のための措置を報告させることなども盛り込み、巨大ITに独善的な対応を取りづらくさせた。

「事業者とコミュニケーションをとりながら改善を求めていくのは、これまでのやり方とは異なるところだ」。公取委関係者はこう述べ能動的に寡占抑止へ動くことができると意義を強調した。

いたちごっこ続く

ただ、新法に実効性を持たせられるかどうかは課題として残る。規制の動きが先行する欧州などでは、巨大ITが反発する動きを見せているためだ。欧州連合(EU)は今年3月、巨大ITの自社サービス優遇などを禁じるデジタル市場法(DMA)の本格運用を開始。これを受け、アップルは他業者のストア参入などを認めた一方、1月にDMAには抵触しない、従来のものとは別の新たな手数料を導入することを発表した。

米国でも司法当局が、巨大ITが反トラスト法(独占禁止法)に違反しているなどとして提訴する動きを見せるなど、当局と巨大ITの対立は激化している。

ニッセイ基礎研究所の松沢登研究理事は、こうした巨大ITと規制のいたちごっこは続くと分析。巨大ITが利用者にとって使いやすいサービスを提供できているため、結果的に寡占状態になっている背景もあると分析し「他事業者は魅力的なサービスを提供できるよう努力する必要がある」と指摘する。(根本和哉)

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